2012年8月31日金曜日

ブラジルの関税とトヨタ自動車の現地生産

 昨年あたりですか、米国が自動車販売世界一の地位を中国に譲りました。自動車は、金額が大きい耐久消費財であり、かつ産業の裾野も広く、貿易収支で黒字を出している国の共通点に、国内に強力な自動車メーカーが存在することがあります。例えば、日本、ドイツ、韓国などの国がそれに該当します。一方、ブラジルの貿易収支は黒字ですが、自動車販売で世界第4位の地位にあるものの、国内には有力なブラジルの自動車メーカーは存在しません。鉄鉱石など鉱物資源、大豆などの農産物を輸出するかたわら、工業製品の多くを輸入に頼っているという現実があります。
 しかし、ブラジルが持続的に成長し、次のステップに向かうには、工業製品の自国での生産は不可欠であり、同国政府は、国内産業の育成を目的に保護主義的な政策を打ち出しています。この直撃を受けたのが、輸入車であり、これに関する記事が2012年8月16日付日本経済新聞夕刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『ブラジル、輸入車失速。販売台数25%減、税の上乗せ響く』です。以下引用文。
 『【サンパウロ=宮本英威】ブラジルで輸入車の販売が落ち込んでいる。1〜7月の販売台数は8万1710台と、前年同期比を25%下回った。輸入車を対象にした工業品税の上乗せに加え、通貨レアルが対ドルで下落し、価格競争力が下がったためだ。政府は国内に工場を建設する自動車メーカーを保護する姿勢を鮮明にしており、保護主義的な政策の影響が出ている面もある。(中略)
 ブラジルの自動車市場ではここ数年、中韓メーカーが自国で生産した低価格の車を輸出し、シェアを高めてきた。政府は輸入車の増加は国内での雇用確保につながりにくいとして、神経をとがらせる。このため、昨年12月には工業品税を一律で30%上乗せし、今年の輸入車販売が減少する大きな要因となった。
 通貨レアルは現在、対ドルで1ドル=2.0レアル台前半で取引され、1年前に比べておよそ2割安い水準にある。輸入車が割高となり、販売が落ち込む一因となっている』
 ブラジルの保護主義的な動きに対して、トヨタ自動車は現地生産を開始しました。トヨタ自動車は、欧州や米国のメーカーと比べて、同国への進出は遅れた感がありましたが、量産工場の稼働に伴い反撃に出てきたといえます。また、2015年後半にはエンジンの現地生産化により、部品の現地調達率は85%まで高まるとしています。現地調達率が高まることは、工業品にかかる税金を回避できることを意味しており、ブラジルでのシェア拡大に対するトヨタ自動車の意気込みを感じます。そして、このブラジルでのシェア拡大においは、小型の世界戦略車「エティオス」を投入するようです。「エティオス」は、ライバルとなるVWなどの小型車と比べ燃費、走行性能の面に優れています。また、インド向けの「エティオス」と比べて、走行時に騒音を最大限抑え込む仕様となっており、ブラジル人のニーズにそった性能となっています。世界生産1,000万台に向けて、トヨタ自動車はVWと激しい競争を展開しています。中国と同様に、出遅れていたブラジルを制覇することは、トヨタ自動車が世界一になる上で重要なポイントとなります。ここは、トヨタ自動車の底力が期待されます。

0 件のコメント:

コメントを投稿