2012年8月14日火曜日

鈍化するユーロッパの経済成長と問題のあるドイツの対応

 ユーロ統計局より、2012年第2四半期の経済成長率が発表されました。公表されたデータによると、前年同期比ベースで、EU加盟国27カ国は▲0.2%(以下、▲はマイナスを示す)、ユーロ加盟国17カ国は▲0.4%とともに成長率がマイナスへと転じました。詳細を追っていくと、財政問題が取りざたされている南欧諸国のマイナス幅が際立っており、ギリシャ▲6.2%、イタリア▲2.5%、ポルトガル▲3.3%、スペイン▲1.0%となっています。ならば南欧諸国以外の国々が好調なのかといえば、ドイツを例にとると、期近の四半期の成長率は2.7%→1.9%→1.2%→1.0%と鈍化傾向が鮮明になっており、総じてEU諸国全体の成長率が停滞しているようです。やはり、ヨーロッパ諸国は、財政規律を守るため、引き続き緊縮的な財政政策をとっていることもあり、今後、さらに成長率が減速する可能性が予想されています。
 
 上図は、発表されたデータをグラフ化したものです。ギリシャ、ポルトガルのマイナス幅が大きいことが一目で分かります。一方で、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドなどはプラス成長を維持していますが、いずれも鈍化しています。深化するユーロ債務危機は、成長が好調であった国々をも巻き込み、ヨーロッパ全体を深い谷底へと落として入れようとしているのです。
 やはり問題は、ドイツの姿勢にあると思います。ここで、ユーロ安の恩恵を受ける形で輸出が好調なドイツが、世界最大の経常黒字である旨の記事が、2012年8月14日付日本経済新聞夕刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『独、経常黒字が世界最大。民間調べ、今年、欧州不均衡広がる』です。以下引用文。
 『【フランクフルト=時事】ドイツの有力シンクタンク、IFO経済研究所は、2012年の同国の経常黒字が昨年に続き、中国や産油国を上回り世界最大になると予想を示した。フィナンシャル・タイムズ・ドイツ(電子版)が13日、報じた。好調な輸出が背景だが、ギリシャなど南欧諸国の赤字が拡大する中、欧州諸国間の不均衡を拡大させているとの批判が高まる可能性がある。
 IFOによると、今年のドイツの経常黒字は2100億ドル(約16兆4000億円)と、昨年の2050億ドルから増加。中国の2030億ドルを上回る見通しという。国際通貨基金(IMF)の統計によれば、10年までは中国が最大だったが、同国の内需増加による黒字幅縮小で、ドイツが逆転した』
 一方で、過剰消費である南欧諸国は、慢性的な経常赤字に苦しんでいます。ドイツ人が努力して、南欧諸国の人々が努力していないというのがドイツ側に多い論調です。しかし、そうでしょうか。かつての日本ならば、黒字幅が拡大すれば、米国から内需活性化の努力が足りないとの外圧を受け、財政政策による不均衡是正の圧力がかかっているところです。ISバランスで考えれば、ドイツの貯蓄過剰こそが、不均衡の原因となっているとも捉えることができます。今のドイツは、財政支出の拡大はしないし、ECBを通じた資金還流もしないという態度をとっています。ヨーロッパ諸国のリーダーたる国が、このような責任のない経済政策をとれば、ユーロ加盟国だけでなく、ヨーロッパ全体の経済がおかしくなっても不思議ではありません。繰り返すようですが、ユーロ安の恩恵を受けているドイツは、相応の責任があります。ドイツには、拡張的な財政支出とるか、南欧諸国への速やかなる資金還流のどちらかを選択をしなければならないのです。

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