2012年8月8日水曜日

疑われるイランとの不正取引、不正が続く英金融機関の失墜

 英国金融街シティの暴走が止まりません。バークレイズが深く関与していたLIBORの不正操作、HSBCによるマネーロンダリングが発覚したばかりの英銀で、さらなる不正行為です。それは、英大手金融機関であるスタンダード・チャータードが、米国が経済制裁を科しているイランと不正取引をしていたという疑惑です。イランへの経済制裁には、日本も協力しており、原発が再稼働できない中、発電のため化石燃料を多くを輸入しなければならない状況下、イランからの原油輸入を削減し、わが国は米国から制裁の免除を受けたばかりです。
 イランと日本は比較的良好な関係にあるといえました。しかし、IAEAによる査察を拒否、核の平和利用という名のもと、核兵器開発の疑惑のあるイラン制裁への協力はやむを得ない選択であったと思います。しかし、その間隙を縫って英国の銀行が利益を得ていた実態が明らかになりました。この事実は納得できないもので、関与した銀行の国際市場からの追放と多額の罰金になどの制裁措置を、米金融当局は実施するべきであり、それができなかった場合、イラン制裁に協力している国々での米国への不信は増幅するでしょう。
 2012年8月7日日本経済新聞夕刊に、この英銀による不正行為に関する記事が掲載されていましたので紹介します。英国はGDPの半分程度を金融部門で稼いでいるといわれています。どうして稼げるのか不思議でなりませんでしたが、不正行為に深く関与することで儲けていたのだという印象を受けました。記事の題目は『英銀、イランと違法取引か。スタンダード銀行、10年で19.5兆円。NY州当局、免許取り消し検討』です。以下引用文。
 『【ニューヨーク=西村博之】米ニューヨーク州の金融サービス局は6日、英銀大手スタンダード・チャータードの米拠点が、米政府が経済制裁を科しているイラン政府と共謀し、ほぼ10年にわたり総額2500億ドル(19兆5000億円)の不正取引を行っていたと発表した。州当局は同行に取引の実態を説明するよう命令。内容次第で巨額の罰金や免許取り消しも検討する。
 州当局は9ヵ月に及ぶ調査で、3万ページの内部資料や電子メールなどを調べた結果、スタンダード銀がニューヨーク拠点を通じ2001年から10年にわたりイランの中央銀行や国際石油会社と約6万件の取引を手がけ、数百万ドルの利益を得ていたことをつかんだ。
 米国の法律は、米国内に拠点を置く金融機関が制裁対象の国と取引するのを厳しく制限する。そこでスタンダード銀は組織的に取引の記録を消したり偽造したりして、取引相手がイランの顧客であることを隠した、と州当局は指摘。改ざんなどの作業にはマニュアルが用意されていたという。
 州当局は、スタンダード銀の幹部らが広く不正取引を認識していたとも主張。米拠点の一部の幹部や弁護士からは内部監査を強化すべきだとの声があがったものの、同銀は逆に隠ぺいを巧妙にするようになったという』

 私は不満に米金融当局に対して不満に思っていることがあります。それは、バークレイズに対する英米当局の課した罰金額が2億9000万ポンド(約350億円)程度で済んだことです。LIBORはデリバティブの原資産の価格を算出する時の割引率にも使用されており、金融の隅々まで影響している割に、罰金額が少ないという印象です。また、先日、HSBCはマネーロンダリングの罰金に対応するため500億円程度の引当金を積み増した旨の記事を読みました。これも行っている不正の社会的影響と比して罰金額が過小であると思います。ともども1兆円とはいいませんが、数千億程度の罰金があってもおかしくないと感じています。そして、今回の不正取引です。この取引が事実であると確定した時点で、国際的に協調し、スタンダード・チャータードに対して、あらゆる国際的な取引から撤退するよう促すべきです。そして、一連の不正行為の根源は英金融街シティにあります。イランに制裁を科すならば、英国に対しても金融制裁を科さなければ、不公平としかいいようがないです。そうしなければ、米金融当局は、米国民ばかりでなく制裁に協力している国々への説明ができないと思います。つまり、米金融当局は金融機関の不正行為に対して甘いという印象を受けざるを得ないのです。かつて、東芝機械が旧ソ連に不正に製造機械を輸出した際には、米議員が激怒、東芝製の製品を壊すというシーンを何度もテレビ映像で観ました。今回の事件は、それを上回る常軌を逸した行為であるといえます。

 金融機関は、決済システムなど金融市場に直接関与できるという特権を持っています。この特権があるからこそ、金融市場を独占、市場操作などを行わないように、法律が用意されています。そして、コンプライアンス(法令)遵守こそが金融機関にとって最も重要な事項であるといえます。今後、金融機関には対する一般庶民からの風当たりは、さらに厳しくなることが予想されます。

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