2012年4月13日金曜日

イランへの原油依存

私は、イランに対しては、イスラム諸国(注)の中でも比較的に民主主義が根付いている国といったイメージを抱いています。宗教指導者の支持がなければ立候補が禁じられるなど、選挙制度にはイスラム教国特有の性格があり、私には理解できない点もあります。しかし、大統領の3期連続の就任は禁止されており、事実上、3期目に突入したプーチン大統領の支配するロシアとは異なります。ロシアよりはイランの方が民主主義の国であるという認識です。因みに、今、イスラム諸国の中で最も親しみを持っているのは、インドネシアです。私は選挙戦が行われている最中のインドネシアに行ったことがあります。たまたま利用したタクシーの運転手が選挙に関心があったため色々と教えてくれました(偏った情報かもしれませんが)。利権がらみなどやや問題があるという印象もありましたが、きっちりと選挙が行われ、民意のもと大統領が選ばれています。
日本とイランとの関係は決して悪くないと考えています。石油メジャーが原油市場を牛耳っていた時代、出光が日章丸を極秘裏にイランへと派遣、撃沈の可能性があったという話を聞いたことがあります。その後、イラン・イラク戦争で、断念せざるを得なくなったイラン・ジャパン石油化学(IJPC)の件は、アメリカの陰謀めいたところがあります。しかしながら、今のイランは、核問題を抱えていることから、米国主導のイランへの制裁にはやむを得ないでしょう。これ以上の核兵器の拡散は危険であり、イランはIAEAの核査察を全面的に受け入れるべきです。イラン国内での石油消費を考慮すれば、原子力発電への投資は理解できないことはありませんが、IAEAの査察を受けた上、核兵器への転用がきかない軽水炉による原子力発電にとどめる必要があります。
もっとも、イランが強行姿勢に転じた責任は、米国にあります。保守派のアフマディネジャド現大統領の前は、改革派のハタミ氏が大統領を務めていました。同氏は米国や西欧諸国との関係改善に力を入れていた大統領でした。同氏の大統領任期中に、米国は同国との関係改善に進めるべきであったことは周知の事実であり、結果として現在の不安定な中東情勢を招いたといえます。
ここで、経済問題に話を戻します。日本は、中東から大量は原油を輸入しています。そして、イランからの輸入は、わが国の原油輸入量の10%を占めています。原発がほぼ停止し、化石燃料に発電を依存している、現在の日本にとって輸入先の選択肢が減るという事態は避けたいところです。一番気になるのは、中国とイランの接近です。日本がイランからの原油輸入を減少させている中で、結果としてシェアを高めるのは中国です。イランからの原油輸入を減らしている日本の姿勢は評価できますが、利するのが中国だけだという事態は避けなければなりません。
2012年3月21日のNHKの報道で、わが国は、米国防授権法の対象外とされました。一方、中国は制裁の対象国のままであり、今はほっとしているところです。上図は『週間エコノミスト』2012年2月14日号に掲載されていたデータをグラフ化したものです。こうしてグラフにしてみると、中国の原油輸入量のいかに大きいかががよく分かります。日量543万バーレルが原油輸入の11%に過ぎません。中国は原油獲得のためには何でもするという印象が強く、今後、米国との対立は避けられない気がします。
(注)イランにもキリスト教信者はいると思われますので、「イスラム諸国」という表現は適切かどうかはやや疑問が残ります。あくまで、イスラム教徒が国民の大多数を占めるという意味で「イスラム諸国」とします。

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