2012年6月8日金曜日

企業の供給責任と三井化学の事故

昨年は、東日本大震災をきっかけに、日本全体のサプライチェーンが混乱、生産活動が停滞するという事態を経験しました。これにより、日本のみならず、世界の自動車メーカーの生産ストップしたことで話題となったのが、ASICなどを生産するルネサス・エレクトロニクスの操業停止でした。同社が市場で高いシェアを維持している部品が供給不足となったことで、生産復旧のため、自動車メーカー各社から人員の派遣などの支援がなされ、何とか生産復活へとこぎ着けたということがあった。唯一、一社が独占的に供給するのは、特許など関係で仕方がないとしても、その工場が事故などにより生産がストップし、世界の企業の生産活動に影響するという事態は回避する必要があります。
幸い、右図が示すように、わが国の乗用車生産は、2011年4月を底に回復しています。しかし、生産がストップしている間に、多くの人々が苦しみ、何らかの影響で中小の企業が倒産したり、職を失った人もいるのではないかと思っています。失われたものは多く、倒産した企業は復活しないでしょうし、失職状態から回復していない人々も多いでしょう。
自動車メーカーに関しては、かつてトヨタ自動車系列のアイシン精機の工場での事故により、特定の部品の不足が発生、トヨタ自動車の全体で生産がストップするという事態がありました。この時にも、他の部品メーカーや、日産などの他の自動車メーカーの系列下にある部品メーカーも協力したという記憶があります。一方で、トヨタ自動車のカンバン方式により極限にまで在庫部品を減らすというシステムそのもののに疑問が呈されたのも事実です。
今日の引用は、私はこの時点まで全く知らなかったのですが、『週刊ダイヤモンド』2012年6月2日号に掲載された三井化学岩国大竹工場での大惨事に関する記事です。事故は4月22日に発生、26名もの死傷者を出す大規模なもので、事故から1ヵ月以上たった時点でも全く操業にこぎつけることはできず、事故前の水準にまで生産が回復するのは8月くらいとの発表が未確認ですがあったようです。ここで問題となっているのが、同社の世界シェアが8割にも及ぶ半導体向けのメタパラクレゾールの生産ストップです。在庫が枯渇する「Xデー」に向けて、半導体メーカーの現場では混乱しています。以下引用文。
『同工場では約20品目の製品が生産されていたが、中でも供給難が懸念されているのが、「メタパラクレゾール」と呼ばれる基礎化学品である。メタパラクレゾールは、半導体製造工程に不可欠なレジスト材料(拡散工程で使用される感光性樹脂)の原料として用いられるほか、液晶パネルの製造工程向け、汎用向け(石けん、ビタミンE)と用途は広い。
事故発生の報に、半導体業界関係者に激震が走った。三井化学のメタパラクレゾール市場における世界シェアは2割程度なのだが、半導体用途に限れば世界シェア7〜8割を占める世界ナンバーワンの製品であるため、急な代替品調達し難しいからだ』
半導体産業で生産がストップした場合、自動車用の半導体ばかりでなく、パソコン、家電製品にまで影響は及びます。犠牲者には哀悼の意を表するとともに、同社の操業開始を切に祈っています。そういえば、半導体製造に関してエポキシ樹脂を製造する化学メーカーの事故が以前にも問題になりました。やはりシェアが高く、供給不足が懸念されたという記事を今でも憶えています。製造メーカーは、安定供給に対する責任を持つべきであり、いくらコストが削減できるからといって、ひとつの工場での集中的な生産はどうかという印象とともに、バックアップシステムはつくるべきであると考えています。
去年の夏は、タイ洪水によるハードディスク価格の高騰に悩まされました。今年こそは安心した消費活動のためにも、この問題が早急に解決されればと思っています。そして、異常気象、地震などのリスクに対応するため、企業は、常に、部品供給や材料の途絶に対するためのリスク管理をするべきです。この対象となるのは、部品の供給をする企業だけでなく、部品を使用する企業ともに求められるリスク管理であるといえます。

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