2012年6月18日月曜日

弱者連合の相次ぐ失敗、エルピーダ、ルネサス、そしてジャパンディスプレイ

ここのところ、電機メーカーを中心とした事業レベルでの分社化、そして経営統合が進められています。経営統合は、今後の日本の成長に担うべき半導体、液晶ディスプレイ産業等で進められていますが、ことごとく失敗するという結果となっています。2012年5月6日付『さらば、エルピーダメモリー』のブログで、エルピーダメモリーがマイクロン・テクノロジーにより買収されたことを書きました。同社はNEC、日立製作所、三菱電機が共同で設立したDRAM製造を専業とする半導体メーカーでした。政府から公的支援まで受けたものの、結果は散々たるものでした。
次は、やはり上記3社で設立されたルネサスエレクトロニクスの経営不振です。業績不振であえぐ同社は、1万規模の大幅な人員削減を含む経営再建策を7月までにまとめることが発表してました(注1)。リストラに伴う費用は大きく、同社は、1,000億円程度の増資を求めており、大株主であるNEC、日立製作所、三菱電機の3社、三菱UFJなど銀行団からの借り入れ等で調達をすることで合意したようです。右図は、半導体集積回路生産額の推移を前年同月比増減率で表したものです。2010年頃に一時的に回復しましたが、同年後半には失速、2012年3月でも前年同月比でマイナスとなっています。とろこで、この半導体集積回路とは何かという疑問が生じます。半導体集積回路とは、線形半導体集積回路、モス型半導体集積回路(メモリ、マイコン、ロジック、CCD)、バイポーラ型半導体集積回路のことを指します(注2)。2011年以降の生産額の減少は、世界的な需要の減少というよりも、円高により海外の半導体メーカーとの競争で追い込まれているという、日本の半導体メーカーの実態を表しています。
2012年5月23日付日本経済新聞朝刊にルネサスエレクトロニクスの経営再建に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『業績低迷のルネサス、経営再建策、7月末までに』です。以下引用文。
『ルネサスエレクトロニクスの業績が低迷している。車を制御するマイコンでは世界シェア3割と首位を堅持するが、薄型テレビなどに搭載するシステムLSI(大規模集積回路)の販売不振が響く。事業構造や生産体制を見直し、7月までに経営再建策を公表する予定。ただ、主要株主であるNECと日立製作所、三菱電機の3社が支援に応じるか不透明で、調整は難航する可能性もある』
ルネサス側は、システム統合の結果、支払日を変更する必要が生じたと説明していますが、半導体製造装置や部材メーカーに対して代金支払いの延期を求めており、資金繰りが厳しいのではないかという疑問を呈する要請だと感じています。エルピーダの後を追っているような印象を受ける記事です。そして、最近まで存在すら知らなかった、中小型液晶(注2)でトップシェアを握るジャパンディスプレイという会社があります。同社は、東芝、日立製作所、ソニーの傘下にあった3つの子会社を統合、4月1日に設立されたばかりです。子会社統合に関する記事が『週刊ダイヤモンド』2012年6月9日号に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『"日の丸電機"失敗の歴史』です。以下引用文。
『今年4月1日、ある会社が注目の中、始動した。ソニー、東芝、日立製作所の傘下にあった3子会社の統合で誕生した、中小型ディスプレイの専業メーカー、ジャパンディスプレイ(JD)だ。
この統合の背景には、スマートフォンやタブレット向けの中小型ディスプレイ市場の成長を取り込む意図がある。3社が統合すれば世界シェアの2割を占めるトップとなり、さらに世界で一日の長があるといわれる技術力まで結集できる。
そこに官民ファンドの産業革新機構から、政府保証付けの2000億円もの公的な成長資金まで投入されて、"日の丸"中小型ディスプレイ専業メーカーが誕生したのだ』
確かに、ジャパンディスプレイは成長分野であるスマートフォン向けでもある程度シェアを握っていることが推測されます。もっとも、競争相手であるシャープは、台湾の鴻海グループとパネル生産で共同事業を展開することが発表されたばかりです。鴻海グループとえばEMS最大手のフォックスコンのことです。同社は、米アップル社と良好な関係を維持し、iPhoneやiPadの生産を一手に担っています。そして、シャープとの提携により、次世代のiPhone用の液晶ディスプレイには、シャープ製品(注4)が採用される可能性が高まっています。iPhoneの市場に参入できない場合、市場シェアの低下ばかりでなく、ジャパンディスプレイの利益が大幅に減少する可能性があります。何故なら、格安のアンドロイド系のスマートフォンのディスプレスが15〜16ドルであるのに対して、iPhone4Sは37ドルもするからです(注5)。合併の効果は大きいものの、そこへ転籍させられる社員の士気や仕事のやり方の違いによる摩擦などマイナス面もあると思います。エルピーダ、ルネサスの二の舞はどうしても避けたいところです。
(注1)ブログ作成後、1万4千人に増加。
(注2)経済産業省『鉱工業指数』参考。
(注3)中小型液晶パネルなのか、中小型液晶ディスプレーなのか特定できなかったため、中小型液晶と表示。
(注4)全量ではないものの、シャープ製のディスプレイが新型iPadに採用されています。
(注5)『週刊ダイヤモンド』2012年6月9日号より。

0 件のコメント:

コメントを投稿