2012年6月9日土曜日

円高による投資の海外比率の上昇と空洞化

設備投資に関して、昨年あたりから危惧されていることがあります。それは、民間の設備投資である民間固定資本形成が、資本減耗である減価償却を下回っていることです。国民経済の成長の要素には、労働者数の増加、技術革新、そして資本ストックの蓄積があります。技術革新が進んでいるものの、技術者の高齢化という問題もあり、今までのようなペースで革新的な技術の開発はできないかもしれません。そして、15歳以上65歳未満の生産年齢人口も減少し、それに追い討ちをかけるように資本ストックが減少へと転じています。長期金利は将来の潜在成長率を反映しているともいわれています。期近では長期金利の利回りが0.82%まで低下していることは、わが国の成長率が、今後一層低下することを予見しているのかもしれません。
民間企業の資本減耗に関する適当なデータが見つかりませんでしたので、内閣府発表の『国民経済計算』ストック編、制度部門別勘定の民間非金融法人企業の期末貸借対照表を追ってみました。このデータのうち、非金融資産のうち生産資産(在庫を除く)が民間の資本ストックに近いと考え、グラフを作成したのが右図です。適当なデータが見つからなかったものの、イメージに近いグラフが作成できた気がします。この図から貸借対照表上の在庫を除く生産資産は、2008年をピークに減少していることがわかります。
 2012年6月3日付日本経済新聞朝刊に、この減少を裏付ける記事が掲載されていましたので引用します。円高が定着する中で、製造業を中心に設備投資の海外比率が高まっており、国内の資本ストックの減少の一因となっていることがわかります。記事のタイトルは『設備投資2ケタ増、円高、新興国シフト一段と』です。以下引用文。
 『日本経済新聞社がまとめた2012年度の設備投資動向調査によると、全産業の当初計画は11年度実績比16.8%増になる。増加は3年連続で、新興国投資が活発な製造業が20.9%増とけん引する。国内外の内訳がわかる6割の企業でみると、海外比率は4割弱に達する。円高が続くなか、各社は投資の海外シフトを一段と進めるが、世界経済の減速懸念が投資戦略に影響する可能性もある』
海外投資比率が50%を上回っているのはトヨタ自動車で、インドネシアやタイでの増産を維持することが目的のようです。また、東レも韓国に炭素繊維関係の新設備を設けることで50%超となっています。まさしく、国内空洞化の進行ですね。右表は、同日の別の記事に掲載されていた、2012年の設備投資ランキングです。NTTドコモ、東京電力、ソフトバンク、JR東日本の設備投資は国内向けがメインであるものの、それ以外の企業についてはどちらともいえないという結果です。タイトルだけですと、設備投資が2ケタ増と明るい話題にみえるのですが、よく読んでいると、日本経済にとって決して安心できない要素が含まれていることがわかります。確かに、企業にとって設備投資を続けることは、成長力を維持する上では不可欠なことです。しかし、このまま企業の海外進出が進んでいけば、国内空洞化は必至です。米国のように企業や企業経営者ばかりが儲かって、一般大衆は疲弊するという経済の将来像が見えてきます。一般の労働者が従事できるのは、所得水準の低いサービス産業ばかりになって、海外へと進出した企業の株式などを保有している資産のある者は配当金などを得て利益を手にするという、格差社会が本格的に到来するかもしれません。

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