2012年6月26日火曜日

違いがある消費者物価指数、全国と東京都区部

私が経済学をよく勉強していた頃、つまりパソコンがやっと一般の人々の間で使用され始めた頃のことですが、消費者物価指数に関して、(特にパソコンなど)製品の著しい品質向上が織り込まれていないという問題がありました。その時、ヘドニック法という聞き慣れないアプローチでもって品質向上を消費者物価指数に反映させるというレポートを読んだことがあります。それから10年以上たった今、消費者物価指数がどのように変わったか全く把握していませんでした。今日、たまたま総務省統計局のホームページに掲載されているQ&Aを読んでいましたら、このヘドニック法が消費者物価指数に採用されていることを初めて知りました。このヘドニック法に関して回答している部分が総務省統計局のホームページにありましたので紹介します。以下引用文。
 『ヘドニック法とは品質調整に用いられる方法のひとつで、各製品の品質がこれを構成する複数の特性(性能)に分解でき、価格は性能によって決定されると考え、これらの諸特性(例えば、パソコンならHDD記憶容量、メモリ容量、バンドルソフトの有無など)と各製品の価格との関係を、重回帰分析という統計的手法で解析することにより、製品間の価格差のうち品質に起因する部分を計量的に把握しようとする手法です。 消費者物価指数では、品質向上が著しく製品サイクルが極めて短いバソコン及びデジタルカメラについて、品質調整済みの価格変動をヘドニック法により直接求める方法を採用しています。なお、より客観的で信頼度の高い重回帰分析を行うためは、多数の製品についての大量の価格、数量及び特性に関する情報が必要となるため、これらのヘドニック法の適用に当たってはPOS情報を用いています』
パソコンの性能向上及び市場規模はほぼ飽和状態となっており、今後はスマートフォンやタブレット端末が主役となるでしょう。消費者物価指数は、これらの価格をどのように捉えていくかが問題となるといえます。スマホの価格は、本体価格が通信量に含まれるなどして、実質無料などのキャンペーンもあり、加えて複雑な料金体系などもあって直感的に理解できないところが多々あります。パソコンなどで使用されたヘドニック法などのアプローチがそのまま適用できるかどうかはやや疑問が残ります。新たな手法の開発が求められるところです。
今日は、消費者物価指数に関して、2012年6月25日付日本経済新聞朝刊に面白い記事が掲載されていましたので紹介します。東京の一人勝ちというイメージが強かったので、全国ベースで物価が上げ基調にある中で、東京都区部だけが下落しているとは信じがたい事実です。記事の題目は『脱デフレ、東京出遅れ、全国と逆に物価下落が続く』です。以下引用文。
『全国の消費者物価の上昇基調とは対照的に、東京の物価の下落に歯止めがかからない。生鮮食品を除く全国の物価指数は4月まで3ヵ月連続で前年同月を上回ったが、東京都区部に限ると2009年5月から3年間もマイナスが続く。食料品や住宅関連、家電などで全国よりも下落の圧力が強い。東京は販売競争が激しく、価格を上げにくいことが背景にありそうだ』
この記事に特に興味を持ったのは、人口1万人当たりの売り場面積を比べている部分です。何と、東京は全国の7.8倍にも上るそうで、東京で行われている競争が激烈であることがよく理解できます。これは、観光客や外国人ビジネスマンなど外部からの需要がなければ維持できない水準であるといえます。
そこで、東京の物価下落に歯止めがかからない原因には、世界的なマネーの萎縮があるのではないかと考えました。アイスランド、アイルランド、イギリス、米国など金融セクターの比率が高い国々は、世界でも景気後退や財政悪化が著しいことに共通点があります。日本の金融の中心である東京こそ、リーマン・ショックのダメージが大きかったのでないでしょうか。詳しくデータを調べる必要がありますが、世界各地で銀行の経営が行き詰まっていることを考えれば、地方経済と比べて、金融セクターの比率が高い東京へのマイナスの影響は必然的に大きいといえます。
 右図は、2007年以降の消費者物価指数・総合の前年同月比の推移を、東京都区部と全国別に表したものです。08年に物価が大きく上昇しているのは、世界的な資源高に加え、円安が進行していたことに原因があります。その後、09年に底をうってからはマイナス幅が急速に縮小、全国では4ヵ月間連続のプラスとなっています。一方、東京都区部は逆にマイナス幅が拡大するという結果となっており、同地域の厳しさを反映しているといえます。東京都区部のデータが速報値であること、全国の2012年5月のデータが発表されていない点もありますが、今後の動向が気になるところです。

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