2012年6月24日日曜日

モリブデン確保に向け、三菱UFJが融資

ここへきて、大手金融機関の活躍が目立ってきています。先日も天然ガスの確保に向けてイスラム金融に従った融資を実行する旨ブログで書きました。また、アジア・太平洋諸国での貿易金融でも日本の金融機関のシェアが高まっています。欧米の金融機関が、債務危機など苦しみ、動きがとられないところで、市場から資金を調達せず、地道に預金を集めている日本の金融機関は存在感を増しています。日本国債を購入するチャネルは郵貯銀行に任せて、大手金融機関などは新たな市場開拓に向けたビジネス展開が求められるところです。
今日は、レアメタルの一つであるモリブデンの安定確保に向けた動きです。モリブデンという金属が、銅の副産物として産出されることを、以前、NHKの報道番組で観たことがあります。その番組では、日本の商社マンがモンゴルの採掘現場にまで赴き、銅鉱山の状況を把握、モリブデンがどの程度存在するかを自分の目で確認している姿に感動しました。日本の金融マンもここまでできれば、邦銀の世界でのプレゼンスはさらに高まると思います。とろこで、モリブデンとは何かという疑問があります。ここで、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構作成の『鉱物資源マテリアルフロー2010』からモリブデンに関する説明文を引用します。以下引用文。
『モリブデンの主な用途は、ステンレス鋼、特殊鋼の合金添加剤である。合金添加剤市場は、ステンレス鋼、特殊鋼の需要に連動して変化する。触媒として石油化学や環境機器等にも使用されている。高温強度、耐熱等の特性からモリブデン合金、特殊合金は、耐熱性、熱伝導性などの特徴を有し、液晶パネル用ターゲット材、パワーデバイス用放熱板など電子機器の増加に連動して成長している。二硫化モリブデンの特徴を生かしたエンジンオイル添加剤など、潤滑剤、無機薬品などは大きな変動がないと見られている』
やや分かりにく言葉が連続するため、理解できない点もありますが、要はモリブデンの用途は幅広いということです。右図は、モリブデン鉱石の生産量の推移を示しています。図からは、2007年から米国を抜いて、中国がトップになり、その差は広がっていることが読み取れます。中国は、2つの意味でモリブデンの生産量が増大していると考えられます。一つは、自動車の販売台数が世界トップとなり、ステンレス鋼の需要自体が増加しているためです。もう一つは、インフラ整備のため、産業の血管ともいわれる銅の需要が爆発的に増加、結果として副産物であるモリブデンが産出量も同様に増加しているためです。わが国は、中国に鋼材を輸出していることから、中国へと流入しているモリブデンの量はさらに増加することとなります。
そして、このモリブデン確保のため、日本の金融機関が動いている旨記述している記事が2012年6月1日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『三菱UFJ、チリ銅公社に250億円、レアメタル確保へ融資』です。以下引用文。
『三菱東京UFJ銀行はチリ銅公社に対し、日本企業へのレアメタル(希少金属)供給を条件に融資する。総額3.2億ドル(約250億円)の融資に先立ち、JFEスチールや新日本製鉄など9社がステンレス鋼などの製造に必要なレアメタル、モリブデンを銅公社から長期間輸入する契約を結ぶ。融資をテコに新興国との獲得競争が強まるレアメタルを安定的に確保しやすくする』
バブル崩壊後、日本経済の足を引っ張るばかりの金融機関が、資源高騰と安定確保に苦しんでいる日本のメーカーを助けることができることは喜ばしです。モリブデン以外にもレアメタルは多くあります。また、デジタル機器の生産に不可欠なレアアースの確保にも、同様に力を発揮すれば、製造業に日本にとどまるメリットを再認識させ、空洞化にストップをかけることができるかもしれません。

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