2012年6月1日金曜日

EUの新条約の批准とアイルランドの国民投票

私は、25年くらい前にアイルランドに行ったことがあります。記憶は定かではないのですが、リバプールには行っていませんので、グーグルマップから推測して、イギリス・ウェールズのホリーヘッドからダブリンへの航路を使って入国しました。ダブリンは、当時は余りぱっとしない町だったという印象を受けましたが、その後、低い法人税率をテコに外国企業の誘致に成功し、欧州債務危機までは躍進を続けていました。私が観た当時の町並みと現在では様変わりしていると思います。ダブリンではユースホテルに一泊して、その後鉄道で南へと下り、曖昧な記憶ですが、ロスレアハーバーにまで移動し、その日もアイルランドに宿泊する予定でした。しかし、何とその町にあるユースホテルが営業をしていなくて、どうにもならなくなり、イギリスへと航路を使って戻りました。アイルランドから直接、フランスへと入国する航路もあったようですが、当時フランスは、テロ防止を目的にビザの取得を義務づけていたため、やむを得ず、ロンドンへと移動、フランス大使館でビザを取得するという経験をしました。現在では国内旅行ばかりしている私にとって信じがたい行動ですね。ユーロ安が進んでいますので、来年くらいにはヨーロッパ旅行でもとは考えています。
 そのアイルランドで、EUの新条約批准の賛否を問う国民投票が31日に行われました。結果次第では、同国は、7月に設立されるヨーロッパ版のIMF「欧州安定メカニズム(ESM)」からの金融支援が受けられなくなる可能性もあり、そうなればギリシャに続く危機の発生といえます。もっとも、2012年5月31日のNHK「ワールドWave トゥナイト」では、事前の世論調査では50%余りが批准を賛成、反対は30%程度と賛成が優勢となっています。しかし、決めかねている人も20%程度もいることから予断を許さないと、NHKでは解説していますが、私は大丈夫ではないかと予想しています(ブログ作成時には結果が発表されていませんのでご了承下さい)。
 新条約とは、2012年1月に合意され、2013年1月の発効を目指しています。この条約の目的は、EUが信用不安の再発を防ぐために、各国の憲法などに財政規律強化のための規定を明記するよう義務づけるもので、守れない国に対しては厳しい制裁措置をとるとしています。条約は、ユーロ加盟17カ国のうち12カ国の批准があれば発効するため、アイルランドで反対票が上回ったとしても、新条約の発効そのものには影響はないそうです。他の16カ国では議会の多数決で決定されますが、何故かアイルランドだけが国民投票を選択しています。過去にも同国では国民投票でEUの基本条約を否決したこともあり、このタイミングでの国民投票は、結果、ユーロの不安定化をもたらす要因ともなっており、同国の指導者や議会関係者の能力に対して疑問が残る対応だと感じています。
 ここで、2012年5月31日付朝日新聞朝刊の記事を引用します。記事の題目は『反緊縮連鎖止まるか、アイルランド、きょう国民投票、EU財政協定賛否』です。以下引用文。
 『2008年のリーマン・ショックに苦しんだアイルランド。不動産バブルの崩壊で巨額の不良債権を抱えた銀行を政府が支援し、財政は急速に悪化した。10年11月、EUや国際通貨基金(IMF)から総額850億ユーロ(約8兆5千億円)の支援が決まった。
 その支援は、来年で終わる。立て直しは、道半ばだ。ケニー首相は「経済回復に必要な安定と確実さをもたらす」として国民投票で賛成を呼びかけている』
右図は、アイルランドの名目GDPと財政赤字の推移を示しています。名目GDPが凄まじい勢いて減少していることに特徴があります。また、2010年の大幅な財政赤字の拡大は、政府による銀行支援の結果でしょう。ギリシャ議会に続き、財政規律の厳格化に否定的なオランド・フランス大統領の当選、反緊縮の流れはドイツ国内でも生じています。そこまで、欧州危機は深化しているといえます。ユーロ加盟国や世界各国は、とにかく条約の発効に期待しているところですが、ユーロ相場が下落を続けています。日本企業にも直接的な影響があり、トヨタ自動車、キャノンなどユーロ相場の下落により営業利益の減少が予想されている企業の株価が軒並み大幅に下落しています。ドルに対しても円相場は上昇しており、もういい加減にしてほしていのが、私の本音です。

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