2012年10月7日日曜日

老人ホーム経営が成長分野、悲しい日本の実態

 日本の人口に占める65歳以上の人口は、今後、大幅な増加が確実視されています。そうした中で、老人ホーム経営が、成長分野として期待されており、既に参入している企業は、施設の増大に取り組んでいる一方で、鉄道・不動産など異業種からが介護ビジネスに商機を求めるケースが多くなることが予想されます。
 しかし、老人ホーム経営が、国内で成長分野となったとしても、日本の国際競争力向上には結びつかないでしょう。むしろ、今まで研究活動に従事していた人や、これから研究活動へと挑もうとしている若い人々が、新たな技術や発見に関わることが少なくなるばかりか、海外企業へと自らのチャンスを委ねる可能性は十分にあります。上図は、人口問題研究所のホームページ掲載のデータから作成した65歳以上の人口と65歳の人口1人に対する生産年齢人口(15歳〜64歳)の推移を示したものです。出生数、死亡数はともに、中位推計をとっていますが、過去にも出生数は低位推計を下回るケースが多く、グラフよりも生産年齢人口は大きく減少することが予想され、高齢者1人に対する生産年齢人口は限りなく1人に近づいていることが読み取ることが出来ます。そして、この老人ホーム経営が、成長産業として成立する唯一の条件は、非人道的な言い方かもしれませんが、効率的な介護システムを構築し、より少ない人数で多くの高齢者の介護できることが実現できた時だけと、私は考えています。
 老人ホーム経営に関する記事が2012年9月24日付日本経済新聞夕刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『老人ホーム経営、成長軌道。進む高齢化、施設需要増大。入居金、拠点原資に』です。施設の巨大化により効率的なシステムを作ることは可能でしょう。ハイテク好きの私はやや否定的な見解ではありますが、高齢者数の増加は現実であり、それを如何にして対応するかが、日本経済にとって最重要な課題といえるでしょう。以下引用文。
 『老人ホームの経営が成長軌道に乗ってきた。高齢者が契約時に一括して払う高額の入居金の残高が増加。高齢化で施設が不足気味のなか、入居金を原資に拠点を新設する動きが加速してきた。ただ、入居金を巡るトラブルも増えており、政府は規制強化に乗り出した。
 老人ホームに入る場合、高齢者は契約時に入居金を払う。金額は部屋の広さやサービス内容にもよるが、1人1000万円程度が一般的。3億円に達する施設もある。入居者はさらに食費や賃料などの実費を毎月払う。
 入居者が自立して生活できないような状態にある場合、老人ホームは自治体の介護保険制度から一定の報酬を受け取る。近年は施設の運営状況に応じて報酬も増大する傾向にあり、利益が出やすくなった』
 記事を読んでいると暗くなります。道路や橋の整備が終わったとろこで、自治体は一斉に空港の整備を進めました。今度は、老人ホーム経営という印象が拭え切れないです。ビジネスとして成立し、かつ自立したビジネスとして認められるためには、自治体からの支援なしでやってもらいたいところです。つまり、ビジネスには常にリスクがあり、そのリスクをテイクしているからこそ報酬を得る権利が企業には発生します。自立できないからといって、安易に自治体から支援を受けるというのは、自立したビジネスではないです。むしろ米国などで行われている刑務所などの民営化と同レベルの話であり、自治体の支出を如何に抑えるかといった問題にすり替えに過ぎません。
 そして、2012年10月5日付日本経済新聞夕刊に、介護の商機を見いだし、異業種からの参入に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『鉄道・不動産、介護に商機』です。以下引用文。
 『老人ホームやサービス付き高齢者住宅といった介護施設の運営事業に、異業種から新規参入したり事業を拡大したりする動きが広がっている。これまでは医療関連など事業内容が近い業種からの参入が中心だったが、最近は不動産や鉄道会社などに広がったのが特徴。既存事業が成熟する中、保有資産や顧客基盤などを生かし、拡大する「シニア市場」を取り込む』
 参入企業のリストには、ヤマダ電機(家電量販店)、南海電気鉄道(鉄道)、北海道中央バス(バス)、NKSJHD(損保)、ヒューテック(不動産)、学研HD(教育)などがあります。製造業が入っていないのは、製造業は成長のある海外市場を求めて、海外へと工場を移転し、生産活動を継続すれば済むからです。国内需要に限定された業種が、介護ビジネスへと参入しているのは、国内需要が萎縮している中でやむを得ない選択です。しかし、ビジネスとして認められるには、税金に依存しないシステムを構築することが不可欠であり、これが実現できれば、今後、高齢化が進むことが予想される中国などへと進出することも可能であり、注目を受ける企業として世界で認められることとなるでしょう。これについては、私は懐疑的な目に見ていますが、日本のガラパゴス的なモデルではなく、世界標準のモデルとして認められるまでのシステムを構築するのだという気概を持って、この分野へと参入してもらいたいと思っています。 

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