2012年10月11日木曜日

IMF出資比率の変更と存在感を増す新興国

  2012年10月9日に、国際通貨基金(IMF)・世界銀行総会が、東京国際フォーラムで始まりました。東京での開催は、実に48年ぶりのことで、世界経済に減速懸念がある中、話し合われる内容が注目されています。もっとも、この開催に水を指す行動をしたのが、中国の大手銀行です。IMFと世界銀行の年次総会に、中国工商銀行、中国銀行、中国建設銀行、中国農業銀行がそろって不参加となることが伝わってきました。欧州債務危機の解決の糸口が見えなく、世界経済の今後の見通しが不透明になっている、この重要な時期に、キーとなる国際会議に出席をしないという振る舞いは、経済大国中国は如何なるものかという印象を受けました。
 IMFの世界経済の見通しに関する記事が2012年10月9日付日本経済新聞夕刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『世界経済見通し、下方修正。新興国が息切れ。IMF・世銀総会開幕』です。以下引用文。
 『総会日程の最初に、IMFは四半期ごとに見直している世界経済見通しの10月改訂版を発表した。12年の世界の成長率は3.3%と、7月時点の予想を0.2ポイント下回った。修正は小幅だったが、10年(5.1%)や11年(3.8%)と比べると12年は減速する。13年は3.6%への回復を見込むが、7月予想より0.3ポイント下方修正した。

 IMFのブランシャール経済顧問は9日の記者会見で「世界経済は回復を続けているが回復力は弱まっている」と述べ、先行きに懸念を表明した。減速の要因としては「財政再建が需要を減らしているほか、欧州を中心に金融システムが不安定だ」と指摘した。
 IMFが世界経済の見方を厳しくしているのは、けん引役だった新興国の高成長が息切れしているためだ。12年の中国の成長率は7.8%と、7月よりも0.2ポイント下げた。中国政府が雇用を確保するために必要としてきた8%を割り込むとみており、同国経済に懸念を強めている』
 ドイツが南欧諸国支援で消極的な立場をとっている中で、ユーロ圏の問題をユーロ圏の国々で処理するには、利害の対立があることから困難な様相を呈しています。そこで考えられるのが、IMFによるギリシャ、スペインなどへの支援強化を浮かび上がってきます。もっとも、支援強化には、資金が必要であり、ほぼ倍増の増資を行うIMFの第14次クウォータの一般見直しが速やかに実施されることが望まれます。しかし、現時点で17.67%を出資比率を有する米国の同意なくして新たな増資、出資比率の見直しができないのが実情です。この出資比率の変更に関する記事が、2012年10月9日付読売新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。以下引用文。
 『中国やインド、ブラジルなどは発言権のアップを求めて、2010年12月には、中国の出資比率をドイツを上回る3位にまで上げるなどの第14次改革がまとまった。
 各国の出資総額も約57兆円に倍増させるほか、運営の中心となる理事会を構成する理事24人のうち、欧州先進国が持つ2ポストを新興国に移すことも含む。
 第14次案については、「米財務省は、11月の大統領選が終われば手続きを進めるとIMF側に伝えている」(関係者)というが、次の改革の先行きは全く見通せない。
 13年1月までに出資比率を見直す計算方法を決め、14年1月に見直しを終えるのが目標だ。米財務省高官は5日、「我々は改革を支持し続ける」と語ったが、実際には「米国は台頭する中国への警戒感を強めている」(国際金融筋)とされる。
 今回の総会で、次の改革への道筋をつけられるかどうかは、約17%の議決権を持ち、唯一単独で拒否権を握る米国がカギを握る』
 米国の動向がカギを握っているのは、出資比率の変更には、出資比率に応じて与えられる総議決権(議決権シェア)の85%という大多数に承認されなければならないからです。同様に、加盟国の出資額は、当該国の同意無しに変更することはできないそうです。IMFは、今でこそ設立当初の機能は失っているものの、現在でも金融危機に陥った国々への資金面での支援において存在感は依然として大きいといえます。この出資比率の変更が実施された場合、確実にIMF内での中国の存在感は増していきますが、拒否権を持つまでの比率を維持する限りは、米国の同意なくしてIMFは自由には動けないはずです。IMFの支援枠の拡大が期待される第14次の改革案が速やかに実施されることが望まれるところです。

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