2012年2月5日日曜日

米国が天然ガス輸出国に

最近、在来型天然ガス、非在来型天然ガスなどという言葉をよく耳にします。在来型天然ガスとは中東やロシアに豊富な埋蔵量がある、いわゆる天然ガスのことで、地下に穴を開けた状態で自然に地上へと吹き出してくるタイプの天然ガスを指します。一方、非在来型天然ガスとは、シェールガスに代表される、昨今の技術な進歩で採掘が可能になった天然ガスのことを指し、シェールガスのほか、タイトガス、コールベットメタンなどがあります。在来型天然ガスが、石油採掘でいう「油井」に近い(注1)もので採掘されるのに対して、シェールガスの採掘には、『岩石内の流れやすさを改善するため、岩石中に沿って穴を通したり(「水平坑井」という技術)、人工的に割れ目を作ったり(「水圧破砕」という技術)しなければないない』(井原)など高い技術が求められます。この非在来型天然ガスが開発可能になったことで、米国におけるエネルギー資源の海外依存度が劇的に低下するなど、米国の世界戦略を左右するまでになっています。
 2012年1月25日付日本経済新聞朝刊に米国のエネルギー事情に関する記事が掲載されていましたので引用させていただきます。題名は『米、エネルギー自給進む。シェールガス増産、沖合油田開発』です。以下引用文。
 『【ワシントン=御調昌邦】米国のエネルギー対外依存度が低下している。新型天然ガス「シェールガス」やメキシコ湾の沖合油田開発が進み、消費エネルギーに占める輸入の割合は2010年の22%から35年には13%に低下する見通し。新たな技術の実用化などで、これまで採掘が難しかった鉱区での開発が可能になることが背景。オバマ政権は豊富な埋蔵量を背景にエネルギー安全保障を強めており、対イラン制裁などで強気の姿勢をとる原動力になっている
 米国は、自国の資源獲得のためには戦争までします。エネルギー政策は国家安全保障のキモであり、米国の世界戦略を強く反映します。米国では原油生産が、1986年から減り始めていたが、2008年から上向き、日量550万バレルの生産しているそうです。2020年には日量670万バレルまで増加、この背景にはメキシコ湾沖合での原油生産増加があるとしています。確かに、この沖合での原油生産は、ブラジルでも進んでおり、ブラジル経済の成長に寄与しており、他国でも生産が期待されている分野といえます。
 これに加えて、上述のシェールガスの生産が好調で、10年には国内生産量の23%を占めるに至っている。そして、35年には49%にまで上昇すると見込んでおり、21年には天然ガスの純輸出国になることが予想されているそうです。
 図はシェールガスの回収可能量の国別シェアを示したものです。シェールガスの技術的回収可能量は合計で6,622兆立方フィートで、2009年の在来型天然ガスの確認埋蔵量6,400兆立方フィートとほぼ同水準に達している。因に、2008年の世界の天然ガス消費量は106兆立方フィート(日本は3.3兆立方フィート)ですので、両者を合わせてざっと年間消費量の100年分以上の資源量あることになります(注2)。原子力政策が頓挫しており、今後、天然ガスの依存度を高める必要があるわが国にとって、これは朗報だといえます。確かに、米国でのシェールガス生産の拡大は、中東からの天然ガス輸入を減らし、結果としてその分がヨーロッパへと回ったという記事を読んだことがあります。この影響で天然ガスの価格が下がっているそうです。
 残念ながら、わが国にはシェールガスがないようです。でも太平洋側沖合に存在するメタンハイドレードの採掘技術の開発に力を入れており、近い将来、日本も天然ガスの純輸出国になるかもしれませんね。
(注1)天然ガス採掘に使われる機器の方が、石油採掘の油井よりも複雑であり、耐圧性なども求められる。
(注2)データは井原(2011)のもの。
(参考文献)井原賢『世界の天然ガス埋蔵量の急増』、石油天然ガス・金属鉱物資源機構、2011年。

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