そこで、米国における労働者の賃金はどの程度の水準なのかを調べてみました。米国労働省労働統計局発表の資料では、2011年9月時点における週平均賃金(民間非農業)は654.86ドルだそうです。これを現在の円ドル相場1ドル=77円で日本円換算すると、米国の労働者は週に50,424円の賃金をもらっていることとなります。日本の労働条件とは異なるため直接比べることはできませんが、仮に週40時間労働(注1)として時給を計算すると時給1,260円に相当します。米国におけるボーナス制度はケースバイケースとのことで、中間層以上で業績のいい人々のみ分厚く支給されるという話も聞いたことがあります。これが事実ならば、米国人の一般的な労働者は、時給1,260円、週給50,424円、月収218,335円(1月を4.33週にて計算)のみ受け取ることになります。
上図は、2002年〜2011年の米国の週平均賃金を推移を表したものです。米国のインフレ傾向の賃金、つまり右肩上がりの賃金が米ドルベースでははっきりと現れています。一方、円相場で換算した賃金は、2007年をピークに急落しています。これは円高が、米国の賃金上昇を上回るペースで進んだことを意味します。ここで、2012年1月26日付日本経済新聞朝刊のオバマ米大統領の一般教書演説に関する記事を引用します。記事の題目は『一般教書演説、米製造業復活へ税優遇』です。以下引用文。
『【ニューヨーク=小川義也】オバマ米大統領は24日の一般教書演説で米製造業の復活を目指す姿勢を鮮明にした。雇用拡大やハイテク企業の国内回帰を促す優遇税制導入などが柱。米製造業に人件費やエネルギーコストの低下といった追い風が吹く中、強力な支援策となる可能性がある。(中略)これは、日本との比較ではありません。世界の工場である中国の労働コストと米国の労働コストがほぼ同水準になることを示しています。円相場が高すぎるのか、日本の賃金が高すぎるのか分かりませんが、賃金の切り下げ又は円安へと向かわない限り日本の製造業はコスト面から国際競争力を失う可能性があります。
製造拠点として米国が見直されている理由の一つは、人件費の低下だ。米ボストンコンサルティング・グループは、賃金上昇が続く中国のコストと、金融危機を経て賃金水準が切り下がった米南部のコストは、15年に生産性などを含めた実質的な値で並ぶとみる』
(参考文献)浜矩子『「通貨」を知れば世界が読める』、p5、PHPビジネス新書、2011年。
(注1)週40時間で計算したのは、日本の労働基準法に基づくもの。『使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません』に従ったもの。
(注2)いわゆる残業手当。
(注3)年末等に支給されるボーナスは特別給与に含まれる。
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