2012年2月20日月曜日

中国経済に失速の懸念

中国人民銀行は、預金準備率を引き下げたようです。2011年12月に引き続いて0.5%引き下げ、具体的な数値の発表はないそうですが、大手行の標準で20.5%とみられるとのことです(2012年2月19日付日本経済新聞朝刊)。1月の消費者物価指数が4.5%と、前月の4.1%を上回り、予想外の伸びを示している中での引き下げであり、中国政府が景気の下振れリスクを警戒した対応であると考えられます。欧州債務危機が最悪の事態を迎えた場合、実質GDPの成長率が4%台まで低下するとの予想が国際通貨基金(IMF)から発表されています。このため、中国政府は、慎重であった欧州への追加支援についても、前向きの姿勢をみせているようです。ここへきて、欧州債務危機により、順調に推移してきた中国経済の足がすくわれる可能性も出てきており、しばらくは注意する要する状況が続くでしょう。
右図は、2007年以降の中国の実質経済成長率と消費者物価指数の推移を示しています。リーマンショックの影響もあり、2009年第1四半期には、6.5%にまで経済成長率が鈍化したのですが、中国政府による積極的な財政支出など内需刺激策を功を奏し、2010年第2四半期には11.2%にまで回復しました。その後、引き締め政策もあり、徐々に鈍化、期近の2011年第4四半期には9.2%となっています。一方、物価水準は、実態とはかけ離れている印象か強いです。統計上では、2009年にはマイナスへとなっていますが、好調な経済を持続している中国で物価上昇がマイナスとなるということが、はたしてあるかどうか疑問が残る統計データです。期近では4%をやや上回る程度に収まっており、どちらかとえば不動産バブルを押さえ込む目的で、高い預金準備率を維持していると思われます。
もっとも、20%もの高い準備率に維持していも、大幅な所得水準の引き上げが続いており、所得の増加が預金の増加をもたらしいるという状況に変化はなく、融資残高は決して減少しないのが、今の中国経済であるといえます。戦後の日本経済も同様です。旺盛な投資需要があっても、それに対応できる国内貯蓄の増加があり、それが所得増加によりもたらされたものでした。つまり、高成長が貿易収支の赤字へとは結びつかなかったことが、日本経済の持続力であったといえます。今の中国も同じことがいえます。つまり、高い経済成長率と大幅な貿易黒字の共存です。東南アジアや韓国などで通貨危機があったのは、旺盛な国内需要を国内貯蓄だけで賄いきれなかったという事実があり、中国経済の持続力は戦後の日本経済と本質的には同様のものだといえます。
 しかし、そんな日本経済もドルショック、オイルショックという2つの外的ショック以降経済成長率が徐々に鈍化し、安定成長へと移行しました。中国経済も、これで2つめの外的ショックを受けたことになります。欧州経済次第ですが、中国も安定成長へと向けた動きがみられるかもしれません。

0 件のコメント:

コメントを投稿