2012年2月22日水曜日

国別製品別の価格差

私は、内外価格差こそが為替レートに最も影響を与える要因であると考えています。もっとも、短期的には金利差の影響が大きく、私も高い金利水準に魅力を感じ、外国政府発行の外貨建て国債をこづかい程度に持っています。私の投資スタンスを混乱させる2つの記事・特集が、同じ週に出版された経済誌に掲載されていましたので、そのことについて少しばかり書かせていただきます。
一つ目は『週刊ダイヤモンド』2012.2.18号掲載の『困ったことに円は最強通貨、世界景気悪化でさらに上昇』という題目の記事です。同記事は、2010年初からの上昇率で、日本円と豪ドルが突出していることを指摘しています。しかし、円と豪ドルの決定的な違いは、日本が経常収支の黒字国で、債権国であるのに対して、オーストラリアは経常収支の赤字国で、債務国であるとしています。この結果、世界経済が少しでも回復の兆しがあれば、資源高に結びつきやすく、豪ドル相場は上昇しやすい。一方、債権国である日本は、ドル、ユーロが下落するなか、分散投資対象として選好されるようになっている。このため、世界経済が失速すれば、逆に円が買われるという局面があり、やはり円相場は上昇しやすいということです。これは、時々介入はするものの、日本円は基本的には為替管理がされていない数少ない通貨であることが背景にあるとしています。原油価格、金価格は依然として高水準ですし、資源高というトレンドに変化ありません。同時に、欧州、米国の景気の先行きは不透明感があり、2つの矛盾する流れが混在するのが今の世界経済です。
二つ目は、『週間エコノミスト』2012.2.21号の『不都合な経常赤字』(国債暴落、インフレを呼ぶ)という特集です。この特集を読んでいると、日本経済はもう駄目で、金融資産を全て外貨建て資産か「金」へと振り替えなければならないような気持ちになります。こちらの方は、国内貯蓄が減少し、海外からのファイナンスを受ける、つまり2010年代半ばにも経常収支が赤字化する可能性が出ていることを指摘しています。確かに、2011年の貿易収支が31年ぶりの赤字になったことには驚いています。これに加え、この特集では、今後、利回りの低下から海外投資から得られる所得収支も減少、2015年にも経常収支が赤字へと転じると予測しています。そして、経常収支が赤字となった段階で、国債先物市場にて外国人投資家が国債の売りをしかけることで、円が暴落、金利上昇へと結びつき、超インフレなど国内経済が混乱する恐れがあるとしています。通貨安、インフレ、高金利の三重苦に苦しんだ、戦後のイギリスそのものです。貯蓄率が低下傾向にある中、経常収支の赤字は現実味が帯びてきています。また、特集記事記載のデータで、外国人投資家が、既に28.3兆円、比率で16.5%もの短期国債を保有しており、プレゼンスが以前よりも増しているという事実を知りました。国債は売られやすい状況にあるといえます。
同じ週に、全く反対の意見の記事を読んでいると混乱します。私は、内外価格差こそが最終的に為替相場を決めるという考えでいます。投資スタンスが5年や10年などの短期・中期的な動きで左右されることはありません。しかし、不安がありましたので、内外価格差を少しばかり調べてみました。ここで、リストアップされている製品(又は商品)の特徴は、品質において差がないことです。そして、この価格を提供している企業も同一である点で比較しやすいと考えました。しかし、この表を作成していて気がつきました。私がいう内外価格差とは、所得水準に比して、当該の製品が高いかどうかです。上記リストの製品は、典型的な貿易財です。価格差がなくて当たり前です。私が分析するべき内外価格差は、非貿易財です。従って、残念なことです、せっかく作った表ではありますが、長期的な為替相場を説明する上では、あまり意味がないかもしれません。
一応、上記表の説明をします。アップル製品は、各国のアップルのホームページにて提示された価格を元に算出しています。それ以外の製品は、アマゾンのホームページで提示されている価格を元に算出しています。それぞれの国で提示された価格を、2012年2月14日時点の為替レートで円に換算し、日本での提示価格を1として、各国で提示されている金額を指数化したのが上記の表です。総じて、ユーロ圏での価格がやや高めであるのに対して、米国、カナダでの価格は安いという結果になっています。付加価値税の取り扱いが不明です。税率が高いことが原因ではないでしょうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿