2012年2月4日土曜日

建機の厳しい現状

以前、GPSを装着し、稼働状態をリアルタイムでチェックすることができる建機(建設機械、英語:construction equipment)を製造している日本企業が特集されている番組をみました。私は、その時、日本の建設機械メーカーの技術水準に感嘆、まだまだ競争力のある分野があるのだという印象を受けました。それからかなり時間が経過した現在、建設機械を製造する日本企業の実情を表す記事が掲載されていましたので引用します。引用元は、日本経済新聞2012年1月23日付朝刊で、記事の見出しは『油圧ショベル、中国シェア、コマツ首位陥落、三一重工が逆転、販売攻勢激しく』です。以下引用文。
『建設機械の代表格、油圧ショベルの世界最大市場である中国で、コマツが3年ぶりに首位から陥落した。首位に躍り出たのは前年6位から急浮上した地場大手で、「サニー」ブランドで知られる三一重工。今年1年を占う春節(旧正月)連休明けのかき入れ時を控え、台頭する中国メーカーを日本勢も無視できなくなりつつある』
中国市場ですので政治がらみでそもそも不利な立場にあるのは確かですが、日本の建設機械メーカーの置かれている状況は日増しに厳しくなっていることが伺える記事です。以前、日立製作所の連結ベースの利益のほとんどを子会社である日立建機がたたき出していることを聞いたことがあります。世界各地で活躍する日本の建設機械というイメージが強かったのでが、これもかという印象で、とても残念です。もっとも、この分野で技術的に圧倒している日本企業だですが、運用状況をリアルタイムで追跡できるほどのハイテク建機が求められる現場は限られているというのが中国市場の実情でしょう。つまり、中国の建設現場ではそこそこの技術の建設機械の需要が大きいのであって、そこにコマツの首位陥落の原因であったといえます。技術的な優位性は依然として維持している日本企業ですが、そこそこの機械では、当然のことながら価格面で中国地場企業に歯が立たないからです。しかし、上のグラフからみても、建設機械の代表格である油圧ショベルの2011年(見通し)における世界市場に占める中国のシェアは40%近くに達しており、建設機械メーカーにとって無視の出来ない市場にまで成長しています。加えて、中国内陸部はまだインフラ整備が進んでいないことから、今後、さらなる需要の拡大が見込まれており、中国市場を制することが、世界トップであることを意味することになるでしょう。
一方、建機の老舗である米キャタピラー社はどうなのでしょうか。『週刊ダイヤモンド』2012.1.14号に同社の記述(注)がありましたので引用します。以下引用文。
『連結売上高3兆5000億円の米キャタピラー社は、世界のどこでも48時間以内に部品を届けられるし、世界のどこでも修理できるサポート体制を構築している。だからこそ、設立して90年近くたつ今も"巨人"でいられる。日本法人の竹内紀行社長は、「数十年前から、1つの図面と同じ部品を使って、三つの工場で同じ製品を造ることができる」と日本勢にない優位性を強調する』
つまり、競争に打ち勝つためには、サポート体制の充実が大切であるということです。アフターケアなどサービス分野で拡充を進めることで、製品そのものの付加価値を高めるという戦略で、これは、米IBMが行った「サービスカンパニー」への脱却に近いものではないでしょうか。製品そのもののに競争力・技術力があってこそいえることなのですが、凋落する家電メーカーの後を追わぬよう、日本の建設機械メーカーも過度なハード依存・神話から脱却する必要があると思います。
(注)記事の題目は『日本発の世界製品で市場を席巻、建機業界が担う次世代付加価値』。

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