2012年2月17日金曜日

コールオプションの売買高急増

大学時代、授業の課題でオプションの理論価格に関するレジメをまとめ、発表するという機会がありました。オプションの理論価格(プレミアム)を算出する公式で、有名なのはブラックショールズモデルです。しかし、私が発表したのは、このモデルを使用しない方法を用いてオプションのプレミアムを算出するものでした。その授業で使用された文献は、私の記憶違いがなければ、野口悠紀夫、藤井眞理子共著『金融工学-ポートフォリオ選択と派生資産の経済分析』(ダイヤモンド社、2000年)だったと思います。結果は、散々たるもので、2週間もかけて勉強し、30ページくらいのカラー刷りのプレゼンを準備したものの、内容を間違って理解し、人前でとんでもない恥をかくという結末でした。今でも、時々、金融工学の書籍を購入していますが、やはり私にとってはハードルが高い分野だと感じています。
2012年2月16日付日本経済新聞朝刊にオプション市場の近況に関する記事が掲載されていました。『「買う権利」売買高急増、日経平均オプション、日本株の先高観映す』という題目の記事で、日経平均の急上昇を受けて、日経平均オプションのコール(買う権利)の売買高が急増しているという内容です。先日、日銀によるさらなる金融緩和の決定が発表されました。この影響もあり、これは日経平均に対するヘッジが遅れていることに対応しているもので、特にコールオプションの売りを建てていた外国人投資家が、逆に買いを建てていることで売買高が増加しているとのことです。
コールオプションの買い建て、売り建てと言われてもよくわかりませんね。簡単ではありますが、図を用いて説明しましょう。下図は、コールオプションを買った場合と売った場合の損益を表しています。

まず、コールオプション買いです。コールオプション買いとは、ある行使価格にて日経平均を買う権利を購入することを意味します。その代わりに、権利に対する手数料、つまりプレミアムを、コールオプションを売ってくれた人に支払わなければなりません。結果、コールオプションの購入者は、日経平均が(行使価格+プレミアム)以上となった場合に上限のない利益を得ることになります。逆に、コールオプションの売りとは、コールオプションの購入者からプレミアム分の手数料を得る代わりに、コールオプションが行使された場合、その購入者に対して、(日経平均−行使価格)分の支払いが発生することを意味します。結果、コールオプションを売却した者は、日経平均が(行使価格+プレミアム)以上になった場合、上限のない損失が被ることになります。
実際に、2012年2月に入ってからのコールオプションの3月限月の行使価格別の終値(プレミアム)、売買高、建玉の推移をみてみます。右表は、それを示したものです。日経平均が9,000円を上回った2月8日以降、プレミアムが上昇するとともに、売買高、建玉が顕著に増加していることが読み取ることができます。特に、日経平均が208円27銭の大幅な上昇したを記録した日のプレミアムの上昇、売買高及び建玉の増加は目を見張るところがあります。
オプション価格には、株式の分析をする上で、重要な要素を包含しているという論文を読んだことがあります。長期間にわたり、詳しく分析すれば、市場参加者のポジションなどのデータがより正確に把握できるかもしれません。オプションは投機的なイメージが強いという反面、実需で購入している市場参加者にとってもリスクヘッジをする有力な手段となっているのが現実です。今の経済活動では、オプション等デリバティブの市場は必要不可欠な存在にまで成長しています。そして、その規模は、オプションでの価格が、逆に現物の株式市場を動かすまでになっています。

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