
右図は23年3月末時点の普通国債残高の残存期間別の内訳を示しています。本来は、時系列のデータを提示できればよかったのですが、現時点でデータがしか入手できませんでした。図からは1年以下、つまり今年度中に償還された、もしくは償還される予定の国債が120兆円近くにものぼることがことがわかります。これに、23年度の新発の建設国債(8兆4千億円)や赤字国債(35兆9千億)、復興債(11兆6千億円)、財投債(16兆5千億円)を加えて、借り換えられず償還された国債残高を差し引くと、23年度の新規国債発行残高181兆5千億円という数字が算出されることになります。家計の金融資産残高の約1,500兆円(内閣府発表)の約12%にも及ぶ国債が毎年発行されていることになります。いったん資金ショートすれば大変なことになる水準だと考えられます。
2012年2月10日付日本経済新聞朝刊に『消える「金利低下ボーナス」』という見出しの記事がありました。20年間にわたる低金利の恩恵を受け、高いクーポンの国債から低いクーポンの国債へと順次借り換えが行われたことで財政への負担が軽減されたという事実があり、このことを国債利払い費の「ボーナス」と呼んでいるそうです。この記事の中で、長期金利が仮に2.5%まで上昇すれば、平成32年度には利払い費は23兆円を超え、22年度の7.9兆円を大幅に上回ることが予測されています(ニッセイ基礎研究所調査)。上図は、普通国債の利率加重平均を示したものです。確かに、ここ数年の利回りの推移は、財政負担軽減に結びついたようです。しかし、逆に、低い金利水準は、節操のない国債発行の誘因ともなっており、単純に喜べる事態ではありません。国内の金融機関等が国債投資でかなりの利益を出しているようです。つまり、国債利回りの低下は、国、日本銀行、国内金融機関のトライアングルによってなされたことであり、将来世代に大きなツケを回す結果となるでしょう。
(注1)ヨーロピアン・オプションとは、期間のオプション行使日が当初から定まっているタイプのものを指し、逆に定まっていないものをアメリカン・オプションと呼ぶ。
(注2)カレンダー市中発行額とは、あらかじめ額を定めた入札により定期的に発行する国債の4月から翌年3月末までの発行予定額の総額をいう。
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