証券取引等監視委員会により、AIJ投資顧問の強制調査が行われました。虚偽の運用条件を示すなどし投資一任契約を顧客と結んだ疑いが強まり、同社を金融商品取引法違反(契約に関する偽計)の疑いで調査、運用損失は累計で1,092億円に及ぶことが判明しました(2012年3月24日付日本経済新聞朝刊)。デフレが進行する中で、高い予定利率をこれ以上維持することは困難であり、厚生年金基金の財務状況の一層厳しくなることが予想されます。このことは、積み立て不足を補てんする義務がある企業経営にも少なからず影響を与えることから、早急な予定利率の引き下げなどの対応が求めらます。
右図は、厚生年金基金の掛け金総額と給付総額の推移を示しています。団塊世代の年金受給が本格的に始まっており、現役世代の絶対数が少なくなっている上、所得水準も減少傾向にある中で、2009年から2年連続で、給付総額が掛け金総額を上回っています。これは積立金の取り崩しを意味しており、加えて長期化する運用実績の低迷が続いていることから、2011年以降も、この逆転現象は続くことが予想されます。因みに、同じ資料によると平均標準給与は、2007年の332,010円から2010年の320,752円と減少しています。
基金の財務状況の悪化につけ込んだのがAIJの問題であり、デフレが続いている中でも確定給付を続けており、年金の実質的な手取金額の増加を放置していることに根本的な問題があると思います。もっとも、以前ブログでも書いたことですが、年金の給付額の引き下げは極めて困難な作業です。従って、年金受給者への課税強化、そして消費税率の引き上げなどが適切な方法であり、新たに徴税された税金でもって年金の国庫負担分を引き上げることが妥当な選択であるといえます。
ここで、税金の注入先は、企業年金基金ではなく、あくまで基礎年金です。なぜなら、厚生年金基金の受給者数は284万人に過ぎず、年金全体の受給者からいって恵まれた経済環境にあります。しかし、企業年金という一部の人々の権利を満たすため、企業業績の悪化する事態は避けるべきです。結果として企業業績の低迷を通じて、わが国の年金全体の財政状況に影響する恐れがあるからです。年金制度を語るにあたって、企業年金基金の問題は放置できないとろこです。やはり本命は、給付額の引き下げです。
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