しかし、上記の視点で株式投資をした結果、私のポートフォリオにかなりの歪みがあることが判明しました。つまり、消費者サイドに近い企業が、必然的に多くなってしまうことです。日本企業の中でも、強力な競争力を依然として維持しているのは、ソニーやパナソニックなど川下の企業でなく、素材や部品を供給する、消費者の視点ではなかなかみることのできない川上の企業なのです。例えば、信越化学、東レなどは得意分野において世界シェアで他社を圧倒しており、今後も成長が期待できる一方、国内依存の会社などは、内需の縮小に伴い、成長余力が乏しいと考えられます。
そして、2012年4月26日付山陽新聞朝刊に私のポートフォリオの歪みをさらに痛感させる記事が掲載されていました。それは、米国において6年ぶりにBSE(牛海綿状脳症)の感染牛が確認されたことです。過去のブログでも何度か書きましたが、私は吉野家ホールディングスの株主です。半期ごとに送付される3,000円分の優待券が楽しみしていることは当然として、会社に出勤する前に朝食として牛丼を週に一度ほど食しています。牛肉を米国からの輸入に全量依存している同社にとって、これはマイナス要因となり、私の株式ポートフォリオは、さらにリスクを抱えることを意味しています。記事のタイトルは『米でBSE感染牛、TPPへの障害懸念』です。以下引用文。
『米国で24日、牛海綿状脳症(BSE)の感染牛が6年ぶりに確認された。過去の感染で牛肉輸入に大きな影響を受けただけに、米政府は安全性の確保を強調。日本政府も環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に向けた米国との事前協議で新たな障害の浮上を懸念する。互いの国内事情を背景に両政府は問題の火消しに走った。右図、同記事に掲載されていたBSEの発生数の推移を示したものです。劇的に減少している一方で、全頭検査していない米国で、今回発見されたのは気になるとろこです。日本の場合には、コストがかかるものの、全頭検査しており、BSEに関しては安全性は確保されているといえます。一方、米国では、広大な食肉の肥育工場で、全ての報告が適切に行われているかは、工場の経営者でなければわからないところはあります。BSEの問題は、感染牛を食して、それが発症するのに10年単位の年月を要することです。これが、この問題を深刻化させている要因でもあります。
「米国内の食肉流通や人の健康には何の危険もない」。BSE感染牛の確認を受け、ビルサック米農務省長官は米テレビ局をはしごし、米国産牛肉は安全だと繰り返した。食肉業界も素早く動く。米国食肉輸出連合会のセング会長は、日本をはじめ世界の輸出先に連絡し、「感染牛の発見は検査システムが機能している証拠だ」と訴えた』
そもそもは、BSEは牛の感染病ではありませんでした。羊特有の感染病であり、これが牛にまで広がった原因は、英国にあります。それは、羊の残った部分に中らかの加工をほどこしたものを牛の飼料として利用したためです。経済的には合理的であったこの行為は、世界の人々に食の安全性確保という最重要な課題を無視する結果となったのです。このような経済的合理性は、市場経済が支配する現代社会では随所で行われています。食の安全もさることながら、この原料がどのような過程を経て、目の前にあるのかは常に考える必要があります。例えば、チョコレートです。今では、バレンタインデイにはチョコレート(義理チョコを含めて)を女性からもらうというのが当たり前になっています。もっとも、アフリカなどの途上国にて、児童労働を通じてチョコレートの原料であるカカオが生産されているのも事実です(全てのカカオがそうであるとはいえませんが)。
我々の生活は、どっぷりと市場経済につかっています。しかし、常に、我々は、消費する商品がどのような過程を通じて生産されたことを考えた上で消費するべきです。つまり、良識的な消費行動です。この消費行動を身につけていたのならば、上述したBSEの問題も回避できたのではないでしょうか。
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