こうした中で、2年に1回の医療用医薬品の公定価格の引き下げが4月1日に行われました。医療用医薬品の公定価格とは、いわゆる薬価のことであり、厚生労働省が市場調査に基づき、製品ごとに定めるもので、医療費削減を目的に、改定ごとに引き下げられています。2012年4月8日付読売新聞朝刊に、薬価引き下げに関する記事(注)が掲載されていましたので引用します。以下引用文。
『厚生労働省が2年に1度実施する「薬価」の改定が1日に行われ、薬価は平均6%引き下げられた。新薬開発を促すため、独創的な新薬については特許期間中の価格を維持する制度が前回改定から導入されており、有力な新薬を持っているかどうかが製薬会社の明暗を分ける事態となった』この記事は製薬会社ごとの明暗を具体的に記述しています。日本勢では、エーザイの薬価の引き下げ幅が、平均の6%を大きく上回る11%にも達した一方で、新薬の開発に成功したアステラス製薬が、高コレステロール薬「リピトール」が11.3%引き下げられたにもかかわらず、全体では6%強の引き下げにとどまったそうです。また、新薬の開発には数百億円の資金と10年以上の期間が必要であり、資金力に余裕のある外資に有利であるとしています。事実、価格維持がされた認められた製薬会社別の品目数のランキングでは、上位10社のうち8社を外資が占めています。外資系の製薬会社は世界的に展開している企業が多く、資金力・開発力の差が結果にあらわれており、薬価維持の対象となる品目をいかに確保するかが、わが国の製薬会社の今後の課題であるといえます。
『明暗を分けた要因の一つは、前回改定から試験導入された「新薬創出・適用外解消等促進加算」制度だ。厚労省によると、薬価が定められた1万5000品目のうち、今回542品目の価格が維持された。これらの競争力が高い薬があれば、薬価引き下げの影響を最小限に抑えられる』
右表は、製薬会社別の品目数のランキングを表したものです。知らなかったのですが中外製薬は外資系だそうです。日本勢で10位以内にランキングしているのは、7位のアステラス製薬と10位の第一三共だけです。外資系の製薬会社の強さが思い知らされる結果です。ランキング外では、大日本住友製薬(品目数19)が12位、塩野義製薬(同15)が13位、田辺三菱製薬(同14)が16位、武田薬品工業(同6)が31位、そして引用文にあるエーザイ(同5)で34位と散々たる状況です。今後、高齢化が進む中で、医薬品に対する需要の増加は確実です。この分野での競争力獲得は必須であり、外資系企業に市場がコントロールされた場合、比較的健全性を維持していると思われる日本の医療制度が崩壊する恐れもあります。TPPの問題で、医療分野において米国は日本に対してかなりの要求をしているようです。ニュージーランドも抵抗しているようですし、自由貿易もいいのですが、医療という自国民の福祉の根本は守られる必要があります。
(注)記事の題目は『薬価引き下げ、日本勢苦境、独創的新薬命運かける。外資、資金力で開発推進』。
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