私は、昨年の7月に薄型テレビを購入、その後11月になってからブルーレイレコーダーとブルーレイの再生専用機を手に入れました。因に、3機種ともソニー製品で、全てがネットに接続されているのが特徴です。結果、知らぬ間に、ファームウェアがバージョンアップされ、色々な機能がどしどしと付加されており、テレビライフが徐々にですが、充実化している日々を送っています。過去のブログでも何度が紹介したことのある映画や海外ドラマのストリーミングサービスである"Hulu"(フールー)も付け加えられた機能の一つです。最近のアップグレードですと、ブルーレイレコーダーにUSBで接続されたハードディスクに保存されている映像コンテンツを直接、ブルーレイディスクにダビングできる機能が付き、とっても便利になったという印象です。
私がテレビ三昧の生活をはまっている中で、最近まで知らなかったのですが、DTCP-IPという、聞き慣れぬ技術があります。今回、私が購入したブルーレイレコーダーと薄型テレビが、何とこのDTCP-IPに対応していることを今まで知りませんでした。ところで、DTCP-IPとは何かということです。DTCP-IPとは、Digital Transmission Content Protection Over Internet Protocolの略で、家庭でネット接続されている機器間で著作権で保護されたコンテンツをやり取りする際にコンテンツを暗号化する技術のことです。パケットを暗号化することによって、盗聴等により不正コピーの防止を目的とした技術であり、今後、このDTCP-IPに対応したデバイスがどんどんと発売されるようです。
早速にDTCP-IPを試してみました。ブルーレイレコーダーをDTCP-IPのサーバーとして、薄型テレビをクライアントとして接続、HDMI端子に接続していない状態で、ブルーレイレコーダー内の映像コンテンツをテレビの画面に映し出すことに成功しました。素晴らしいの一言です。そして、驚いたのは、ソニータブレットが今春からDTCP-IPに対応、Wi-Fiを通じて、ブルーレイレコーダーのハードディスク内に保存された映画やドラマを視聴することができるようになるそうです。
ここで、経済に話を戻します。国内でブルーレイレコーダーを販売しているのは、私が知っている限りでは、ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、三菱電機の5社があり、この他にも輸入品もあることから、多数の企業が参入、かなり厳しい競争が繰り広げられています。それらの企業の中でも、これ以上の負担はできないと考えているところもあり、日立がテレビ事業から撤退したように、何社かは事業から徹底という事態になりかねないというのが実情でしょう。ソニー製品でAV環境を統一している私にとって、ソニーが撤退すれば、元も子もないというのは事実であり、それは是が非でも回避したいところです。もっとも、ソニーが生き残るのならば、ソニー以外の4社が徹底すればいいのではないかという考えも出てきます。しかし、私の本音は違います。上記の5社がそれぞれ生き残り、競争状態が持続することが望ましていと考えているのです。それは、競争状態が持続すれば、シェアを伸ばそうと各社が新しいアイデアを機器に取り込むことが期待されるからです。つまり、これは競争激化による消費者余剰の拡大を意味しているのです。競争が余りに厳しいことは、企業の利益を圧迫するという指摘もあり、マイナスの面があるものの、消費者である私にとって、消費者余剰の拡大は望ましい状態であるといえます。
ここで、消費者余剰とは何かという疑問が生じます。それでは、これを図示してみます。右図は、供給曲線、需要曲線を示しています。右上がりの曲線が供給曲線、右下がりの曲線が需要曲線で、供給曲線と需要曲線が交わっている価格Pで、供給と需要が合致していることを意味しています。ここで消費者余剰とは、黄色で示した部分です。そして、ブルーレイレコーダーの市場で生じているのは、競争により本来の均衡価格Pよりも低い価格P1にまで価格が低下(価格の低下を意味するものは、価格が一定でも、新しい機能を織り込むことで実質的な価格が低下することも含める)、供給量が一定とすれば、灰色の部分だけ消費者余剰が拡大していることです。この価格は、供給曲線を下回る水準であることから、長続きしないともいえますが、ブルーレイレコーダーはAV機器関連の中心的な存在であり、戦略部門です。赤字が出ても、企業サイドの思惑として、簡単には撤退することはできず、製品の供給を続けることが十分に考えられます。
確かに、過度な競争は、結果として参入する企業を減らすことになります。しかし、日本でのガラパゴス携帯でいえるように過度な競争があったからこそ、海外の企業がその響を受け、アップルのiPhoneが生まれたということは否定できないでしょう。ブルーレイでの競争も同じことがいえます。日本企業はビジネス的には失敗を犯していることは否めないのは事実です。もっとも、その競争がもたらしたともいえるスピルオーバーによる世界経済へのプラスの影響は計り知れないというのも事実です。日本企業がなかったら、今のアップルも、サムスンもなかったのです。ビジネスモデルの失敗ばかり指摘されるケースが多々ある昨今、私は、むしろ日本企業の健闘に世界の人々はもっとエールを送ってもいいのではないかと考えています。
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