2012年4月6日金曜日

変化の激しい繊維メーカー

戦後まもなく、日本経済は繊維業を中心に復興、米国の同業界を追いつめまで至った。そして、長期間にわたる日米繊維交渉の結果、日本が繊維製品の輸出自主規制に同意、その代償として沖縄返還へと結びついたといわれている。もっとも、衣料用繊維は、ここ30年は中国製品などの安価な輸入品に押され、現在では衣料品の9割以上に輸入された衣料用繊維が使われている。この間、繊維業界は苦しい立場に追い込まれたものの、カネボウのように事実上消滅した企業もあるが、研究開発を進めることで業態を劇的に変化させ、一部の企業には炭素繊維や高機能フィルムなどの分野で世界のリーディングカンパニーとなっているものもある。特に、躍進が目立つのが、化学繊維を創業製品として、化学メーカーへと脱皮した東レ、帝人、三菱レイヨン(三菱ケミカルHDの子会社)、旭化成、クラレです。
 2012年4月1日の朝日新聞朝刊に繊維業界の現在を簡潔にまとめた記事(注)が掲載されていましたので引用します。以下、記事の一部引用。
『(繊維各社の)開発力は産業用でも発揮されている。
 鉄と比べて重さが4分の1、強さは10倍という炭素繊維は日本を代表する素材。開発で先行した欧米メーカーは1990年代までに採算が取れないと撤退や事業縮小したが、日本勢は生産開始から約40年かけて用途開発を温めてきた。ボーイングやエアバスが採用した航空機が昨年デビューし、自動車メーカーとも共同開発が進む。東レ、帝人、三菱レイヨンの3社の世界シェアは7割だ』
 『クラレは昨年10月、国内の工場で約130億円を投じ、「光学用ポバールフィルム」の増産を発表した。液晶テレビの偏光板のもととなるフィルムで、世界シェア8割を握る稼ぎ頭だ。液晶テレビの価格が大幅に下落するなか、高機能を背景に価格を維持している』
 『化学繊維は石油を原料に化学的に合成してつくる。70年代の石油ショックを機に、化学繊維を作る技術をもとに新規事業を相次ぎ立ち上げた。旭化成、東レ、帝人、クラレ、東洋紡、ユニチカなど化学繊維大手の大半で、創業製品の繊維より樹脂や化成品など繊維以外の事業が売上高の半分以上を占める。旭化成は93年、クラレは07年に証券取引所の上場業種を「繊維」から「化学」に変えた』
繊維業界は、驚くべき変化を遂げている。これ以外には、化学メーカーにシフトしていないものの、化学繊維を主たる製品としている東洋紡などでも変化がみられる。同社は医療分野に進出、血糖値測定で使われる診断薬の原材料メーカーで世界シェア1位となっている。また、化学繊維ではなく、天然繊維を創業製品とする日清紡HDでも自動車部品などへ進出、ブレーキ部品製造などで自動車の高性能化を下支えしている。
右表は、日本の大手繊維メーカーの売上高、営業利益を示したものです。化学繊維系から化学メーカーに脱皮した企業の規模が総じて大きいことがわかります。この中で注目すべきは、外国人持ち株比率です。日清紡HDを除いて、化学メーカーへと脱皮した5社の同比率が高いことです。特に、クラレなどは35.7%にも達しており、海外からの注目度合いが高いことが伺えます。まずまずの営業利益を出しており、ほぼ壊滅状態のパナソニック、ソニー、シャープなどの電気機器メーカーとの差が大きくなってます。
(注)題目は『21世紀の繊維、新素材開発で勝負、高機能、まずは国内生産』。

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