2012年3月31日土曜日

外貨準備に占める金(ゴールド)の割合

金(ゴールド)に関するブログがやや多い気がしますが、今日は日本経済新聞2012年3月22日付夕刊に面白いデータがありましたので紹介します。データは、金の国際調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル調査のもので、世界各国の金の宝飾品としての需要を示したものです。
1位は予想通りインドです。同国の需要は567トンと2位の中国の511トンとほぼ同水準であり、3位の米国115トンを大幅に上回るという結果です。一部ではあると思いますが、インドの結婚式はど派手さで世界的に有名で、表現が良くないのですが、結婚する際に新婦側が新郎側へと金を貢ぐという風習があるようです。同時に、両国の共通点として、ここのところの経済的な発展に加え、金を投資対象と考えており、インフレに対するヘッジ手段として購入する傾向があるそうです。
残念ながら日本は21トンと世界シェアの1%にとどまっています。ここ数年では高騰した金価格を背景に、一般の方々が宝飾品を業者に売却するケースが増えており、時々ニュースの話題になるくらいです。もっとも、21トンの需要がある一方で、かなりの部分が海外へと流出しているのではないかと推測されます。日本人の行動は、いつも反対ですね。通貨が不安定化している上、やっとインフレの気配が出てきている今、金を売却しているのです。
この行動にはやや疑問が残りますが、結果として投資対象として最も安定したパフォーマンスを得たのが、利子をほとんど生まない銀行預金だったのですから無理ないことです。この円高下での売却ですのから、円安がもっとも進行した時に売却した方が利益が大きいはずです。日本人は円という自国の通貨に対する信頼が他国よりも強いのでしょう。つまり、金に対する行動は、他国に例をみないインフレを20年以上も経験したことがない経済体質に起因するものかもしれません。
 しかし、国家レベルでは、悠長に考えているわけにはいかないです。日本の外貨準備高は米ドル建ての資産がほとんどを占めています。中国に次ぐ世界第2位の外貨準備高を有しているにも関わらず、公的機関が保有する金の保有残高は、米国は別格として、ドイツ、フランス、イタリアなどの国よりも少ない。最近では中国に追い抜かれてしまいました。右図は、米国を除いた主要国の公的機関が保有している金保有残高(注)を示しています。スイスは、なるほどという印象ですが、日本の保有残高がイタリアよりも少ないということは知りませんでした。「有事の時のドル」という言葉が余り言われなくなりました。しかし、「有事の時の金」はまだまだ死語にはなっていない気がします。
(注)米国は261.5百万オンスであり、他国を圧倒しています。

2012年3月30日金曜日

リスク回避な家計と合成の誤謬

 金融商品には色々なものがあります。代表的なのが銀行預金です。銀行預金は余りにも身近すぎて、金融商品の一つであるという認識で保有している人が少ない気がします。しかし、銀行預金は立派な金融商品であり、そして家計の金融資産の6割近くを占めるのが銀行預金です。日本銀行調査統計局『資金循環統計』はそのことを端的に示しています。この他、比較的安定しており、将来に対する備えという性格が強い保険・年金準備金が3割弱で、現金・預金と年金・年金準備金を合わせて、家計の金融資産の85%もの割合がリスクの小さい金融商品へと投じられていることになります。債券、投資信託、債券の割合は合計で11%であり、わが国の家計は、リスク・アバーター(risk averter、危険回避者)であるといえます。ここでリスクが小さいと表現したのは、銀行預金でも、一昨年初めてペイオフが実施されたからです。1,000万円以上の預金保有者は、預金保険機構により保護の対象であり、少なからずリスクがあるのです。
 一方で、価格変動などのリスクがある商品として代表的なのが投資信託、株式などです。投資を少しでも考えたことのある人ならば、これらの商品がまず思い浮かび上がるでしょう。一方で、日本の場合、国債など債券を持っている人の割合は、少ないような気がします。私の周りにいないだけで、本当はかなりの方々が保有しているかもしれません。上のデータからは、株式が6%、投資信託3%に対して債券が2%となっており、リスク商品を保有している人は少なからず債券を保有している可能性があります。これは意外でした。しかし、現金・預金の一部、例えば5%に当たる40兆円の資金が株式などに投じられれば、株式が活況を呈すると思います。やはり、金融資産の保有者の大半が、比較的年齢が高い層に集中しており、リスクをとってまで運用をとる必要がないことから、このような状態になっていると考えられます。
 右図は、家計が保有する金融資産の項目別の前年比伸び率を示しています。現金・預金の伸び率は、ここ10年では高くて2011年の2.1%増で、マイナスであった年も2回ほどあります。名目所得に減少傾向がある中、家計は消費支出を抑えることで、ここ数年の現金・預金の伸びを維持してきたといえます。もっとも、リスク回避を望む家計として最適と思われる、この消費・貯蓄のバランスは、決して貯蓄を一意的に増加させるわけではありません。家計が過剰に貯蓄することで、消費性向が低下、それが所得の減少へと結びつき、最終的に貯蓄の減少(又は伸び率の低下)を招くという結果をもたらします。つまり「合成の誤謬」です。お金は使って初めて価値を持ちます。日本の家計は、少しは刹那的になって消費活動に邁進するのもいいのではないかと思っています。また、上図は、もう一つの重要なことを教えてくれます。家計の金融資産が大きく増加し、逆に大きく減少した年は、金融資産全体の伸びが大きく変動していることです。つまり、株式、投資信託などのリスクが比較的高い金融資産の価格が上昇すれば、家計が保有する金融資産は確実に増加することを意味しています。もう少しリスクテイクをしてもいいのではないでしょうか。
 米国では、リーマンショック以降、一時期失業率が10%を超えるまで経済は悪化しました。期近では失業率は8.3%にまで低下、NY連銀は2013年の上半期には失業率は6%台まで低下するレポートを発表しています。米国の人々は、我々日本人と比べて楽観的なところがあるような気がします。昨年、話題となった学生ローンに苦しむ若年層の雇用問題、低所得者の問題、医療問題など米国の家計を取り巻く環境は決して楽ではありません。しかし、株価は着実に上昇しており、市場関係者にやや楽観的な見方が広がっているようです。日本もこのような流れになれば、経済は確実に回復するのです。
 また、家計が頑張った結果、増加した預金も決して適切に運用されているわけではありません。預けられた預金を運用する銀行サイドも、貸出需要がない中で、国債市場でしか投資する対象がなく、1%前後で10年物国債の利回りが推移する空前の超低金利を状況を生み出しています。結果として、家計の第2の金融資産である保険・年金準備金の運用環境を悪化させています。ここにも「合成の誤謬」があるといえるでしょう。

2012年3月29日木曜日

一票の格差

私は、一票の格差についてやや無頓着なところがありました。2012年3月1日付日本経済新聞朝刊に、野田首相、自民党党首の谷垣総裁、公明党の山口代表との3者討論で、まず「一票の格差」是正を優先すべきと表明した旨の記事が掲載された。そこで、ここのとろこ「一票の格差」に注意し、ニュース番組を観ていました。私は、一票の格差は衆議院で3倍、参議院で5倍が目安であると認識していましたが、実は、2011年3月23日付けの最高裁判決で、一票の格差が2.3倍であった2009年(平成21年)の衆議院選挙は違憲であるとされていたことを初めてニュース番組で知りました。
 この判決により、格差が3倍であったものが、2倍へと変更を強いられることとなり、国会では「0増5減」案などが提案されるとともに、国会議員の給与削減なども活発に議論されているようです。しかし、私には根本的な疑問があります。何故2倍超や3倍以上が違憲であり、2倍ならば合憲なのかさっぱりわからないことです。現時点で、決して詳しく判決文を読んでいるわけではありませんが、これらの数字の差において合理的、かつ普遍的な説明ができているのかどうか、時間があれば判決文を読んで確認してみたいところです。私に言わせば、2倍としても、3倍としても、憲法14条で定められた「法の下の平等」に反しており、違憲ではないかということです。つまり、国勢調査の結果に合わせる形で、国民ひとりひとりの一票に価値に格差が生じないという状態、つまり一票の格差は1に極力近づけなれば、よっぱどな詭弁を使わない限りは、合理的な説明はできないと考えています。
そこで、一票の格差の実態について調べてみました。右表が、総務省のホームページに掲載されていた、平成22年(2010年)の国勢調査(速報)に基づく、一票の格差を都道府県別に表したものです。縦長の表で読みにくいのですが、せっかく調べたデータですので、そのまま掲載させていただきます。この調査は、衆議院小選挙区、比例代表区に加え、参議院についても詳細に調べています。データ量が膨大になることから、衆議院の小選挙区における議員一人当たりの人口数に絞って話を進めます。調査の結果、人口が最も少ないのが高知県で254,865人であるのに対して、最も多いのが東京都の526,470人であり、その格差は2.066倍となっています。衆議院選の小選挙区に限っても、違憲状態にあるということです。これにどういう方法かわかりませんが、比例代表区の議員数を含めたものが、大体2.3倍になっているのでしょう。
私は、この2倍という数字は、「法の下の平等」という視点では全くもって違憲であると考えています。しかし、それならば、今の制度のもと、単純に1倍にすればいいのかといえば、決してそうではありません。そんなことをすれば、地方と東京都の格差がどんどんと大きくなり、東京都の一人勝ちになってしまいます。安全保障、地域経済の活性化、国土の有効利用などを考慮すれば、東京都への一極集中は望ましくありません。つまり、現行の人口比に応じて議員数を配分する衆議院、参議院という制度そのものに違和感を感じているということです。米国連邦議会の上下院のように、一方は人口比に応じてストレートに議員数を配分し、もう一方は県など行政単位に2人という一定数は配分するという、議会制度に変更した方がいいのではないかと考えているのです。
ここで、米国の選挙制度について簡単に説明した文献がありましたので、その一部を引用します。引用元は、日経文庫の『アメリカを知る』(注)です。以下引用文。
『東部の大都会から西部や南部へという人口の移動は政治的にも一定の影響を及ぼします。米国では一票の格差をなくすために、人口を調べる国勢調査に合わせて大統領選での選挙人数や下院議員の数を頻繁に調整するからです。
たとえば、1980年の大統領選の際には、南部のテキサス州の選挙人数は26でしたが、2004、08年の大統領選では34人に増えました。一方、車の町デトロイトがあるミシガン州では選挙人数が21から17に減りました』
これですと、東部の大都会が衰退し、南部や西部が潤うこととなります。しかし、米国には、下院よりも権限の大きい上院があります。人口比に左右されない米国における上院の存在こそが、今のわが国に求められる議会制度ではないでしょうか。
(出所)実哲也『アメリカを知る』pp186-187、日本経済新聞社、2009年。

2012年3月28日水曜日

VIXとは何

VIX指数とは何であろうか。これは「ボラティリティー・インデックス」の略であり、別名「恐怖指数」とも言われている。元々は、米国株、特にS&P500を対象としたボラティリティーをもとに算出された指数が、先物指数やオプションなどに取り入れられる形で注目されるようになり、2011年では、この指数に連動する先物の取引は3,000億ドルに達し、5年間で50倍に拡大したようです(注1)。ここで、ボラティリティーとは、いったい何かということが疑問が残ります。私が知っている限りでは、ボラティリティーとは分散のことです。分散とは、平均値からの乖離を2乗したものを合計した結果をデータ数で割ったものです。データをx、その平均値をx_、データ数をnとすると、分散は以下の数式にて求めることができます。
しかし、株式の分散を求める場合はどうなるでしょうか。データそのものは、変化率であることから、((今日の株価)-(前日の株価))/(前日の株価)となり、平均値を求めるにあたってはやっかいなマイナスという値が発生します。ここからは勉強不足ですので間違っていたらごめんなさい。S2を分散とし、P(n)n時点の株価、対象期間をtとすると、株価の分散を算出するに当たっては、以下の式が想定されます。
ウェブを読んでいると、マイナスが出ると平均値がよくない結果になることから、対数などを使用しているようです。それでは、VIX指数とNYダウ平均の月間変動率(注2)を比較してみます。右図は、VIX指数と私が定義したダウ平均の月間平均率の推移を示したものです。見事に一致していることがわかります。日経新聞に掲載されているグラフはやや疑問が残ります。VIXはそもそも分散が大きいことを示しているという指数です。この分散の値が小さいからといって、日経平均が上昇するという根拠へと結びつけるのはいかがかという印象が受けました。今回の話題に関しては、私の勉強不足が否めません。株式のボラティリティーに関する正確な算出方法を、専門書から取得、それを踏まえた上で、今後詳細なデータを紹介できればと思っています。とりあえず、YahooFinance(米国のサイト)のホームページでTickerの欄に"^VIX"で入力すれば、簡単にVIX指数のデータを入手することができます。30ポイントを超えれば、市場が恐怖に怯え、結果として株価は下落するそうです。現在、VIX指数はその30ポイントを大きく下回り、15ポイント前後で推移しています。株価が上昇する経済にとってプラスですので、歓迎すべき状況でしょう。
(注1)2012年3月25日付日本経済新聞朝刊『市場の心理学』。
(注2)ここでは、株式の分散の計算の方法が分からなかったため、月間変動率=((当該月の高値)-(当該月の安値))/(当該月の終値)とする。

2012年3月27日火曜日

各国のイールドカーブ

日本、米国、欧州など先進諸国のイールドカーブは、大幅な金融緩和をしていることから、単純な動きをしています。つまり、短期金利がゼロを少しばかり上回る水準でほぼ固定されている中で、その時々のデフォルトリスクの程度やインフレ懸念の程度により長期金利が上げ下げを繰り返しているのです。南欧諸国のデフォルトリスクが高まれば、米国やドイツの国債が買われ、長期金利が低下する一方で、インフレ懸念が発生すれば長期金利が上昇するというパターンを繰り返しているのが、リーマンショック以降の日・米・欧のイールドカーブといえます。
 右図は、それを示したイメージ図です。を市場の期待心理が安定している時のイールドカーブとします。ここで、南欧諸国のデフォルトリスクが高まれば、米国やドイツなどの国債が買われ、両国のイールドカーブはの状態になります。一方、過度な金融緩和により商品相場が上昇し、市場にインフレ懸念が発生すれば、イールドカーブはの状態になります。短期金利がゼロ金利に極めて近い水準で固定されているのですから、イールドカーブは、(もしくは)又は(もしくは)と狭いレンジで変化しているといえます。事実、昨年の12月から今年の1月にかけて、欧州債務危機が深刻化した結果、米国の国債が買われ、米国のイールドカーブは、の状態になりました。その後、今年の3月に入ってからは、原油価格の上昇を背景にインフレ懸念が発生し、米国のイールドカープはの状態になりました。2014年まで米国は超低金利政策を維持します。しばらくは上記のようなイールドカーブが繰り返されることが予想されます。
 面白いのがオーストラリアのイールドカーブです。オーストラリアの政策金利は、先進国の先行指標であるといわれます。しかし、リーマンショック以降は、そのような状態になっていないようです。資源価格や豪ドルの上げ下げに応じて、短期金利が変動し、その影響を受け、長期金利が変動することで、同国ではより複雑な動きをするイールドカーブが形成しています。
 右図は、ここ半年くらいのオーストラリアのイールドカーブの変動をイメージしたものです。まず、同国のイールドカーブがもともとの状態にあったとします。ここで、景気失速懸念を背景に、政策金利が引き下げられたとします。その結果、長期金利が下がらない中で、短期金利だけが低下することになり、イールドカーブはややステープなの状態になります。ここで、長期金利が低下しない理由としては、同国の潜在成長率が他国と比べてそもそも高いこと、経常収支の赤字国で、もともとインフレ傾向にあり、実質金利は十分低いことなどの要因が挙げられます。もっとも、資源高を背景に、インフレが発生した場合、長期金利が上昇する一方で、長期金利高に起因する自国通貨高を回避するため、政策金利の引き下げが行われることになります。オーストラリアの政策金利はピークから2度引き下げられています。この結果、イールドカーブはよりスティープなの状態になっているのです。
 このイールドカーブが事実なのかデータで裏付ける必要があります。まず、短期金利です。豪ドル建てのMMFの利回りは、昨年末の4%強の水準から期近では3.8%程度まで低下しています。次に長期金利です。私はたまたま某証券会社が提供する欧州復興開発銀行の豪ドル建ての割引債のデータをメモっていました。残存期間は16年で、2011年12月7日時点の利回りは5.83%、額面100豪ドルに対して価格は39.47豪ドルでした。同じ債券が、2012年3月26日時点では利回りが6.21%に上昇し、価格は37.88豪ドルまで下落しています。この間、欧州復興開発銀行の格付けはトリプルAで変化なく、残存期間は短くなっているにもかかわらず利回りは逆に上昇しているのです。つまり、短期金利が低下する一方で、一時的かもしれませんが、逆に長期金利が上昇するという事態が発生しているのです。
 オーストラリアの金利の動きを追っていると勉強になります。インフレや自国通貨の変動に応じた機動的な政策金利の上げ下げは、かつては欧米諸国や日本にもあったことです。しかし、金融危機を背景に、ほとんどの先進諸国が金融部門で動脈硬化(注)を起こしています。危機が解決し、金融市場が正常に機能し始めれば、もとの姿へと戻るでしょう。やはり、日本の金利水準は特殊ですね。20年以上も事実上ゼロ金利政策が維持されている国などほかにないです。
(注)金融は経済の血管とも血液とも例えられます。そうした例えから動脈硬化という言葉を使用しました。

2012年3月26日月曜日

日本の森林資源

私は、登山やちょっとした山の中をトレッキングする趣味があります。毎年、鳥取県にある大山(だいせん)には4〜5回程度、特に11月、12月頃、すこしばかり雪が積もった時期を選んで登山をしています。また、岡山県の県北にある岡山県立森林公園は、多い年では10回程度行き、10km以上もある公園の外周を一周し、いい汗をかいています。山中を歩いて、四季折々の季節感を満喫できる上、生活の拠点から車で少し行ったところに豊かな自然があるのだなぁ、とつくづくと感じる次第です。落ち葉を踏みしめると、擦れ合う心地よい音が、周囲に鳴り響き、幸せを感じる一瞬です。
そこで、今日は、日本の自然、特に森林資源について書かせていただきます。私が日本の森林資源を考えるに当たってすぐ頭に浮かぶデータは、国土の面積が37万k㎡で、そのうち60%以上もの割合が森林に覆われていることです。他国と比べて、豊かであるという印象を持っています。
しかし、日本だけで感じることを述べるのではだめですので、各国との比較でどうなのかを表してみます。データから日本の国土の6割以上が森林によって占められていることが確かめられました。右表は、私が独断で選んだ主要国での森林資源を示しています。6割を超えているのは、ブラジル、韓国、コンゴ民主共和国などがあります。もっとも、これをもって日本の国土は、森林資産に恵まれていると語っていいのでしょうか。ここで、一人当たりの森林面積を算出してみました。単位が大きくてやや理解しにくい数値ですが、わが国の一人当たりの森林面積は、0.19haと決して大きくないことが表からも読み取ることができます。イギリス、ドイツなどの先進国と比べて見劣りはないものの、広大な国土を有しているロシア、アメリカ、カナダから比べてかなり低い水準にとどまっていることがわかります。
この表で意外だと思ったのは、最も乾燥した大陸と称されるオーストラリアの森林面積が広く、国土に占める割合が2割弱と結構高いということです。オーストラリアは、鉱物資源などに恵まれ、牧草地が広がっているというイメージでしたが、森林資源にも恵まれていることが分かりました。
わが国の森林資源は人口比で考えた場合、決して豊かではないということがわかりました。しかし、国土が狭いことが幸いしており、他国とは比べて、森林資源の利用に際しては、輸送コスト及び輸送に伴う膨大なエネルギー消費は小さいものと考えられます。もっとも、急峻な地形に隙間なく植えられている杉や檜などの針葉樹林を適切に管理するには、人材不足は否めない状態になっているのがわが国の現状です。
ここで提案があります。それは、針葉樹林から広葉樹林への転換です。利便性が高く、管理可能な地域には引き続き針葉樹林を維持する一方で、人材確保が困難な地域には、広葉樹林へと植え替えていくということです。広葉樹林への植え替えには、様々なメリットがあります。例えば、治水能力が針葉樹林より高いこと、漁場を豊かにすることなどがあります。この植え替え作業に、恩恵を受けるであろう都市生活者から税金を徴収、国や地方自治体を通じて作業従事者に資金援助するということも可能ではないでしょうか。
昨年、紀伊半島を襲った集中豪雨には驚きました。林業がまだ衰退していないと思われる同地域でも、近年の気候変動には耐えられなくなってきています。人口比では決して豊かとはいえない貴重な資源を有効に活用する手段の一つとして、針葉樹林の広葉樹林への植え替えがあると私は思っています。

2012年3月25日日曜日

オーストラリア経済の近況

オーストラリアといって、今すぐに思い出すのが映画「オーストラリア」です。この映画は、いつまでも魅力的なニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマンというオーストラリアをルーツとする俳優が主演を演じる大河ドラマです。この中で、オーストラリア本土を爆撃したというシーンがあり、第二次世界大戦中に日本が行った行為が同国に与えた影響がいかに大きかったかを知らしめるものでした。戦後、わが国が、奇跡の復活を遂げるとともに、平和国家を築き上げ、世界の中でも一切の戦争行為をしていない数少ないの国の一つであることに誇りを持っています。そして、経済的な相互依存の関係が一層強化され、オーストラリアとの友好関係がより深いものとなることを切に希望します。
 ここからは、経済に話を戻します。オーストラリアの経済といえば、鉄鉱石、石炭、ウランなど鉱物資源に恵まれるとともに、広い国土を利用した牧畜、農業など産業が活発であり、資源国であるという印象が強い。もっとも、資源国であることで輸出が輸入を超過、貿易黒字の国ではないかと最近まで思っていました。しかし、実際は異なり、工業製品をもっぱら輸入に頼っていることから慢性的に経常収支は赤字となっています。一方で、財政は黒字であるという認識でしたが、2009年以降赤字を続けています。
 オーストラリア政府は、膨大な財政赤字に対して懸念を抱き、財政赤字解消に向けた税制改革案を浮上しているようです。2012年3月20日付日本経済新聞朝刊にオーストラリア政府による税制改革に関する記事(注)が掲載されていました。大まかな内容は、今回実施する税制改革は、外国企業を標的にしたものとされ、駐在員への住宅費や食費の補助金を非課税の対象から外すとするもので、影響を受ける駐在員は7万7千人にも上るとされています。豪ドルが、金利高に引っ張られた形で高止まり傾向がある中で、これは外国企業の負担増を意味しており、技能労働者の不足がさらに深刻化する懸念が出ているそうです。
 上図は、2001年の同国の財政・経常収支の推移を示したものです。図から経常収支の赤字はやや縮小傾向にありますが、財政赤字は深刻化していることがわかります。もっとも、名目GDPに対する財政赤字の比率は4%程度と日本、米国、欧州各国と比べて低い水準にとどまっています。しかし、経常収支が恒常的に赤字であることとから、常に海外からの赤字ファイナンスを必要としています。結果として、同国にはインフレ傾向があり、11年の消費者物価指数は3.4%と高止まりしていることからも、期近の原油高などを背景に難しい政策運営が求められます。
因に、同国は政策金利はここのところ2度引き下げられています。右図はそれを示したものです。これを反映して、豪ドル建てのMMFの利回りも4%台前半から3%台後半へと低下しています。同国準備銀行は、通貨高による輸出企業の減収を回避しつつ、資源高による国内インフレ率の上昇という、2つの相容れない問題に対処する必要があり、他の先進国にない機動的な政策金利の上げ下げをしている姿があります。同国の政策金利は、世界経済の先行指数とも言われます。昨今の原油、穀物など資源高を背景に、2009年の3%までの引き下げはないと思っています。
(注)記事の題目は、『豪税制改革、外資が標的』。