2012年7月14日土曜日

教育費負担の各国比較、運用難の日本で可能か

昨年、米国では、ニューヨークなどの大都市で教育ローン返済と就職難で苦しんでいる若者が、格差是正を訴える抗議デモを繰り広げるシーンがニュース番組で度々報道され、米国の教育ローンの厳しさを痛感しました。なかには1千万円を超えるローンを抱えた上、就職もできない状況に陥っている若者がインタビューに応じている姿が映し出されました。今、米国人のうち6人に1人が貧困層に該当する2万ドル以下の所得水準となっているとされています。一方で、米国の富の6割を保有する、上位5%の富裕層への課税問題がクローズアップされており、今秋の米大統領選でも争点となっています。私は、富裕層への課税がベストであり、この点においてオバマ大統領を支持しますが、巨額の財政支出により特定の企業へ公的資金を注入し、無節操に財政支出を拡大させた点には問題があります。しかし、米国の財政赤字は、そもそも富裕層への課税強化が実現されれば解決できるともいわれており、減税を訴える共和党の大統領はやや難ありという考えでいます。
 わが国では、昨今、育英制度の滞納問題がクローズアップされているものの、教育ローンで苦しんでいる若者が多くいるという話は余り聞いたことはありません(たまたま私の周囲にいないだけかもしれませんが)。米国とは異なり、日本では、大学の費用は親が出し、ローンを組ませてるなどして子供に負担を求めるという慣習は余りないようです。しかし、今後、所得の増加が望めない、現在の20代、30代の人々が子供を育て、大学の教育費の負担をする時代になれば、今の米国と同様のことが発生するのではないかと思っています。実際のところ、今でも高等教育の費用負担は着実に増加しており、私の周囲にも、子供の教育費に苦心している人々が多く、公的負担の拡充が求めれるとろこです。
 右図は、参照する場合、注意を要する総務省統計局の『家計調査』の教育費、食料品、交通・通信費、保健医療の項目別支出の推移示したものです。このグラフをみる限りでは、教育費負担は極端に大きくなく、むしろ食料品、交通・通信費が突出していることが分かります。しかし、これは全国の勤労者世帯のサンプルデータを平均したものであるため、教育費の負担が過小評価されるという結果となっています。大学に通っている子供のいる世帯と、そうでない世帯での統計を抽出し、それを比較する必要があると思いました。
 こうした中で、教育費の積み立てで優遇するという施策が打ち出されたようです。2012年7月8日付日本経済新聞朝刊に、日本の大学教育の家計負担に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『教育費積み立て優遇、利子や運用益、非課税に』です。以下記事引用。
 『政府は教育資金を積み立てる際に税制で優遇する検討に入った。積立期間中の利子や運用で得た利益を非課税にする案が有力だ。大学の進学などに備えた資産形成を促し、家計の負担を軽くする。祖父母の資金を若い世代に移転し、有効活用するよう促す狙いもある。今年度中に具体的な制度設計を検討し、早ければ2013年度の導入を目指す。(中略) 孫や子どもを受取人に指定した口座に対して、教育資金の積み立て目的である場合に限り、利子や運用益に対する課税を免除する。資金を引き出す際に、教育目的であることを証明する書類の提示などを求める案がある。親族が口座に拠出する際の所得控除など、資金を移転させやすくする方策も検討している』
 この施策の中心は、充実した年金給付を得ている現在の65歳以上の人々からの所得移転を促すことです。一方で、現在の運用環境を考慮した場合、運用益や利子所得への非課税は全く意味をなさないことです。10年物の国債の利回りが0.8%台であり、株価も戻る気配が全くない、現在のわが国では、資産運用による利益を全く出すことができないのが実情です。従って、資産を持っている高齢者から、そうでない現役世代への所得移転は急務となっており、これを教育に絡ませることで大義名分を得ることとなります。
 右図は、上記記事に掲載されていたグラフをそのまま転載したものです。わが国では家計の負担が50%を上回っており、米国、カナダ、イタリアと比べて大きいことに特徴があります。一方で、カナダ、イタリアは公的負担が大きいのに対して、日本と米国は低いものの、ほぼ同水準となっていることに目を引きます。米国のデータで注目されるのは、「その他」の部分に大きさです。これこそが教育ローンではないかと考えているとろこです。教育制度の拡充は将来の成長につながります。大幅な人口減少が確実となっている現在、若者一人一人の能力アップが、国の成長へと結びつくともいえます。
 教育資金の資産運用では、米国では529プラン、英国ではジュニアISAなどの制度があるそうです。これが成り立つ背景には、まともに機能している国債や株式の資産市場があります。私の資産運用も含め、20年以上も続く、超低金利政策の解除がない限りは運用環境がままならないのが実情です。年金基金も運用難に喘いでいる中で、バブル経済への対応に失敗した政府や日本銀行の政策当局者、そして銀行関係者は、今でも非難される立場にあるといえます。

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