2012年7月5日木曜日

「影の銀行」、米MMFへの規制

わが国でも、MMFといえば、安全性の高い投資信託としてメジャーな地位を確立しています。しかし、投資信託であることから、決して元本保証ではなく、かつて日興アセットマネジメントが提供していた日興MMFが、米エンロン社の破綻に伴い元本割れとなったことは余りに知られている事実です。また、銀行が提供する普通預金とは異なり、預けてから1カ月以内に解約した場合、1万円につき10円のペナルティーがとれることから、私は、より流動性及び安全性が高いMRFの方にウエイトを置き、証券投資の際の待機資金としています。
 このMMFが、米国でにわかに注目されています。それは、米ドル建てのそのもの資金を提供する米国のMMFは、米ドルを手に入れたいと考えている欧州の銀行からの流動性供給において重要な存在となっているからです。もっとも、リーマン・ショック後に残高が大幅に減少するなどしており、運用資金の安定性を促すことが急務となっています。上図は、FRB提供の米国の資金循環表から参照したMMFの運用先別の残高の推移を示しています。リーマン・ショックが起こった2008年にピークの3兆7,573億ドルを記録した後、2009年には3兆2,583億ドル、2010年には2兆7,553億ドルへと急減、期近の2012年第1四半期にはピーク時の7割弱の2兆5,354億ドルにまで減少しています。グラフから、総額の減少は、MMFの運用先として、Credit market instruments(信用市場)の残高が大きく減少していることが読み取れます。この信用市場の内訳には、コーマーシャル・ペーパー、財務省証券、政府関係機関債、地方債、社債等があり、特にコーマーシャル・ペーパーや社債等の残高の減少幅が大きく、民間企業や銀行等が安定した米ドルの流動資金を得るには困難な状態が続いています。
 こうした中で、当局内には慎重論もあるそうですが、米国でのMMF規制の議論がヤマ場となっています。2012年7月1日付日本経済新聞夕刊に米MMFに関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『巨額資金環流のMMF、米、規制議論ヤマ場、金融不安の再発防止』です。以下引用文。
 『【ワシントン=矢吹俊樹】巨額の資金が還流し金融システムに大きな影響力を及ぼす「影の銀行」を巡り、米の規制強化論議がヤマ場を迎えている。米当局は預金に近い商品であるMMF(マネー・マーケット・ファンド)の運用会社に対する規制案などを近くまとめるとみられるが、関係者の間で意見は割れている。 米では「影の銀行」の一つである公社債型のMMFは元本の安全性が比較的高く、銀行預金に近い性格を持つ。潤沢な運用資金を元手に銀行などへの短期資金の有力な貸し手になってきた。現在も残高は2.5兆ドル規模に上るとされる。 ところが2008年秋のリーマン・ショック時には解約が殺到し2日間で資金全体の1割相当が流出するなど、金融不安を増幅する元凶にもなった。規制の緩さが裏目に出た格好で、運用資金の流れを安定させるために米証券取引委員会(SEC)や米連邦準備理事会(FRB)は新たなルール案作りを急いでいる』
 この規制には、①元本割れに備えて準備金の積み立て、②投資家の解約を一部制限、③時価評価情報などの透明性向上、④銀行のMMFからの資金調達などの一部制限のほか、レポ取引に関するものがあります。②の解約の一部制限に関してはやや難があると思いますが、銀行などが過度にMMFへと依存することは避ける必要があり、私は概ね賛成の立場をとります。実は、私自身が保有している外貨建てMMFの運用先に、欧州の金融機関発行のCPなど数多くあり、格下げが連発している欧米の金融機関の惨状を考慮すれば、実のところ気が気ではありません。私の思惑もあり、説得力にやや欠けるところもありますが、危機の連鎖を回避する上でも、日本の証券会社が提供しているMMF及び外貨建てMMFにも同様の規制が施されればと考えています。 

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