2012年7月17日火曜日

ECB、政策金利の引き下げで進むユーロ安

私は、ユーロのMMFを少しばかり持っています。実は、外国為替の相場感、各国の金利の水準などを頭に常に入れておく必要性から、米ドル、カナダドル、英ポンド、豪ドル、ニュージーランドドルのMMFも保有しています。どの通貨もほぼ均等な割合で持っていることから、マイナス幅が大きい通貨は安く、そうでない通貨は高いということが、私のMMFのポートフォリオをみれば一目で理解できるようになっています。そした中で、ユーロのMMFのマイナス幅が大きくなるばかりで、やや打撃を受けているという印象を持っています。2012年7月16日午後8時47分現在(日本時間)で、ユーロの対円相場は、1ユーロ=96円32銭です。やや持ち直しているものの、一時は96円割れという事態も十分に予想されました。
 このユーロ安の進行は、ECB(欧州中央銀行)が、政策金利を0.25%引き下げ、過去最低の0.75%となったことを受けてのものです。同日、銀行の中央銀行に対する預け金の金利も引き下げられ、ゼロとなりました。しかし、英ポンド、米国、そして日本も金融緩和を拡大させており、欧州債務危機を背景としたユーロの独歩安という感は否めないところがあります。逆の意味で、今こそがユーロの投資のベストタイミングであるともいえますが、ユーロ相場が底割れする可能性も否定できないため、大きな投資は控えた方が望ましいと判断しています。私が想定している底割れの水準とは1ユーロ=90円であり、月に2度開かれる理事会で、ECBが政策金利の引き下げを継続的に行った場合、日本円との金利差の縮小から十分にあり得ると考えています。ユーロ諸国の物価水準が分かる詳細なデータがあれば、どの程度の水準でもってユーロ相場が底なのかは分かりますが、米国とは異なり、現時点では情報が極めて少なく、決定に至るには材料が少ないのが実情です。
右図は、対円ユーロ相場とECBの政策金利を推移を示しています。日本の政策金利はゼロを続けていることから、ECBの政策金利の上げ下げとユーロの相場は見事に一致しているのが図から読み取ることができます。2012年7月6日付日本経済新聞朝刊に、このECBの利下げに関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『欧州利下げ、最低の0.75%に、銀行の預け入れ0%、景気下支え』です。以下引用文。
『欧州中央銀行(ECB)は5日、政策金利である市場調節金利を0.25%引き下げ、過去最低の0.75%とすることを決めた。後退局面に入ったユーロ圏経済を下支えする。中国人民銀行や英中銀イングランド銀行も同日、金融緩和に踏み切った。世界経済の減速感が強まるなか、財政出動の余力は乏しく、低金利政策で景気のテコ入れを狙う。
【フランクフルト=赤川省吾】ECBのドラギ総裁は5日の理事会後の記者会見で、利下げについて「景気悪化のリスクが現実になったため」と説明。欧州景気を下支えする考えを示した。「適時、果断に行動する」とも語り、追加緩和に含みを持たせた』
仕方のない決断ではあると思います。しかし、日本の経験からいって、金融政策は引き上げ時に効果があって、引き下げ時には余り効果はありません。利下げは、景気浮揚の必要条件であっても、十分条件ではないからです。銀行の預け金の金利(預金ファシリティー金利)をゼロにしたことから、むしろ銀行救済を目的とした金融緩和ともとらえることができます。もっとも、互いに信頼がない状況では、銀行はインターバンク市場で資金を融通しません。同金利をゼロにしたところ、銀行は喜んで中央銀行に資金を預けると思います。もっとも、これは、ECBによる融資拡大の原資にもなるため、スペイン、イタリアなど南欧諸国への資金融通にはプラスに作用することになります。
 ドイツの毅然とした財政政策には感嘆するところがありますが、経済主体の期待心理が冷え込んでいる中で、景気浮揚にもっとも効果があるのは財政支出であって、金融政策ではありません。右図は、少し古いかもしれませんが、IS-LM曲線による説明です。縦軸を利子率r、横軸を所得Yとした場合、金融緩和(LM曲線の下方へのシフト)より財政支出の拡大(IS曲線の上方へのシフト)の方が、所得Yの増加幅が大きいことを図示しています。特に、国債利回りが低下している時こそがチャンスであり、ドイツの取り得る政策としては、もちろん適切なものへと投資されていることが前提となりますが、より積極的な財政政策をした方が妥当ではないかと感じています。失業率が低水準である中では、雇用情勢が逼迫しているかもしれませんが、南欧諸国からの労働者の受け入れを積極的に進めれば、それも可能です。
 日本のように、不要な道路や橋に多額の投資をする無節操な財政支出はせず、ここは再生可能エネルギーに限って、投資は抑制しないという施策を打つことはできます。ドイツは、既に原発の廃炉を決定しています。隣国の原子力大国であるフランスから電力を購入する方法もありますが、どうしても新たなエネルギー源が必要となってきています。ならば、この分野での公共事業にはある程度の賛同を得られるはずであり、将来の持続可能な成長にもつながることから市場による否定的な行動も限られるのではないかと考えています。ここはドイツの奮起に期待したいところです。

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