2012年7月1日日曜日

難しい財政統合、ユーロ導入17カ国の経済格差

ユーロ導入国の首脳会議が開かれ、一定の合意がなされ、それに呼応してか株式市場やユーロ相場にやや明るい兆しがみえました。これ以上の負担を拒むドイツにも、国民からの反対意見があるものの、産業界からの支援拡充の要望が強く、妥協をせざるを得ないという事情があるようです。しかし、根本的な問題であるユーロ導入国間の経済格差を解消しない限りは、再びユーロに動揺が走ることとなり、経済成長率の低下や財政の悪化懸念が顕在化、ユーロ債務危機が再燃することとなります。
2012年6月30日付日本経済新聞朝刊にユーロ圏17カ国の首脳会議の合意に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『基金で欧州銀を直接救済、ユーロ圏合意、国債購入も検討』です。以下引用文。
『【ロンドン=松崎雄典】ユーロ圏17カ国の首脳は29日、金融安定基金の欧州安定メカニズム(ESM)を使って経営不振の銀行を救済する枠組みで合意した。各国政府を経由せずに銀行に資本を直接注入するほか、南欧国債の買い入れも検討する。ユーロ圏が踏み込んだ危機対応で合意したのを受け、日経平均株価が29日に9000円台を回復したほか、南欧国債や欧州株も買い戻された。
 ユーロ圏17カ国は29日未明から緊急の首脳会議を開き、安定基金を使った銀行救済や南欧国債の購入で合意した。会合後の声明では「金融不安と財政悪化の悪循環を断つ必要性」を確認。市場が求める危機対応策に応える姿勢を示した』
EU・ユーロ圏の合意は以下の通りです。
  1. 欧州安定基金(ESM)が、各国政府の合意を得ずに、危機に陥った銀行に対して直接資本注入する。
  2. ESMが南欧諸国の国債を直接買い入れなど柔軟に対応し、市場の安定化を図る。
  3. 欧州中央銀行(ECB)が銀行を一元監督する。
  4. インフラ整備などで1200億ユーロを投入し、成長促進策を図る。
  5. 財政統合に向けた工程表を作成する。
 私は、長期的には財政統合が根本的な経済格差の縮小をもたらすと考えています。しかし、2012年6月29日のNHKの報道では、この財政統合の実施に向けては懐疑的な意見が述べられました。財政統合とは、各国政府が予算案を決定した後、欧州委員会などのチェック機関に予算案を提出、認められなかった場合は予算案をまとめ直すというものです。ここで問題となるのは、各国の民意を受けて成立した議会や内閣がまとめた予算案が、欧州委員会などで否定されるということは、各国国民にとって民意が予算案に反映しないことを意味しているからです。工程表作成の合意はなされたものの、合意にには長期間かつ十分な協議が求められるところです。
 右表は、ユーロ加盟国の失業率と財政赤字の対GDP比率を関係を示したものです。こうして図にしてみると、当たり前のことですが、失業率が高い国ほど財政赤字が大きいことが分かります。これは、経済の悪化により失業率が高くなり、高くなった結果、税収が減るとともに、失業手当など財政的な負担が増加するからです。ギリシャ、スペインといった失業率が20%超の国と、ドイツ、ルクセンブルク、オーストリアなど5%前後の国が同一の基準での財政支出ができるかどうかは疑問が残ります。しかし、アイルランドなどの国は、銀行救済があだとなって財政赤字が急拡大しました。今回、ESMによる銀行救済が決定されました。これで、銀行救済→財政赤字の拡大→国債利回りの上昇→国債などを持っている銀行経営がさらに悪化→財政赤字の拡大といった悪循環を断ち切ることのできるようになりました。8,000億ユーロの規模を有するとされるESMが、銀行救済に向けて、どのように機能するかが、財政統合に向けた最初のステップであると思います。

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