2012年5月5日土曜日

求められる非価格競争

先日、京都へ行き、「都おどり」を観に行きました。初めての鑑賞でしたので、驚くことばかりでした。そして、「都おどり」の後は、いわゆる「一見さんお断り」という祇園の「お茶屋さん」で一席を設けてもらいました。つまり、私は京都の祇園に直接的な知り合いはなく、京都在住の知り合いを通じて紹介された「お茶屋さん」に招かれるという形で会席の機会が得られてたというわけです。私も祇園という、日本文化の中でも極みに位置する文化に対して非常に興味があり、まずは体験することが一番だと考えました。そして、寂しい財布の中にもかかわらず、お誘いに対して快諾した結果、今回のツアーが企画された次第です。当日は、天気も良く、話も弾み、京都というものを初めて堪能したというのが私の感想です。
 「都おどり」「お茶屋さん」というば、やや抵抗があるという方々もいると思われますが、私が行った「お茶屋さん」は、夫婦同伴で利用してもいいそうで、いたって健全なイメージという印象を受けました。そして、当日は、「都おどり」「お茶屋さん」「置屋」「仕出し屋」の関連について、「お茶屋さん」の主人に徹底的に質問、京都の祇園とは、「お茶屋さん」を頂点とする非価格競争のサービス産業があることが、なんとなく理解できました。
上図は、私は「お茶屋さん」の主人に質問した祇園のイメージ図です。初体験ですので誤っている点もあるかもしれませんがご了承願います。図では「お茶屋」によって囲われている「顧客」が存在、そこに「置屋」から派遣される芸妓さんいて、料理はもっぱら仕出し屋から提供されていることを示しています。つまり、「お茶屋」は場所を提供、料理や芸妓さんを外部調達している姿がみられます。この図のポイントは、「顧客」が「お茶屋」によって囲い込まれていることです。紹介により会席に参加する機会があった顧客は、別の「お茶屋」にいくことができないのです。例外はあるそうですが、普段から利用している「お茶屋」に断りもなく、別の「お茶屋」に行った場合、狭い世界ですので、その情報が流れ、普段から利用している「お茶屋」にはいくことができなくなるそうです。「お茶屋」の主人は、「仕出し屋」「芸妓さん」の質をチェック、コンシェルジュのような位置づけにあることが分かりました。
現在、価格競争は、日本経済を蝕んでいます。価格競争の結果、所得が減少、減少した所得により需要が減少、そしてさらなる価格競争へと向かっているのです。祇園のシステムがベストとはいえませんが、激烈な価格競争から身を守る一つの方法だと思いました。右図は、需要の変化がないときに、供給が増加した時の価格を示したものです。供給増の結果、価格はPからP'へと下落することとなります。そして、日本経済は、所得の継続的な減少があるため、供給の増加に加え、需要の減少でさらに価格が低下していることとなります。もっとも、競争的な市場が形成するには、私が知っている限り以下の3つの条件が必要であるとされます。

  1. 供給者・需要者が数多く存在すること
  2. 提供されるサービス・商品の質が一定していること
  3. サービス・商品に関する情報が十分であること
祇園が提供するサービスは、1〜3までの条件を全て満たしていない気がします。供給者はお茶屋だけですし、需要者は「一見さんお断り」であることから限られています。2と3の条件は、「お茶屋さん」のはしごが事実上できなくなっていることから、情報は十分ではないですし、個々の「お茶屋さん」が提供するサービスは知る由もないのです。
 以前、iPhoneのアプリにもある「食べログ」で、不正が行われていることが報じられました。レビューアップのために、外食店のオーナーが、評価者に資金を提供するという信じられないことがあったそうです。私も「食べログ」を何度も利用したことがありますので、その実態を知った時のショックは大きかったです。祇園が提供するサービスは、この対極にあるもので、情報を封鎖することにより、価格競争に巻き込まれないシステムづくりです。外食産業に限らず、日本企業は、この価格競争に巻き込まれないシステムづくりに、力を入れる必要があると感じました。

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