2012年5月20日日曜日

プライマリーバランスとは

国と地方を合計した政府の債務残高は863兆円(2011年3月末)に達し、名目GDPの約2倍にも達しています。財政再建が急務になっている中、プライマリーバランスの黒字化を目指した改革が進められています。そうした中で、プライマーバランスとは、何かという疑問が生じます。『週刊ダイヤモンド』2012年4月15日号に、プライマリーバランスについて分かりやすい図表が掲載(注)されていましたので、ご紹介します。
上図はやや簡略化したものです。プライマーバランスの赤字とは、図に従えば、(国債償還を除く、その他歳出約40兆円)+(社会保障約30兆円)−(税収約40兆円)で、2011年度の財政では約30兆円のプライマリーバランスの赤字を抱えていることが分かります。つまり、税収=社会保障+その他の歳出(国債償還を除いた歳出)となることが、プライマリーバランスの均衡化であり、プライマリーバランスの黒字化とは税収が国債償還を除く歳出を上回ることを意味しています。
このことが如何に厳しい現実であることが、図からわかります。つまり、今後も大幅な増加が予想される特別会計の社会保障費負担に約10兆円の費用が、一般会計の歳出によって賄われているからです。また、消費税率を5%引き上げたとしても、約13兆円の税収の増加にしか結びつかず、一般会計の特別会計への負担分が変動しなかったとしても、17兆円の不足となっているからです。一般会計による特別会計への負担増は、高齢化の度合いを考慮りすれば、今後も拡大する確実です。また、年金については、①4.1%という予定利回りが高いままであること、②マクロ経済スライドが未導入であること、保険料の未納問題が未解決であることなどの問題点が指摘されており、一層の改革が必要であることがわかります。
また、消費税率の引き上げが消費抑制的に働くことを忘れてはいけません。欧米諸国など慢性的に経常収支が赤字となっている国々では、消費を抑制し、赤字の拡大を防ぐという機能が消費税にあり、付加価値税などが効果的であるという一面があります。一方、わが国では、消費が常に弱く、デフレが進行し、経常収支も黒字です。このような国で消費抑制的な税である消費税率の引き上げは、さらに国内需要を圧迫させる可能性があることは否定できません。
やはり所得税率の引き上げと、所得の把握率アップに向けた改革が求められるところです。税金が完全に把握されているサラリーマンからの税金徴収の引き上げは、既に限界にきていることから、後者の所得の把握率アップが効率的ではないでしょうか。例えば、消費税ではなく、付加価値税へと変更すれば、円高で利益を挙げている輸入業者の付加価値への課税も可能です。また、背番号制も重要かもしれません。2011年度ベースですが、17兆円の穴埋めを是が非とも行わなければならないのが、わが国の財政の実情です。
(注)記事の題目は『財政再建、今のやり方で財政再建はできない』。

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