2008年9月のリーマンショック、2011年3月の東日本大震災、そして昨今の欧州債務危機を乗り越え、わが国経済にもやや明るい兆しがみえてきたようです。内閣府が2012年1〜3月期の国内総生産(GDP)の速報値を発表しました。発表によると、物価変動の要因を除いた実質GDPの成長率は、前期比1.0%増、年率換算で4.1%増となり、同時に発表された2011年10〜12月期の改定値がプラスになったことから、3期連続のプラス成長となりました。先日、EU統計局が発表したEU域内の成長率がゼロとなったことを考えれば、わが国経済は底を脱したともいえます。
この経済成長は背景には、堅調な個人消費があります。そして、この中心にあるのが自動車販売です。しかし、これを除いた個人消費は、旅行・レジャーなど一部で回復傾向があるものの、総じて弱いという結果となり、先行きの減速感は否定できないそうです。欧州債務危機に連動し、中国経済の減速感が指摘されており、輸出も予断を許さない状況にあります。さらに、円相場が高止まっており、東芝が国内のテレビ工場を閉鎖、全量を国外の工場で生産するなど、企業の海外への生産シフトも歯止めがかかっておらず、持続的な経済成長は難しいという環境にあるといえます。
右図は、実質経済成長利率(年率)と項目別の寄与度を示しています。こうしてグラフをみていますと、東日本大震災よりも、リーマン・ショックの方が、わが国に与えた影響が極めて大きくことがよく分かります。消費が慢性的に弱い中で、純輸出を如何に増加させるかが、持続的な経済成長のキーポイントであることは変わっていないのが事実です。中国経済が失速し、欧米経済の回復が芳しくなければ、今後の経済成長が鈍化する恐れは十分にあります。
内閣府から発表される『国民経済計算』で私が個人的に注目しているデータがあります。それは、名目GDPの推移です。今回は、前期比で1.0%増、年率換算4.1%も増加しています。2011年7〜9月期も年率6.1%増加しており、物価の下落傾向にある程度歯止めがかかったのではないかと期待しています。もっとも、それが原油価格の高騰など純輸出の減少させる形での増加ならば、日銀が目標としているインフレ率の1.0%の効果は決して望ましいものではないとも思っています。図は1999年からのGDPデフレーターを示しています。日本経済がデフレであることが一目でわかるデータです。私は、名目GDPと実質GDPが同水準ななった時点が、回復の原点だと考えています。1999年に500兆円であった名目GDPは、474兆円にまで減少しています。私は500兆円は覚えやすい数字だということで、日本の経済規模に関する質問があった場合、500兆円だとよく答えています。一方で、実質GDPは、今回の発表では517兆円です。このギャップがある限りは、デフレからの脱却とはいえないのでしょう。
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