2012年5月24日木曜日

対外純資産からみたイタリア、米国、日本、中国

財務省発表によると、日本は経常収支の黒字分を、長年積み上げていたせいか、対外純資産は世界1位の水準にあるそうです。これはいいことだという反面、積み上げた対外純資産が、ここのところの円高により目減りしているという実態も明らかになりました。
2012年5月22日付日本経済新聞夕刊に、この対外純資産に関する記事が掲載されていました。記事の題目は『対外純資産2年ぶり増、昨年末253兆円、円高で海外投資活発』で、以下記事引用文。

『財務省が22日発表した2011年末の対外資産・負債残高によると、日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を引いた対外純資産残高は前年末比0.6%増の253兆100億円となった。増加は2年ぶり。円高を背景に海外企業の買収など直接投資が増えた。海外勢が日本の短期債を買い増して日本にとっての負債も増え、純資産の伸びは小幅にとどまった』

上表が財務省のホームベージ掲載のデータから作成した主要国の対外純資産の推移を示したものです。日本は2位の中国を圧倒しているものの、2007年末から2011年末にかけて1.1%の増加にとどまっています。一方、同期間に中国が28.2%増加している点は注目されます。もっとも、GDP比率で見た場合、中国が0.6ポイントの上昇にとどまっているのに対して、日本は5.5ポイントも上昇しています。これは、中国のGDPが急増している対して、わが国がデフレ経済の影響で名目GDPがむしろ減少傾向にあることを反映しています。また、前年との対比では為替変動により23兆円強にも及ぶ純資産が目減りしたそうです。蟻のよう懸命に頑張った結果が、対外純資産の大幅増加に結びつかないのが、わが国の実像です。悲しいですね。
このデータをみて驚いたのは、まず対外純資産が大幅にマイナスとなっている米国です。マイナス幅が大きいのは予想されましたが、2006年から2010年にかけて純資産のマイナスが100兆円以上も減少、GDP比率でも2.2ポイントも低下していることです。日本が蟻ならば、まさしく米国はキリギリスです。しかし、その結果、名目GDPは継続的に増加する一方で、ドル安の影響もあり対外純資産のマイナスが大きく減少、キリギリスの方がリッチになっているという姿があります。日本企業の努力の結晶である対外直接投資などによって、将来の日本は潤うのでしょうか。日本企業が外国に保有している資産は、戻ってこない可能性の方が高いといえます。
もう一つ驚いたのはイタリアです。2006年から2011年にかけて、対外純資産のマイナスが3倍にも増加していることです。GDP比率も、同期間5.3%から21.8%へと上昇、ほぼ4倍にもなっています。イタリア国債は、同国のプライマリーバランスがプラスだから安心であると、友人から聞くことがあります。しかし、対外純資産のマイナスの積み上げは、確実にGDPに対する利払い費などの比率を上昇させているはずです。これを将来のリスクと捉え、リスクプレミアムの上昇を反映してなのか、イタリア国債の格下げやドイツ国債との利回り格差の拡大は、実態に合わせた水準なのかもしれません。イタリアが加われば、欧州債務危機は底なしです。

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