2012年5月30日水曜日

わが国の完全失業率と有効求人倍率の推移

29日、厚生労働省から有効求人倍率が発表されました。2012年4月の有効求人倍率は、前月から0.3ポイント上昇の0.79倍となり、雇用情勢にやや明るさが出てきています。有効求人倍率の底は、2009年7月、8月、9月の0.43倍であり、この数値を見る限りでは日本経済はかなり良くなっているといえます。一方、総務省統計局発表の完全失業率は、前月から0.1ポイントの悪化で、4.6%となっています。双方が逆の動きを示しており、両者の統計調査方法の差を理解する必要があることをいつも痛感されてくれる統計データであると感じさせてくれます。因に、景気動向指数では、有効求人倍率は一致系列、完全失業率は遅行系列に該当し、完全失業率が景気の変動に対してやや遅れる傾向があることを示しています。
右図は、厚生労働省と総務省統計局のホームページ掲載のデータに基づき作成した完全失業率と有効求人倍率の推移を示したグラフです。やはり、2008年9月のリーマン・ショックの影響が大きいことが一目で分かります。このブログを書いて頻繁に出てくるのが「リーマン・ショック後」という言葉です。やや使い過ぎの感はありますが、ご了承下さい。リーマン・ショックの大きさは雇用情勢の悪化に現れているものの、2011年3月の震災ショックの影響は、完全失業率の上昇にややみられるものの、有効求人倍率については着実に改善しており、逆に着実な回復傾向にあるといえます。
 ここで、統計の話をします。完全失業率は実はサンプル調査であり、総務省統計局では「全国で無作為に抽出された約40,000世帯の世帯員のうち15歳以上の者約10万人を対象とし、その就業・不就業の状態を調査している」ものとしています。一方、有効求人倍率は全数調査です。地域にある公共職業安定所で取り扱った月間有効求人数を月間有効求職者数で除したもので、つまり有効求人倍率はサンプル調査ではないということです。確かに、有効求人倍率が0.43倍から0.79倍への上昇は着実な景気回復の証拠であるといえます。もっとも、就労を諦めた人などは職業安定所へは行きません。従って、全数調査であるものの、有効求人倍率は景気の実態からやや乖離する傾向もあります。それに対して、完全失業率は、サンプル調査であるものの、就業を諦めた人なども対象になる可能性もあり、実態に近い調査であるともいえます。そして、この完全失業率が、2011年8月、9月の4.2%を底に、期近の4月で4.6%とやや悪化していることが気になるところです。景気変動に遅れる統計であるものの、この当たりは、欧州債務危機、円高の影響が否定できないともいえるでしょう。両者の統計調査のくせを理解した上で、取り扱うことが大切であると思います。
ここで、有効求人倍率の地域的な差をみてみます。右図は地域別の有効求人倍率を2011年4月と2012年4月で比較したものです。全国が0.62倍から0.79倍に上昇しており、全ての地域で改善がみられます。もっとも、地域別にはかなり差があることが認められます。東海が既に1倍を超えている一方で、北海道(0.58倍)、九州(0.65倍)はともに低い水準にとどまっています。北海道はやや納得できるところがありますが、九州は自動車などの製造業が集中立地していることが逆にあだになっていることも考えられます。詳しい調査が必要ですね。

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