2012年5月16日水曜日

ギリシャでの預金引き出しに震撼

ギリシャ問題に不透明感を増しています。パプリアス・ギリシャ大統領の呼びかけにも応じたものの、ギリシャ議会は組閣に失敗、再選挙という最悪の結果となりました。これを受けてかユーロ相場は、対円で101円台にまで下落、ニュースでもトップで報じられるなどしています。ギリシャ問題は再燃し、市場関係者にとどまらず、世間一般での関心も高まっており、世界経済を底のないブラックホールへと陥らせる勢いにまでになっています。こうした中で、ギリシャで預金引き出しが行われているという衝撃的なニュースが飛び込んできました。ギリシャのユーロ離脱が現実味を帯びてきたようです。2012年5月16日付日本経済新聞夕刊に『ギリシャ、資金流出加速、預金710億円減少』という記事が掲載されていました。この記事を読んでいて、私は背筋が凍る思いをしましたので引用させていただきます。以下記事引用。
 『【イスタンブール=花房良簾祐】ギリシャで15日、連立政権樹立を目指す調整が失敗し、世論で緊縮財政策への反発が広がる中での再選挙が確実となったことを受け、同国からの資金流出が加速した。株価指数は6日の総選挙直後から約2割下落、銀行預金も1週間余りで約7億ユーロ(約714億円)目減りした。市場では政治空白の長期化で財政再建の停滞が不可避とみて「ユーロ離脱論」が浮上しているためだ』
 預金の引き出しは当然ともいえる流れです。ギリシャがユーロから離脱し、旧通貨であるドラクマが再び復活した場合、ユーロに対するドラクマ相場の大暴落は目に見えています。そして、それに伴い、ギリシャ当局による銀行預金の引き出し凍結などの強硬措置が講じられる可能性は十分にあるといえます。現時点で考えられる預金者としての最良の選択肢は、速やかに預金を引き出し、ユーロを現金という形で金庫で保有することです。わが国では円という通貨が非常に安定していることから、そのようなことは ありません。しかし、仮にデフォルトリスクが発生したのならば、ドルや金(ゴールド)などへ換金し、金融資産の価値保蔵に走るでしょう。預金を引き出された銀行は、資金ショートを起こし、連鎖倒産する可能性があります。上表は、S&Pのギリシャの主な銀行の格付けを示したものです。CCC(トリプルC)が最高であり、既に終わっているという印象を受けます。
 そして、やばいのはこれからです。預金の引き出しが本格化し、ギリシャの銀行が連鎖倒産した場合、ギリシャの銀行に多額の資金を提供するギリシャ以外の欧州の金融機関に影響があるからです。右図は、私が想定した危機の連鎖のフローチャートです。預金の引き出しを第一弾の危機として、次の危機は、ギリシャに多額の資金を提供している欧州の銀行のバランスシートへと移っていきます。最終的には、自己資本の毀損などを通じて、よりグローバルな市場へと危機が迫る可能性が否定できません。この理由は、ヨーロッパの銀行の特徴に起因します。預金で資金を主に調達する日本の金融機関とは異なり、アイスランド、アイルランドの銀行や昨今倒産したベルギーのデクシアのように、ヨーロッパの金融機関は市場から調達している資金が圧倒的に多いことです。市場から調達された資金の出し手には、日米金融機関による貸し付けもあるでしょうし、株主、社債の直接の購入者なども当てはまります。より身近では外貨建てMMFなどが欧州の金融機関発行のCPを購入していることから、MMFの一部資産が毀損する恐れがあります。しばらくは様子をみるしかないのですが、世界の投資家がギリシャ危機に巻き込まれる構図がみえてきました。

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