国民年金保険料の未納問題はかなり前から指摘されており、それを裏付けるデータがありましたので紹介します。それは、厚生労働省発表の『平成22年度の国民年金の加入・保険料納付状況』で、保険料の納付率は1991年度、1992年度の85.7%をピークに大きく低下、2010年度で59.3%と初めて60%を下回るまでに至っています。その後、納付状況から考えて3年連続の60%割れは確実視されており、低下傾向に歯止めがかからない場合、一般会計の歳出増加に歯止めがかからず、2020年度にプライマー・バランスの黒字化を目指す政府の政策目標が頓挫する可能性が高くなっています。2012年5月15日日本経済新聞朝刊に『国民年金納付率、最低に』という記事が掲載されていましたので引用します。以下引用文。
『2011年度の国民年金保険料の納付率が過去最低を更新しそうだ。11年4月〜12年1月分の納付率は57.6%で、前年同期比を0.7%下回っている。残り2ヵ月分で回復するのは難しく、3年連続で60%を割るのは確実な情勢だ。神奈川県や東京など首都圏の落ち込みが目立つ。収入が低く、年金制度への不信感が高い若者の未納に歯止めがかかっていない』そこで、どうして納付率が下がっているかについて知りたいと考え、データをより詳しく調べることにしました。右表は、同じ調査結果にあった都道府県別の保険料納付率を示したものです。表をみて直感的にわかりやすいように、上位10位には■色、下位10位には■色で区別してみました。まず、上位10位の都道府県ですが、語弊がありますが、いわゆる「いなか」といわれる県を多く含まれていることがわかります。そして、日本海側の県が多い気がします。事実、長野県、岐阜県を除いた上位は全て日本海に接している県です。これは不思議ともいえる現象ですが、地域経済の規模に対して国からもたらされる公共事業などの便益を多く受けており、政府への信頼感が高いからかもしれませんね。やはり詳しく調べる必要がある調査結果です。
一方、下位10位は、地域の中では中心となっている都道府県が多いことに特徴があります。東京都は43位にとどまっており、都知事が偉そうなことを言っている割には、国民年金の制度を破綻させる上で、トップ集団に入っています。全く困ったものですね。ワーストワンの沖縄県は失業率が高いなどの経済的な要因が大きく、やむを得ないという気がします。一方で、ワースト2の大阪府は「やっぱり」の一言です。そして、福岡県、宮崎県なども地域の中心となっている県です。仕事を求め、「いなか」の県から人々が流入、その結果、低賃金に甘んじている人々や失業している人々の割合が多いからかもしれません。
そして、問題なのが若者の納付率の低さです。若者の雇用問題は、国を隔てもまでもなく、世界の国々にとって共通の課題です。財政問題が危機的な状態になっているギリシャ、スペインなどでは、若者の失業率が50%超の状態になっています。また、昨年、「アラブの春」のきっかけをつくったのも、失業したことに悲観し、自殺に至った若者でした。日本でも若年層の失業問題が指摘されています。右図は、年齢階級別の納付率をグラフにしたものです。 納付率が最も低い年齢階級は、意外にも25〜29歳でした。雇用問題でもっとも深刻なのは、25〜29歳の会社に就職してしばらく経った世代かもしれませんね。
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