2012年5月12日土曜日

米国の失業率について

失業率の統計を考える時、一番大切なのは、分子である失業者数と分母である(失業者+就業者)の定義です。就業者数は実際に就業している人をカウントすればいいことになるが、失業者の方はやっかいなところがあります。それは、一定期間に就職活動をしたことがある人なのか、それとも就職活動はしていないものの、就業の意志がある人なのかということです。つまり、前者は、就業についてあきらめてなく、持続的に就職活動をしている人で、後者は、不景気の中で就業自体をあきらめた人などがカウントされているかもしれない。また、労働力人口で考えれば、年金を受給し、第2の人生を送っている方々も含めることになるため、取り扱いには注意を要します。
米国の失業率統計を表したものとして労働参加率という言葉が、2012年5月5日付日本経済新聞朝刊にて紹介されていました。早々に、米労働省のホームページをチェック、グラフを作成してみました。グラフの中で(A)と表記しているのが、労働参加率であり、2000年当たりから低下していることが分かります。このデータをチェックしていると、この労働参加率とは、労働力人口(Civilian noninstitutional population)を分母、(就業者+失業者)を分子として計算されることが理解できました。確かに、この数値の低下は、就業自体を諦めた人の割合を示している部分があり、景気低迷が長期化している米国を経済状況をよく表しているといえます。もっとも、この労働力人口は、16歳以上で、軍人や施設にとどまっている人々を除いた数字であり、65歳以上の人々もデータに加わっています。つまり、高齢化に伴い労働参加率の低下は否定できない事実で、好景気であった時から低下していることから、そのことが説明できます。
そこで、総人口に対する労働力人口の比率を表してみました。上のグラフでは、(B)に該当するデータであり、2005年から急落しています。そして、(B)-(A)をグラフで表してみると、2000年くらいから上昇傾向にあることが分かります。このデータは、何を示しているのかやや疑問が残りますが、上昇しているという事実は変わりません。
ここで、上記記事に労働参加率に関して記述している部分がありましたので引用します。記事の題目は『米雇用、見えぬ回復力、労働参加率63.6%、30年ぶり低水準、消費と好循環生まれず』です。以下引用文。
『【ワシントン=藤井彰夫】4月の米雇用統計では、米国の雇用回復の鈍化が鮮明になった。非農業部門の雇用者数の伸びは3月に続いて20万人の大台を割り込んだ。雇用者数は増えても賃金の伸び率は低く「雇用増→消費増」という好循環につながっていない。米連邦準備理事会(FRB)も雇用の先行きには警戒姿勢をといておらず、必要に応じて追加緩和策を検討する構えだ。(中略)
4月の雇用統計で目を引くのは労働参加率の低下だ。16歳以上の人口のうち働く意志のある人の割合を示す労働参加率は、4月は63.6%と前月に比べて0.2ポイント低下、およそ30年ぶりの低水準を更新した。4月の失業率が8.1%と3年3ヵ月ぶりの低水準に下がったのも、労働参加率が低下し、失業率の計算の分母になる労働力人口が落ち込んだ影響が大きい』
労働力人口は、日本の場合、15歳以上の人を対象とするようです。米国の場合は、16歳以上の人を対象として労働力人口としていることから、国によって異なる統計を比較することはやっかいなことです。因に、生産年齢人口とは、日本の場合、15歳以上65歳未満の人々を対象としたものです。個々のデータの差を考慮した上で、経済分析をするには、統計の意味をまず理解することが大切です。私の勉強不足から今日のブログは用語の使い方においてやや不明瞭な点があると思います。

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