2012年7月31日火曜日

赤字決算となったフェイスブックとマイクロソフト

MacのOSのメジャーバージョンアップが、7月25日から開始、App Storeからトラブルなくダウンロード、インストールに成功しました。現在、新しいOS、Mountain Lionを搭載したMac Book Airで、このブログを書いています。このバージョンアップで、Dockにメモ帳とリマインダーが表示、iCloudを通じて書き込みが同期可能となったということが分かりました。ややマイナーのバージョンアップという感は否めませんが、今後、このバージョンアップがどの程度のものかを知るまでにはかなりの時間を要するかもしれませんが、雑誌等で詳細を確認したいと思っています。今、気がついたのですが、このバージョンアップで新たな機能があるといえば、Macで音声入力できるようになった点です。早速試してみましょう。これから、入力する文章のほとんどを音声入力によるものにしてみます。iPhone4Sで搭載された人口知能Siriと同様に、MacにもSiriが搭載されれば有り難いと思います。
 今日は、2012年4〜6月期の米IT大手の業績発表が出そろいましたので、この件について書きます。特に注目された5月18日に上場したばかりのフェイスブックの決算発表で、結果として売上高は前年同期比で32%増加したものの、研究開発費などの事業拡大がかさみ、赤字決算となりました。出鼻を挫かれる結果であり、やや残念な気がします。インテルは増収減益、ヤフーは減収減益、フェイスブック、マイクロソフトは増収・赤字決算となる一方、アップルとグーグルはともに大幅な増収増益を記録しています。もっとも、アップルは市場予測を下回る結果にとどまっており、世界経済の成長率鈍化が米IT業界にも及んでいる可能性は否定できないでしょう。しかし、グーグルの業績は好調さ持続してますし、アップルも新しいiPhoneやiPodの発売を前にしおり、買い控えから需要が減退する一時的な要因とも考えられます。マイクロソフトの赤字も、広告事業の清算の結果です。インテル、ヤフー、フェイスブックにはやや構造的な問題があるものの、それを除く、アッブル、グーグル、マイクロソフトの業績には全く問題がないといえます。
この米IT業界に関する記事が、2012年7月29日付朝日新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『米IT、業績に不透明感。4〜6月期決算、FB・MSともに赤字』です。以下引用文。
『米国の大手IT企業の今年4〜6月期決算がでそろった。フェイスブックが株式上場後初の決算で赤字になり、マイクロソフトも1986年に上場してから初めて赤字に転落した。快進撃を続けていたアップルの伸びも鈍り始め、IT業界の先行きが見通しづらくなってきた。
交流サイト最大手のフェースブックは研究開発費など事業を拡大すると投資がかさみ、純損益は赤字だった。売上高は32%増えたが自動車メーカーが広告を引き上げるなど「広告で稼げるのか」という懸念が強く、決算発表の翌日に株価が上場してからの最安値をつけた。
赤字に転落したマイクロソフトは、「脱パソコン」戦略でもたつく。赤字の原因は2007年に買収したネット広告会社の業績不振が大きい。買収金額とほぼ同じ62億ドル(約4,800億円)の損失が出た。
半導体最大手のインテルはパソコン向け半導体は着実に売れたが、収益は前年同期とほぼ同じだった。パソコンの販売は世界経済減速の影響を受けなすく、幹部は決算発表の電話会見で「売り上げなどでの見通しは従来よりも鈍くなる」と語った』
 上記の文章は、Macの音声認識ソフトで入力したものです。認識精度の高さに驚いているところです。研究開発を余りしないことで知られるアップルは、どこでこのような技術を手に入れたのか驚きです。Siriなどを通じて情報を集めていたのかもしれませんね。右図は、フェイスブックが上場した5月18日の終値を100として指数化した上記6社の株価の推移です。フェイスブックの株価の不調さが目立つだけで、特筆するものはありません。日本で、"LINE"というアプリに人気があります。この人気の秘密には、相手方の電話番号を入力しなけば、登録できないということです。交流サイトが無節操な登録者数を伸ばす一方で、ユーザーのやや疲れが出てきているとろこに、知人に限定したサービスに徹する"LINE"の人気は、これからのIT業界の流れを予測するものかもしれません。

2012年7月30日月曜日

米国経済への依存と成長率が鈍化する世界経済

米国の経済成長率がさらに鈍化しました。これは、失業率の高止まり、就業者数の増加幅の縮小などからある程度予測された事実です。最近では米ドル高などを背景とした企業収益の悪化なども要因として考えられるようになってきました。EU経済はどん底にあり、それに引っ張られる形で、2012年4〜6月期の中国の成長率が7.6%と、3年ぶりの8%割れを記録したばかりです。ここはどうしても米国経済の本格的な回復に期待したいところがあります。
2012年7月28日付日本経済新聞朝刊に米国の経済成長率に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『米、1.5%成長に減速。4〜6月期年率、消費・投資振るわず』です。新興国・途上国の世界経済に占める割合が高まっているとはいえ、輸出依存の経済成長であることには変わりなく、米国、欧州、日本などの先進国の旺盛な消費需要がなければ立ち行かないのが現状です。特に、米国は、経済規模が大きく、所得水準が高く、そして人口が増加している唯一の経済大国です。欧州経済が機能不全に陥っている中で、米国経済の復活なくして、世界経済の安定はないのです。上図は、日本、中国、米国、EUの経済成長率の推移を占めています。特徴は、中国経済の成長鈍化です。中国経済が輸出主導で成長するには、世界経済は小さすぎるのです。以下引用文。
『【ワシントン=矢沢俊樹】米商務省が27日発表した2012年4〜6月期の米実質国内総生産(GDP、速報値、季節調整済み)は前期に比べ年率換算で1.5%の伸びにとどまった。欧州債務不安や米財政問題などを背景に個人消費、設備投資がともに振るわず、1〜3月期の2.0%増(改定値)から減速した。
市場予測の平均である1.2%を上回った。だが「2%台半ばとされる米経済の潜在成長率よりも低く、失業率は高止まりが続く」(ディシジョン・エコノミクスのシニア・エコノミストのピエール・エリス氏)といった見方が多い』
 戦後、70年近くも米国経済に依存している世界経済は、それぞれの国々がそろそろが自立してもいいのではないでしょうか。しかし、米国経済に依然として依存しているにも関わらず、政治的な支配を嫌うロシアや中国の対応は疑問が残ります。それは、内戦が状態に陥っているシリアへの対応です。米経済の立ち直りを切望しているのは、世界経済ばかりかロシア、中国も一致しているはずです。その米国、そして欧州諸国に逆らい、独裁国家を擁護する結果となった安保理におけるロシア、中国の拒否権の発動はいかなるものかと思っています。また、ロシアや中国の政府によるマスコミ封じには辟易しており、両国とも現時点では世界のリーダーとなる器はありません。両国が世界経済の主導権に握った時点で、全てなクリエイティブな考えや、人と人とが協調する精神を捨て去るという時代が到来します。せめて平和の祭典であるオリンピックの開催期間中でもシリア政府が停戦に応じて欲しいと切に祈っています。上図は、先進国と新興国・途上国のGDPのシェアを2007年と2011年で比較したものです。4年間で、先進国が71.6%→63.8%と7.8ポイントシェアを落としていることがわかります。しかし、この時点では、ユーロ相場が大きく下落しており、ヨーロッパ経済が萎縮している状況下でのデータです。米国経済の本格回復に加え、ユーロ圏が本格的に回復すれば、そして日本経済が立ち直れば、違ったデータになるではないでしょうか。

2012年7月29日日曜日

深刻な影響も、野村証券、大和証券などによるインサイド情報の漏えい事件

日本国内の金融も腐っている実態を改めて認識しました。私は事実すら知らなかったのですが、2010年8月24日に発表された日本板硝子による公募増資に関するインサイド情報の提供が大手証券会社により、米ヘッジファンド系投資助言会社「ジャパン・アドバイザリー」に漏洩された事件があったそうです。これに関連して、2012年7月28日付毎日新聞朝刊に記事が掲載されていました。今回の事件は深刻であり、野村、大和、日興SMBCなどの大手証券会社の全てが事件に関与、日本の株式市場がどうしてだめなのかがよく理解できました。
 因みに、日本板硝子という会社自体を、私は全く知りませんでしたので、日経会社情報2012年新春号で調べてみました。同社の収益構成は、建築用ガラス42%、自動車用ガラス46%、機能性ガラス11%で、売上高は2011年3月期で5,772億円に上ります。私が注視したのは、自動車用ガラスに対する売上高です。実は、私は、ある大手自動車会社の株式を少しばかり保有しています。つまり、この大手証券会社による不正は、間接的ではありますが、私が株主である企業に対しても損害を与えている可能性もあり、大手証券会社に対して損害賠償を請求する権利を私は有しているのです。実際のところ、決してそんなことはしませんが、時間があれば考えてもいいと思っています。つまり、私が言いたいのは、市場とは、一つのリングでつながったものです。あるものの価格が下がれば、あるものの価格が上昇する。価格とは、相互に関係しながら、日々変動、公正な価格形成を信じ、この信頼のもと市場参加者は取引を行うのです。その際に、情報に非対称性がある場合、ある特定の経済主体が利益を一方的に得ることとなります。そして、つながっているはずの市場のリングが、実はつながっていなかったという事実を、情報を知らなかった一般の人々は、後で知る事になるです(ほとんどは知らぬ間にです)。ルールは、いたってシンプルです。経済学の入門書のプロローグに記載されています。上図が示す通り、需要と供給により価格と量が決定されるのです。そこに、情報の非対称性という不公正な状況があれば、一般均衡理論のもと市場は瓦解するのです。
右図は、日本板硝子の公募増資が発表された2010年8月24と公募増資が実施された9月の株価です。信用取引の残高をみる限りでは、直前に信用取引の売り残が急増するなどの投機的な取引は確認できませんでした。しかし、仮に内々にこのインサイド情報を手に入れた場合の投資行動は、株価がピークに達した230円当たりで信用取引の売りを仕掛けることで一方的利益を得ることができることが、同社の株価の推移から事後的に知ることができます。投資助言で恐喝まがいのことをしている米ヘッジファンドのすることは、米の金融業界の腐り具合から察することができますが、バブル崩壊という苦しみを20年間という長きの間、経験した日本の金融機関がすることではないです。この行為は、経済的な苦しみから立ち直ろうとする普通の人々(ordinary people)(注1)の日々の努力を根底から崩し、不正をして、人を蹴落として、自分さえ儲かれば許されると考えている、頭のいかれた金融至上主義者、つまり普通ではない人々(extraordinary people)のやったことです。
 今日の引用は、2012年7月28日付毎日新聞の記事です。記事の題目は『大和証券、増資インサイダー。手数料、漏えいの動機か。大口ファンド、情報要求も』です。ヘッジファンドは、反省の色なしです。会社名は「ジャパン・アドバイザリー」から「ジャパン・インサイダリー」に変更した方がいいですね。米国、欧州、日本のみならず、世界が金融という亡霊にうなされているのです。以下記事引用。

『大和証券グループ本社が27日、企業の公募増資を巡るインサイダー取引への関与を認める情報報告書を公表、野村、SMBC日興証券とともに3大証券会社すべてで不正な情報漏えいが行われ、経営トップが社内処分される異例の事態となった。大和から情報漏えいを受けた米ヘッジファンド系投資助言会社「ジャパン・アドバイザリー」(JA、東京都中央区)は、売買注文の発注を「エサ」に、他の証券会社に対しても公募増資などの未公表情報の提供を要求していたとみられている。金融庁は大手証券12社にJA社との関係を点検し報告するよう求め、「癒着」の実態解明を急ぐ』

ほとんど恐喝まがいなことをしている米ヘッジファンドの実態(注2)とそれに屈した日本の金融機関という構図がみえます。証券会社から組織的な関与はないという説明がありますが、個人的な動機ですまされるのでしょうか。そして、その個人的な動機とはいったい何でしょうか。生活が苦しかったのでやむを得なくしましたというのならば、情状酌量の余地があります。しかし、大手証券、銀行の給与水準から考えて、それはないでしょう。上図は、大手金融機関の平均年収と業種別平均の平均年収です。今日は、公平を期する必要があるために、業種の年収トップ企業と業種の平均値を併記する形でグラフを作成しました。野村HDの組織的な関与がなかったとして、上記のこの年収です。まさに「金の亡者」です(注3)一般庶民の年収は、500万円を下回っているのが実態です。このことから教訓を得て、今後、人類の持続可能な発展に生かすため、彼らの脳をスキャンして精神構造を解明する必要がある気がします。これが生物的に解明できれば、ノーベル経済学賞受賞も可能でしょう。本当に恥ずかしい話です。
(注1)ロバート・レッドフォード監督の『普通の人々』に合わせた表現です。
(注2)JAの社員は日本人の可能性はあります。外国人を差別する意味はありませんが、仮に「JA」の社員が日本人ならば、本当にひどい話です。これは「ゆすり」と同義です。
(注3)2012年3月7日付『「お金」と人類の発展』のブログの中で記述。「お金」を手にすると、脳内の腹側線条体の活動が活発化するそうです。

2012年7月28日土曜日

規模の小さい日本の製薬会社、統合の必要性があり

今後、わが国では高齢化が進み、医療費への支出の増大が予想されます。通常ならば、製薬会社からみた場合、市場の拡大が期待されるものの、これ以上の政府支出の増大には制約があることから、引き続き薬価の引き下げが進められ、逆に製薬会社の売上高や収益が圧迫される可能性が高い。2012年4月12日付『知らなかった薬価の引き下げ』のブログでも、薬価の引き下げについて書きました。有望な薬を持たない製薬会社は、薬価の引き下げの影響の直撃を受けることになります。このため、国内市場だけに頼るのではなく、海外市場の開拓が製薬会社が生き残る上で不可欠な要素となっています。しかし、海外には規模の大きく、競争力のある製薬会社が多数存在、わが国トップの武田薬品工業でも、売上高ランキングで12位の規模に過ぎないのが実情です。
2012年7月22日付朝日新聞朝刊に製薬会社に関する記事が掲載されていましたので紹介します。キーワードは、「がん新薬」「新興国」で、記事の題目は『がん新薬、開発激化。大型薬、特許切れ新戦略』です。以下引用文。
 『製薬各社は1990年ごろから、高血圧や高脂血症など患者が多い生活習慣病を中心に大型新薬を次々開発し、巨額の利益を得てきた。だが近年、そうした薬は飽和状態だ。しかも10年前後から大型薬の特許切れも重なり、戦略の練り直しを迫られた。 新たに開発の重点領域になってきたのが、生活習慣病より患者数が少ないが、有効な薬が乏しかった分野。特に、各社がそろって注力するのが「がん」だ。 厚生労働省の08年の調査では、高血圧性疾患の患者は797万人、糖尿病が237万人。がんは152万人で、胃や大腸など部位ごとに分かれている。「ホームランを狙うのでなくく、ヒットを多く打つ戦略」(大手製薬会社)に出た。(中略) 業界のもう一つの大きな動きが、経済成長著しい新興国への進出だ。 先月、武田薬品工業は世界約70カ国の拠点から幹部ら約270人を米シカゴに集め、大規模な販売会議を開いた。長谷川閑史社長が「武田の今後10年の成長を牽引するのは、先進国でなく新興国。売上高の伸びの半分近くを新興国市場で創出する」と語りかけた。(中略) 米調査会社IMSの予測では、11〜16年の日米医薬品市場の伸びが年1〜4%なのに対し、新興国17カ国は年平均11%を超える。特に中国の市場は15年ごろに日本を抜き米国に次ぐ世界2位になると見込まれ、国内各社が重点を置く』
 国内での薬品市場でも、外資系製薬会社の存在感は大きく、国内の製薬会社は必然的に海外市場へウェイトを置く必要があると思います。そうした中で、日本の製薬会社の規模が、海外の製薬会社と比べて小さいことが問題となっています。右図は、同じ記事記載のデータから作成したものです。トップ5には米、スイス、フランスの企業がランキング、日本の製薬会社は10位にも入っていないのが現状です。日本の企業はどうして統合が進まないのかが不思議です。家電、自動車などの輸出企業でも共通した点です。海外の企業では、国境を超えた合併も日常茶飯事です。競争力回復には、まず、製薬の分野でも、国内企業での合併を速やかに進めるとともに、海外企業との合併を容認、規模の経済性を追求することが求められます。

2012年7月27日金曜日

キャノンのミラーレス発売、懸念される低価格化

一眼レフのデジタルカメラというば、日本メーカーが世界市場を席巻しているというイメージがあります。ドイツにも有名メーカーがあるものの、そのロットは少なく、9割以上のシェアを維持しており、コンシューマーサイド、つまり川下に位置する産業でも、わが国のメーカーが競争力を確保している数少なくなっている製品の一つです。
 かつては、レンズ交換式デジタルカメラといえば、この一眼レフのデジタルカメラを一般には指し、有力なメーカーというばキャノン、ニコンでした。しかし、2008年にパナソニックによりミラーレスという新たなカテゴリーのレンズ交換式のデジタルカメラが発売され、一眼レフの市場を奪っています。既に、レンズ交換式デジタルカメラの国内市場でも4割をミラーレスが抑えており、これを危機感を抱いたのか、キャノンがついにミラーレスのデジタルカメラの参入を発表しました。
 2012年7月24日付日本経済新聞にキャノンのミラーレスの発売についての記事が掲載されていましたので紹介します。因に、私は、デジイチ(一眼レフのデジタルカメラ)はニコンのD300、コンデジ(コンパクトデジタルカメラ)はキャノンのPowershotG10で、以前はデジイチばかりだったのですが、遠方への旅行には手軽さからコンデジを持っていくケースが多くなってきています。今、ニコンに続く、キャノンの市場参入でミラーレスの購入を検討しているところです。記事の題目は『キャノンもミラーレス、年内にシェア1割、最後発、新規顧客を開拓』です。以下引用文。
『キャノンは23日、「ミラーレス」と呼ばれるレンズ交換式デジタルカメラ事業に参入すると発表した。ミラーレスはデジタル一眼レフよりも小型軽量な点が受けて、女性や若者の人気が拡大。レンズ交換式では国内市場の4割を占める主戦場となっている。デジカメ世界最大手のキャノンは国内最後発となるが、デジカメのブランド力や豊富なレンズなどの経営資源を生かし、今年下期(7〜12月期)に11%のシェア獲得を目指す』
消費者の立場から考えれば、選択肢が増えるという意味で、キャノンのミラーレスへの参入はプラスです。しかし、日本の産業や企業サイドの立場から考えた場合、競争の激化からカメラの低価格を生じさせ、市場から脱落するメーカーが出るという懸念があります。特に、韓国のサムスン電子がミラーレスのデジタルカメラのラインアップを拡充しており、また、日本企業の敗退するのではないかと思い、気がきではないというのが本音です。上図は、カメラ映像機器工業会公表のデータから作成した、レンズ交換式デジタル(スチル)カメラの出荷台数の推移を示しています。図からはフィルムカメラよりもランニングコストが低く、手軽さから急速に市場が拡大していることを読み取ることが出来ます。しかし、1台当たりの価格は急速に低下、今後、メーカーの収益を圧迫する可能性も出てきています。
また、地域別出荷台数では、アジア地域が急速に伸びているものの、2011年時点では僅差で欧州のシェアがトップとなっています。ユーロ安などに伴い、キャノンの株価が大きく下落しているのは、この点などが要因となっていることが考えられます。ところで、金額ベースでは所得水準が高く、出荷台数の多い欧州が圧倒するのではないかと思っていました。しかし、実際に調べてみると、金額ベースのシェアではアジアが欧州を上回っており、単価ベースではアジアの方が欧州よりも高いことが判明しました。つまり、アジアなどでレンズ交換式のデジタルカメラを購入できるのは富裕層であり、近年の経済成長に伴い、富裕層の絶対数がアジア地域で多くなっていることが背景にあります。
 日本メーカーは、ミラーレスのデジタルカメラという新たなカテゴリーをつくり出した点で非常に評価できます。しかし、結果、サムスン電子などの市場参入を許し、この分野での競争力を失うという最悪の事態は是が非でも避けたいところです。ミラーレスのカメラはアダプタを使えば、既存のレンズを装着できるというのが一般的です。キャノンには、過去のレンズ資産にとらわれず、速やか、かつダイナミックな事業展開が期待されるところです。

2012年7月26日木曜日

予想される就業者数の減少とその対策

日本では、年間で生まれる子どもの数は、大体100万人です。寿命が80歳として全ての人々死亡しなかった場合、単純に計算して、将来の日本の人口は8,000万人となります。かなり雑な計算ですし、平均寿命も実際とは違います。しかし、イメージとしては、年間100万人の出生数から想像される日本の将来人口は、8,000万人というのは遠からず、近からずの数字だと思います。
 こうした中で、就業者数の減少に対する危機意識が最近では叫ばれているところです。2012年7月23日のNHK、午後7時のニュースで就業者数の今後の推移についての報道がされました。これは、厚生労働省の研究会が試算したデータで、このまま対策をとらず、放置した場合、就業者数は2010年の6,298万人から845万人減少し、2030年には5,453万人となるとのことです。就業者数の減少は、経済規模の縮小をもたらし、働き手の減少をもたらすとともに、経団連のシンクタンクでは、国内需要の減少に言及、マイナス成長などにより2030年以降先進国から転落する可能性を示唆しています。また、社会保障制度への影響は深刻であり、高齢者の増加にともなって、保険料の支払いが増加、個人や企業の社会保険料の負担の増大を生み、経済が低迷する可能性があるとしています。
この就業者数の減少をくい止める対策として、上記の研究会は、①若者・子育て中の女性・高齢者の働く環境を整備するとともに、②2%程度の実質経済成長を実現することが必要であると提言しています。上記の対策をとった場合、845万人の減少が213万人の減少へと縮小するとしています。
私は、こうした対策には概ね賛成の立場をとりますが、やはり若者が巣立ってこそ将来への持続的な成長があります。子どもを育てている世帯に対して、国民総意のもと社会全体が直接的に支援することが最も有効な手段だと考えます。こうした中で気になるデータが2012年7月22日朝日新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『貧しい子ども、日本で増えている。国連発表で15%。教育の機会を奪われる恐れも』です。右図は、上記記事掲載のデータから作成したグラフです。気になるのは、1人当たりの所得が3万1千ドル以上の国の中では、わが国が、米国、スペイン、イタリアに次いで4位となっている点です。15%という数字は、ノルウェー6.1%、オランダ6.1%、フィンランド5.3%、アイスランド4.7%と比較して3倍近い水準です。ところで、貧困率とは何かという疑問が生じます。この記事にそれを説明している部分がありましたので引用します。以下引用文。
『まず国民一人ひとりの可処分所得を計算する。可処分所得とは、1年間に働くなどして手に入れたお金から、税金や社会保険料を引いた「実際に使える手取り分のお金」のことだ。次に、子どもを含めた国民全員を、その額の高い順に並べ、真ん中にあたる人の所得を中央値とする。その中央値の半額を「貧困ライン」と決め、所得がそれ以下の人を「貧困」とみる。この人たちの全体に占める割合が貧困率だ』
上記引用文の中で、アンダーラインを引いた部分が分からないところです。そして、記事を読んでいくと、子どもの収入は『世帯の収入と人数に応じて調整した金額を所得とみなす』としています。今後、消費税率の引き上げにせよ、子どもを育てている世帯には厳しい現実が待っています。従って、企業を含めた、国民総意の意見として、社会で子どもを育てるのだという考えがもっと浸透すればと思っています。そうすれば、子育て世帯を支援するNPO、NGOの活動やそれらに対する寄付などが増加する可能性もあります。特に、良識的にみて過剰な蓄財をしている引退世代は、国民の義務として生活に必要な蓄財以上は拠出するべきであり、欧米のように寄付の文化が育てばと考えています。そうすれば、社会全体の支援を通じて、子育てをする女性の就業率も上昇しますし、今後、20年間で成人を迎える若者自体が増え、活力のある社会へと変化すると、私は信じています。

2012年7月25日水曜日

影響の大きいドイツ国債の「弱含み」(ネガティブ)

ついにかという印象を受けたニュースが入ってきました。それは、米格付け会社ムーデーズによるドイツ国債の中期的な見通しを「安定的」→「弱含み」(ネガティブ)としたもので、将来的にドイツ国債の格付けの引き下げの懸念が出てきました。これは、ドイツの信用力でもって、かろじて維持されているユーロ圏に、さらなる信用不安をもたらす要因ともなり、早々にスペインの国債利回りが急上昇、危機的な水準と言われる7%を上回るという事態をもたらしています。加えて、スペインの複数の州政府が財政的に立ち行かなくなっており、中央政府への支援要請を求める可能性があるという観測が出ているそうです。ムーディーズは、ドイツ国債をネガティブとした理由に、スペインなどユーロ圏の経済大国への負担増大に、支援をする側であるドイツに対して、自国の経済力をもってしても厳しいという判断があります。
上記の記述は、2012年7月24日付NHKの報道番組「ワールドWave トゥナイト」で報じられたもので、格付けが引き下げられた場合、今後、ドイツ国債の利回りの上昇など直接的な影響以外に、2つの懸念が出ていることを示唆しています。一つは、ドイツの高い格付けを背景に、ユーロ圏の基金は、比較的低い金利で債券を発行、資金を調達している現状があります。引き下げが現実となれば、それら債券の利回りが上昇、調達コストの大幅な増加が見込まれることです。もう一つは、負担の増大への抵抗感から、ドイツによるユーロ圏諸国に対する支援拡大への世論の反発の拡大が予想されることです。ドイツ政府は、短期的なリスクばかりが強調されており、長期的な見通しについての言及がないと反論しているものの、国債利回りの上昇を見る限りでは、ムーディーズの見方が市場を支配しているようです。ドイツは、2013年秋に総選挙があります。米大統領選と比べて時間的には余裕があるものの、事態が長引けば与党敗北という結果になりかねません。ドイツ政府は、世論を気にしながらの支援拡大という難しい対応を迫られているのです。
2012年7月24日付日本経済新聞夕刊にドイツ国債に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『独国債「弱含み」に、米ムーディーズ、引き下げ』です。この記事には、米国や日本の国債が買われ、利回りが低下しているとの記述がありましたが、2012年7月24日日本時間の午後11時時点では、日米の利回りは逆に上昇しています。以下引用文。
『【ニューヨーク=西村博之】ユーロ圏の先行きに再び不安が高まっている。23日の米市場では米国債相場が上昇(金利は低下)し、10年物利回りは一時1.4%を割って過去最低を付けた。スペインなどの財政懸念が再燃し、元本割れの危険が少ない米国債に資金が流れ込んだ。一方、同日夕には米格付け会社のムーディーズ・インベースターズ・サービスが、ドイツなどの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた』
 米国債の利回りの低下は、結果として日米金利差の縮小をもたらすことで、円高を誘因します。ユーロに対しては当然として、日本円は米ドルに対してもやや高めに推移しています。しかし、これは投機的な資金が絡んだ結果の円高であるともいえ、物価水準から考慮した為替レートからは乖離していると推測されます。ムーディーズによる格付けの一覧が準備できませんでしたので、参考ですが米S&Pによるヨーロッパ各国の格付けを示したのが上表です。ムーディーズにより「ネガティブ」とされたのは、上記のドイツ以外にも、オランダ、ルクセンブルクなど最高位のAAAを受けている国々です。因に、日本はAA-で、米国はAA+です。名目GDPに対する政府債務の割合を考えても、ドイツの財政状況は良好であり、ドイツ国債の格付けが実際に引き下げらた場合、財政状況の悪い米国や日本の国債が引き下げとなっても不思議ではないと思っています。

2012年7月24日火曜日

欧州銀に続き、米銀の収益率の低下と預貸率

欧州債務危機を背景に、欧州の金融機関の業績が悪化、通常業務どころではなく、存続自体を問われるまで追い込まれています。そして、一斉に格付の引き下げを受けるなど、厳しい業績が続いている上、このほどのLIBORの不正操作により欧州の金融機関に対して、世界各国から不信の目に向けられています。この上、米銀の業績も悪化しているようです。米銀は、欧州の金融機関に対して多額の保証債務やCDSを抱えています。欧州の金融機関に連動し、業績が悪化しやすいのに加え、国内での資金需要が低迷、収益機会そのものが少なくなっている上、貸出の減少がさらなる景気を下押しし、それが資金需要を悪化させる悪循環に陥っているという見方が出てきています。
この中で、大手米銀の業績の発表があり、事業会社の粗利に当たる純営業収益が5行中4行でマイナスとなり、利ざやなど収益の源泉そのものが縮小しているという実態が判明しました。右図は、2012年7月19日付日本経済新聞朝刊に掲載のデータから作成したグラフです。ウェルス・ファーゴを除く4行で純営業利益が減少、特にバンク・オブ・アメリカは前年同期比で66%の減少となり、厳しさが伺える結果となっています。背景には、欧州危機や規制強化の動きで市場取引の収入が落ち込んでいる上、中堅企業などでの資金需要発掘の動きがあるものの、需要は鈍く、大きな利益に結びつきにくい状況になっているなどの要因があるそうです。
 そして、リスクを嫌った企業や投資家が金融商品への投資を手控え、預金を増加された結果、FDICの対象金融機関の預貸率が大きく低下しています。右図は、米国の預金保険機構に当たるFDIC(Federal Deposit Insurance Corporation)のホームページのデータから作成したグラフです。2008年以降、急速に預貸率が低下、米国民や企業の預金志向が高まっていることが判明しました。因に、FDICが預金を保証する金融機関数は、2000年には1万を超えていたものが、継続的に減少、リーマン・ショック以降は減少ペースを高めており、2012年第1四半期現在で7304にまで減少しています。
 米国の預貸率減少に関する記事が2012年7月19日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『米金融大手、陰る収益力。預貸率低下、安全志向の代償』です。以下引用文。
 『【ニューヨーク=西村博之】米金融大手の2012年4〜6月期決算がほぼ出そろい、08年の金融危機後に安全志向を強めてきた米金融機関大手が、成長力・収益力の低下などの"代償"に直面する様子が鮮明になってきた。融資低迷で預金と貸し出しの割合を示す「預貸率」の低下が際立ち、余剰資金が利益を圧迫する構図だ。欧州危機や雇用回復の遅れで米経済に影が差す中、現状が続けば企業の経営活動の停滞を招き、景気の下押し要因となる可能性がある』
私は、預貸率の低下は、景気を反映したものであり、これによってさらなる景気悪化をもたらすという原因とはならないと考えています。むしろ、欧州の金融機関が恒常的にオーバーローンであり、経営の維持には市場での資金調達が不可欠となっている状況とは異なり、金融機関としての健全性はむしろ高いといって過言ではありません。むしろ、米国、中国経済の先行きにも不透明感が高まっている最中、預貸率の低下は、金融機関のリスクに対する許容度を高めていることを意味しています。株式市場等のリスク市場へと資金が流れにくい状況であるとはいえ、今後の経済情勢を見極める必要がある段階であり、この時点で米銀が流動性を選好するということは当然の姿であるといえます。

2012年7月23日月曜日

明暗の分かれたマイクロソフトとグーグル

私は、マイクロソフトのことが好きではありません。独占禁止法違反をして、インターネットブラウザの先駆けであるNetscapeを完全に駆逐、世の中に存在する9割のパソコンがマイクロソフトのOSを搭載するというとんでもない事態をつくり、コンピューターウィルスを蔓延させる結果となりました。私のパソコンライフの多様性を完全にぶち壊したのが同社であり、いつも同社に対してはやや批判的な対応をしています。しかし、ウィンドウズ搭載のパソコンは、仕事に必要であることから、やむを得ず利用しているのが実情であり、このブログで作成しているグラフのほとんどがエクセルで作成されたものです。
 しかし、プライベートでは、ウィンドウズパソコンは、滅多に触ることはなく、ソニーのウォークマンのデータを管理する時や音楽をインストールする時に少しばかり使う程度です。もっとも、ウォークマンの接続相手は、ソニー製のブルーレイレコーダーがほとんどであり、2012年7月22日のブログで紹介した通り、これからの音楽データはクラウドベースのサービスであり、Music Unlimitedには大きな期待を抱いているところです。結果、プライベートでのパソコンライフでのマイクロソフトのウェイトはかなり下がっており、9割程度がMacで対応しているところです。ところで、Macで何をしているかといえば、iTunesでiPhoneやiPodのデータの管理は当然として、日々のデータの作成、ウェブ検索、そしてこのブログの作成をしている次第です。そして、iTunes以外の部分の核にあるのがグーグルです。同社が提供する検索エンジンは毎日欠かさず使用、ブラウザソフトのChromeも素晴らしいと思っています。ややグーグルに踊らされているという感は否めませんが、これも時代の流れです。そして、個人的な情報は一切入れませんが、クラウドベースの(グーグル)ドキュメントも日々進化しており、このブログもグーグルが提供するBloggerを使用しています。結果として、私のパソコンライフは、マイクロソフトがシェアを落としつつも、現状維持を続けていく中で、アップルの存在感が増しながら、やはりグーグルを使っているかという印象です。残念ながら、この中に、日本のメーカーは存在せず、米IT業界の巨像であるアップル、マイクロソフト、そしてグーグルに支配されているのです。
こうした中で、マイクロソフトの業績に暗雲が立ち込めるという事態が生じており、ITの時代に変化が生じるのではないかと期待しています。買収したネット広告事業の減損処理が原因ですが、マイクロソフトが上場以来、初の赤字決算を出したようです。一方、グーグルは増収増益となっており、明暗を分けるという結果となりました。2012年7月20日日本経済新聞夕刊にマイクロソフトの決算に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『マイクロソフト、上場後初の赤字、4〜6月、買収で減損処理』です。以下引用文。
『【シリコンバレー=岡田信行】米マイクロソフト(MS)が19日発表した4〜6月期決算は、最終損益が4億9200万ドル(約387億円)の赤字(前年同期は58億7400万ドルの黒字)となり、1986年の上場以来、四半期ベースで初めて赤字となった。2007年に約63億ドルで買収したインターネット広告会社の「のれん代」の減損処理したことが響いた』
 これを除いた決算は特段悪いところはないようですが、アップルの躍進と忍び寄るグーグルとは異なる結果となり、スマートフォンなどへの対応の遅れが影響しています。しかし、年内には、ウィンドウズ8、新しいオフィス、そしてタブレット端末の販売など開始、マイクロソフトが出遅れていた分野での巻き返しが、どの程度、消費者に受け入れられるかが、今後の業績を左右すると考えられます。因に、ウィンドウズ8は、会社での導入は進まず、もっぱら個人ユーザーでの導入にとどまるのではないかと予想しています。特に、日本企業の現場ではXPの負の遺産を未だに抱えており、ウィンドウズ7への対応で精一杯だからです。ウィンドウズ8は、あくまでスマートフォンへの対応であって、企業の業務パソコンをターゲットとしたものではありません。スマートフォンの競争で、アップルとグーグルの闘いに入る隙間はなく、マイクロソフトのウィンドウズフォンは失敗に終わると思っています。上図は、グーグルとマイクロソフトの売上高の推移を示したものです。グーグルが着実に売上高を伸ばしているのに対して、マイクロソフトはブレが大きいという印象を受けます。これは、マイクロソフトの売上高がOSやオフィスの新バージョンの発表と連動していることに起因しているからです。昨年当たりから始まった、IT業界の変化の結果が、年内もしくは来年中には必ず出ます。その時、日本企業が蚊帳の外にいる事態はどうしても避けたいところです。

2012年7月22日日曜日

ソニーのMusic Unlimitedに大感激、iOSにも対応

ソニーのクラウドベースの音楽配信サービス、Music Unlimitedがサービスを開始しました。同サービスは、月額1,480円の定額で1,000万曲もの音楽データを聴くことができる音楽のストリーミングサービスです。アップルのiTunesに対抗する有力な競争相手になると考えています。アップルも、現在のiTunes、iTunes in the cloudに加え、iTunes Matchを年内には日本で開始するそうですが、ソニーとアップルが提供するサービスのコンセプトはやや異なり、直接の競争とはなりませんが、どちらのサービスも業界の活性化つながる上でプラスでしょう。
ところで、Music Unlimitedは、アンドロイドOS搭載のウォークマンであるZシリーズに対応しているとのことで、早々にユーザー登録し、専用アプリをダウンロードしてみました。そして、今、はまっている"Glee"の音楽データをダウンロードし、ウォークマンのZシリーズで音楽を聞きながら、このブログを書いています。素晴らしいの一言です。音質などは、私が聞く限りでは、全く問題なく、アルバムを指定した場合、一曲聴いている間に、次の曲のデータが自動的にダウンロードされ、待ち時間は全くなく、連続して楽曲を楽しむことができ驚いているところです。今は、回線速度の速い屋内でのWi-Fiの接続ですので、外出時、3G回線を使用した場合、同様のスピードで体現できるかは不明です。実際にやってみないとわからないところがありますが、LTEになった場合は、屋内外での回線速度の差はないということになります。また、ホームページによると、ウォークマンのZシリーズの場合、音楽データを一時保管することができ、常時ストリーミングにて対応する必要はないそうです。まだ、機能を使いこなしていないので、どのようにすれば一時保管ができるのかは不明ですが、私の勘違いがなけば、このウォークマンはかなり使えるデバイスへと変身することになります。
右の写真は、ウォークマンのZシリーズにおけるMusic Unlimitedのトップメニューです。これからどんどん使っていって判明するのですが、使いにくかったMoraとは違い、なかなかのものあるでと直感的に感じました。右上の検索ボタンをタップすれば、検索画面が現れ、アルバム名、アーティスト名、曲名を入力すれば、目的の曲はすぐにみつかるようです。実際、"Glee"の楽曲もすぐにみつかりました。そして、驚いたのは、楽曲数です。"Glee"だけでも300曲以上がヒットしました。
また、これはソフトウェアのアップデートで改善することですので、今後、新たなサービスが付加されていく可能性は十分にあり、ビデオクリップ、そして映画なども自由に視聴することができればとは思っています。現時点では、データ量が大きくなり過ぎるという点で現実的ではないとは思われますが、回線速度は日々向上していることから、将来的にはないことはないと思います。
そして、Music Unlimitedについて調べていると、何とiOS向けのサービスを開始したことを知りました。つまりiPhone、iPodで、同サービスの利用ができるようになったのです。早々にiPodに専用アプリをダウンロードしたのが左の写真です。"FANATBIT"、"LINE"、WOWOWのオンデマンドサービス、GoogleのChromeの次にあるのが、Music Unlimitedのアイコン、"MUnlimited"です。今の瞬間は、iPodで"Glee"の楽曲を聴いているところです。私の聴く能力もあり、ウォークマンとiPodの差は区別できませんが、本当にゆっくり音楽を楽しみたいのならば前者、気持ちをアップテンポにしたいのならば後者、と勝手ながら判断しました。
ソニーは、有力なコンテンツを持っている数少ない日本の企業です。この資産を生かすことが、ソニー復活のカギです。iOS向けサービスの開始こそが、新たなソニーの出発点になると思います。
このブログの前半部分を書いた翌日に、iPhone3GSでMusic Unlimitedを屋外で試してみました。驚いたのは3G回線での楽曲データのダウンロードは非常にスムーズで、ストレスなく、"Glee"のシーズン1のアルバムを丸ごとダウンロードに成功しました。圧縮方法に工夫があるのか、音質も問題ないですし、スピードには驚きました。その時が、私の音楽ライフが大きく変化する一瞬だったと、後で回想するかもしれませんね。
 ところで、Music UnlimitedのiOSへの対応は、ソニーとアップルの融和ではないかと考えています。通常、iTunesを通じた課金にしかゴーサインを出さないアップルです。それをすり抜ける形での、今回のサービス開始です。アップルの宿敵、サムスン電子を駆逐するために、アップルとソニーが手を組んでもおかしくはないです。

2012年7月21日土曜日

3ヵ月連続で減少する米小売売上高

 米国の家計による消費支出は、世界経済の機関車役ともいえる存在です。中国経済の拡大に伴って、中国の消費支出が活発化、米国経済の代わりは無理としても、補佐役にまで昇格するものと期待されますが、実態は異なります。中国経済は、異様な構造をしており、固定資本形成に依存する割合が極端に高く、GDPの約5割も占めるともいわれています。今後、ここ数年、中国で実施された投資から形成した工場設備より生産される財が、世界中に溢れ、世界経済をデフレへと追い落とす可能性は十分にあります。米国だけの消費需要では賄い切れないのが、中国の工場設備のストックであるといえます。
一方、わが国は、消費需要が慢性的に弱いと言われています。中国に抜かれたとはいえ、依然として、日本は、世界第3位の経済大国です。今後、急速に進む高齢化に伴い、必然的に消費性向が高まり、世界経済の成長を引っ張るまで存在感が高まればと期待しています。既に、その兆候はあり、貿易赤字となる月が多くなっており、ある意味、海外諸国からみて魅力のある日本市場へと変貌しているところがあります。もっとも、わが国では、所得収支の黒字幅が大きく、経常収支は赤字が定着するにはまだまだ時間を要するとされています。財政赤字が大きいことから、経常収支の赤字化は避けたいところですが、世界経済にとって魅力のある市場となることは、政治的な影響力を行使することもでき、マイナス面ばかりではないと考えています。上図は、日米の実質GDPに占める消費支出の割合を示しています。米国は2001年より上昇傾向にあったものが、2009年にピークを迎えた後、2011年では2009年の水準を上回っていないことが分かります。一方、日本の場合、2002年より低下傾向にあったものが、2009年に大きく上昇、2011年時点では2009年のピークを下回っているものの、比較的高い水準にあるといえます。日本の消費支出は、まだまだ増加する余地があり、貿易赤字が恒常化する可能性は十分にあるといえるでしょう。
 こうした中で、米国の小売売上高が、米商務省より発表されました。3ヵ月連続で、前月を下回っており、雇用情勢の悪化懸念から、家計が消費を抑制する傾向が高まっています。米国の消費活動に関連して、2012年7月17日付日本経済新聞夕刊に『米消費失速、景気に影。小売売上高、3ヵ月連続で減少。成長予測引き下げ』の題目の記事が掲載されていましたので紹介します。以下引用文。
 『【ニューヨーク=西村博之】米国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費が勢いを失い、米景気への懸念が一段と強まってきた。16日発表の6月の小売売上高(季節調整済み)は2008年以来、初めて3ヵ月連続のマイナスを記録。米国の金融機関は16日、4〜6月の成長率予測を相次ぎ引き下げ、年率で1%前半へ下方修正した。
 米景気への懸念から、16日の米国債相場は上昇(金利は低下)。10年国債の利回りは一時1.44%と、過去最低の1.43%に迫った。
 「市場は、小売売上高の数字を米景気が後退局面に入る兆しと受け止めた」(キャピタル・エコノミクス)
 米商務省が16日発表した6月の米小売売上高は前月より0.5%減り、「0.2%増」を予想していた市場を驚かせた
 16日の米株式市場は軟調、下落幅は小さかったものの、ニューヨークダウ工業株30種平均、ナスダックともに前日比でマイナスとなりました。翌週の17日の同市場の寄り付きもマイナスで推移しており、米国の株式市場は景気減速に対してネガティブに反応しているようです。ユーロの独歩安が進み、輸出により経済を引っ張るという当初の目論みはすでに破綻しています。合計すれば、世界第2位経済規模を誇る欧州経済が足を引っ張る形で、米国の輸出が思うように伸びず、結果として米国の雇用情勢が改善しないとも捉えることができますが、そもそも巨大な米国経済自身が輸出により成長を持続させることに限界があるといえます。米国経済は、財政支出による景気浮揚には限界があります。それは、財政赤字の拡大が問題視されているからです。ならば、オバマ大統領が主張するように、富裕層への課税強化が、この呪縛から脱却する唯一の手段かもしれません。

2012年7月20日金曜日

相次ぐ家電量販店の合併と消費者余剰、社会的余剰

私は、仕事帰りに最寄りの駅の近くにビックカメラがあることから、一番利用している家電量販店はビックカメラです。先週もブルーレイレコーダーに接続する外付けハードディスクを購入したばかりです。また、今、使っているパソコンもビックカメラで購入したものです。しかし、家から車を使って一番近いのはケーズデンキですので、比較的高い価格のものは、ケーズデンキで買っています。薄型テレビ、ブルーレイプレーヤー、ブルーレイレコーダーは全てケーズデンキで購入し、今はデジタルライフを満喫しているところです。因に、業界大手のヤマダ電機は、私が住んでいる地域では、駅からは遠い上、車で行くにも不便な場所にあることから、ここ数年は利用せず、つい最近ことですが、ヤマダ電機の有料会員から脱会したばかりです。時間にゆとりがある方々は、価格交渉などして色々な量販店を使い分けることで、最安値で電器製品を購入することができますが、常に時間に追われている者にとってはやはり地理的な利便性を求めるところです。
しかし、全く価格交渉をしていない訳ではないのが、私のデジタルライフです。ここで購入価格として参考になるのが、価格.comが提供する価格とレビューで、最終的にはアマゾンなどのネットショップで購入しているケースが多々あります。アマゾンは家電量販店とはいえはいえないカテゴリーの会社ですが、在庫が豊富にあり、入荷スピードも非常に速いことから備品やCD、DVDなどを中心にアマゾンはかなり利用していると思います。データの裏付けがないでのすで、私の主観となりますが、家電量販店の脅威になっているのは、家電量販店同士の競争ではなく、アマゾンなど無店舗経営をしている業態ではないでしょうか。
 ここへきて、家電量販店どうしの合併が相次いでいます。量販店同士の激しい競争は認めるところですが、それは消費者にとってプラスであり、消費者余剰の拡大につながるからです。しかし、余りに巨大となった企業は逆に独占状態が進むことで、どこかで消費者余剰が減少しているケースがあると感じています。米アップル社は、他を圧倒する独占的なブランド力をもって世界を席巻しており、毎期、稼ぎ出している膨大な純利益はそれを物語っているともいえるでしょう。アップルは過去にも独占禁止法違反まがいのことを度々しており、その場合は、消費者余剰ばかりか、社会的余剰が減少、死過重が増加することとなります。上図は、独占による社会的余剰の減少を示したものです。社会的余剰とは、限界費用の上で、需要曲線を下回る部分です。独占企業は、自らでもって生産を調整することができます。社会的余剰が最大となるのは、均衡点E、価格P、数量Xの時です。しかし、独占企業は、社会的余剰よりも生産者余剰が増加する均衡点E'、価格P'を選択し、数量X'で生産量を決定するのです。
 一方で、製造業にとって家電量販店での販売は、逆の立場になります。つまり、企業といえども量販店側は、製造業からみて消費者の立場となります。そして、自ら販売網を使って消費者余剰(この場合は企業利潤です)を拡大させようとします。結果として現れるのが、製造業間の過当競争です。パナソニック、ソニーの赤字拡大は家電量販店の消費者余剰拡大の結果ではないでしょうか。つまり、右図のように、競争力がない家電メーカーは、製品を買いたたかれることによって、限界費用を下回る均衡点E''、価格P''を選択し、数量X''で生産量を決定しているのではないでしょうか。製造業が極度に疲弊することは、雇用問題だけをとっても国民経済にとってマイナス面があります。消費者サイドに近い企業の力が得ることは、消費者余剰拡大という意味でプラスですが、マイナス面も十分にあることは考慮するべきでしょう。
今日の引用は、2012年7月14日付日本経済新聞朝刊の記事です。ヤマダがベスト電器の買収を決定したという記事です。記事の題目は『ヤマダ、ベスト電器買収を発表、「大手、将来3〜4社に」』です。6月にビックカメラによりコジマが買収されたばかりです。家電量販店は、競争時代を持続するのでしょうか。それとも寡占が進み、さらには独占へと向かうのではないか、そして、その背後にある製造業がさらに疲弊するのではないかという危惧があります。以下記事引用。
『家電量販最大手のヤマダ電機は13日、ベスト電器を買収すると正式発表した。ベストが12月末までに実施する第三者割当増資を121億円で引き受け、出資比率を51%に高める。ヤマダは家電量販店市場が縮小に向かう中、「全国チェーンは3〜4社になる」(山田昇会長)と指摘。ベストをのみ込み、シェア拡大を加速させる狙いだ』
私が住むエリアでは、ヤマダ電機の方がベスト電器よりも立地がいいことから、今、ヤマダ電機のある店舗が閉鎖、ベスト電器の店舗に集約するのではないかと考えています。これで、私にとって、あのベスト電器の立地条件ならば、利用してもいいかとは感じています。つまり、この合併は、製造業サイドの厳しさはともかく、少なくとも私自身にとっての消費者余剰は拡大することを意味しているのです。日本経済、特に製造業の将来を考えている常日頃です。この現象は私にとって複雑ともいえます。

2012年7月19日木曜日

過大な公共投資と深刻化する都市高速の老朽化問題

わが国は、1970年代前半に発足した田中内閣の元、日本列島を高速道路や新幹線など高速交通網で結び、地方の工業化を促進するとともに、過疎や過密、そして公害の問題を同時に解決する施策が実施されました。これは、いわゆる日本列島改造論というもので、長期間にわたって過剰な公共投資が行われ続けてきました。この結果、財政状況は著しく悪化し、名目GDPに対する政府の借金は200%超にも及び、世界の国々の中でも最悪の水準となっています。
 そのつけを払うため、消費税が2014年4月に8%へ、2015年10月に10%へと順次引き上げられる方向で国会にて活発な議論がされています。経常収支が慢性的に赤字の国ならば仕方がないという考えも出てきますが、消費活動がそうでなくても弱い日本経済にとって、消費抑制的な税制はマイナスであるといえます。まずは税収増を目指すのならばならば、所得税の累進性の強化、国民総背番号制の導入による所得の把握を進めるべきです。そして、支出面では、公務員給与の年俸化を議論するとともに、公共事業のさらなる圧縮が求められるとろこです。
 もっとも、公共事業は毎年削減されており、名目GDPに占める割合は低下しているのが実情です。右図は内閣府発表の『国民経済計算』による、公的固定資本形成の推移を表しています。図からは公共投資は毎年着実に減少し、名目GDPに対する比率も低下傾向にあることが分かります。しかし、私の主張は、北海道、北陸、九州で新幹線を延長する整備新幹線の計画も白紙に戻すべきであり、新規に実施されるあらゆる公共事業を撤回してでも、公共事業の抑制を図るべきであるというものです。そして、公的機関が行う公共事業は、既存に存在するインフラの補修に重点を置いたものに留めるべきであり、新規のものは一切認めないという方針を打ち出してもおかしくはない水準にまで、わが国の財政状況は悪化していると考えています。
 こうした中で、都市高速道路の老朽化に関する記事が2012年7月16日付毎日新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。同記事から首都高速、阪神高速ともに開業から40年以上を経過しており、補修が必要な箇所が雪だるま式に増えているという実態が分かりました。記事の題目は『都市高速、要補修箇所13万カ所、老朽化、阪神4年で3.6倍』です。以下引用文。
 『全国に六つある都市高速道路で補修の必要な損傷箇所は約13万カ所に上ることが毎日新聞の取材で分かった。いずれも管理会社・公社も「すぐに大規模な道路や高架橋の損壊につながることはない」としているが、首都高速は4年間で約1.9倍の9万6600カ所(09年度)、阪神高速は約3.6倍の2万9000カ所(同)に急増。老朽化や交通量の多さから急速に痛みが進んでおり、補修が追いついていない状況だ(樋岡徹也)』
 急速な高齢化に伴い福祉・医療部門における人員不足が顕在化する中で、大切な補修とはいえ、これら部門に人員を割く余裕はないのが、わが国の現状です。しかし、私が住んでいるエリアでも、新しい道路の開通や下水道の整備事業が着実に進んでおり、公共事業の勢いにストップがかかっているようには思えません。全国には、6つの都市高速があるほか、全国の高速道路網を取り扱っている旧道路公団が保有する高速道路網、そして本州と四国を結ぶ本四架橋などがあります。これらの維持・管理費は、利用者の料金から徴収されますが、国道、県道、市道など一般の道路や架橋は国や地方の財政によって賄われることとなります。
 とろこで、私が好きな映画に、リチャード・ドレイファス主演の『陽のあたる教室』(原題"Mr.Holland's Opus")があります。教育予算の削減の元、最後には音楽と演劇の授業がカットされるという米国の教育現場の実情が描かれている、感動的な人間ドラマを綴った映画です。このまま行けば、わが国でも同様な事態が起こりうるのではないかと考えています。

2012年7月18日水曜日

知らなかったTIBORでの不正行為

LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)で不正行為が発覚し、続々と新たな事実が白日の下に晒され、世界の金融問題が如何に深刻化していることが分かってきました。やはり、欧米の金融機関は、短期金融市場での資金を取りにくい状況に陥っており、危機の根深さがあらわになっています。そして、2012年7月15日付山陽新聞朝刊に初めて知ったのですが、TIBORでも不正行為があったそうです。
 TIBORとは、いわゆる日本版のLIBORを指し、"Tokyo Inter-Bank Offered Rate"の略で、東京の銀行間取引金利です。この取引で、シティグループ証券、UBS証券において不正取引が行われていたことが判明、2011年12月16日付で行政処分がなされました。両証券会社ともに、一定期間のTIBOR及びLIBOR関連のデリバティブ取引(既往取引の履行に伴う取引等を除く)の業務停止命令と業務改善命令が出ました(詳しくは金融庁ホームページ)。多額の罰金が出てなかったのは実に残念なことです。このことから、LIBORに関する不正行為も最近になって巷を賑わせ始めましたが、金融当局はかなり前から事実を把握していたと考えてもいいと思われます。つまり、それが意味することは、LIBOR、TIBORに関する、この一連の不正取引がともに深刻な事態であるものの、LIBORの方が影響力が大きいということで、話題にもならなかったと思います。
行政処分の内容を読んでいると、シティグループ証券の場合は遅くとも2010年4月頃から、UBS証券の場合は遅くとも2007年3月頃から不正を行っています。不正の対処となったTIBOR(3ヵ月)は東京金融取引所において上場されているユーロ円金利先物取引の対象となっていることから、重大なことと認識、行政処分に至ったのでしょう。もっとも、英バークレイズは、2005年頃からLIBORに対して不正行為を行っていることからも、ロンドンシティでの手口が日本へと伝播、シティグループやUBSでの不正へと至ったのかもしれませんし、意外とLIBORとTIBORともにユーロ円が取引されていることから、金利差において違和感があり、発覚の原点となったかもしれません。米、英の金融当局も2008年には事態を把握しており、これを放置したことから金融機関の不正行為を助長した側面は否めないとのことです。上図は、TIBORレートの日本円とユーロ円3ヵ月の推移を示したものです。2008年9月のリーマン・ショックに遅れること、1ヵ月後にTIBORはピークを付けた後、大きく下落、2010年の後半には0.3%台前半ではり付いている状態が続いています。
 せっかく、TIBORの詳細な時系列のグラフが作成できましたので、2007年以降の各年(注)のイールドカーブのグラフを作成してみました。銀行間取引金利でイールドカーブという言葉を使うのはやや違和感がありますが、他に用語が思いつかなかったため、この言葉を使います。右図にみると、2009年のカーブは、他の年と比べて短期から長期までの開きが大きく、Steepであったことが読み取れ、前年のショックの余波が及んだことが分かります。ここで、2012年7月15日山陽新聞朝刊に『欧米銀にカルテル疑惑、ロンドン銀行間金利、不正操作問題』という記事が掲載されていましたので紹介します。私が思うより早く、既に賠償問題が発生しており、邦銀も被告として係争しているそうです。以下記事引用。
 『日米欧の大手銀行に対する訴訟も相次いでいる。米証券大手チャールズ・シュワブは昨年、07〜11年に購入した数百億ドルの金融商品に関し「不正操作で人為的に低い収益しか受け取れなかった』として、米バンク・オブ・アメリカやバークレイズなど11行を提訴した。三菱東京UFJ銀行や農林中央金庫が被告となっている係争もある。 米商品先物取引委員会によると、LIBORが影響を及ぼす金融取引の総額は900兆ドル(約7京円)超。世界の国内総生産(GDP)合計の10倍を軽く上回る額だ』
 LIBOR疑惑は、まだ全貌が解明されておらず、早急な真相究明が求められるところです。とろこで、金融市場、特にインターバンク市場では、金融機関同士の信用があってこその金融市場が成り立つのであって、相互の不信があれば取引は成立しません。これは、バブル崩壊後の金融危機の際、日本の金融機関の間で起こったことで、相手の金融機関の信用が信頼できず、短期金融市場にマネーが円滑に流れず、結果、中央銀行に頼った資金の融通により、日本の金融機関は救われたという経験があります。各国の大手金融機関が関わっていることから、英国のイングランド銀行(中央銀行)もとより、ECB、FRB、そして日本銀行等の金融当局の連携がうまくいかなかった場合、金融危機がさらに深刻化する懸念が出てきています。
(注)各年の6月末時点のデータを使用したもの。

2012年7月17日火曜日

ECB、政策金利の引き下げで進むユーロ安

私は、ユーロのMMFを少しばかり持っています。実は、外国為替の相場感、各国の金利の水準などを頭に常に入れておく必要性から、米ドル、カナダドル、英ポンド、豪ドル、ニュージーランドドルのMMFも保有しています。どの通貨もほぼ均等な割合で持っていることから、マイナス幅が大きい通貨は安く、そうでない通貨は高いということが、私のMMFのポートフォリオをみれば一目で理解できるようになっています。そした中で、ユーロのMMFのマイナス幅が大きくなるばかりで、やや打撃を受けているという印象を持っています。2012年7月16日午後8時47分現在(日本時間)で、ユーロの対円相場は、1ユーロ=96円32銭です。やや持ち直しているものの、一時は96円割れという事態も十分に予想されました。
 このユーロ安の進行は、ECB(欧州中央銀行)が、政策金利を0.25%引き下げ、過去最低の0.75%となったことを受けてのものです。同日、銀行の中央銀行に対する預け金の金利も引き下げられ、ゼロとなりました。しかし、英ポンド、米国、そして日本も金融緩和を拡大させており、欧州債務危機を背景としたユーロの独歩安という感は否めないところがあります。逆の意味で、今こそがユーロの投資のベストタイミングであるともいえますが、ユーロ相場が底割れする可能性も否定できないため、大きな投資は控えた方が望ましいと判断しています。私が想定している底割れの水準とは1ユーロ=90円であり、月に2度開かれる理事会で、ECBが政策金利の引き下げを継続的に行った場合、日本円との金利差の縮小から十分にあり得ると考えています。ユーロ諸国の物価水準が分かる詳細なデータがあれば、どの程度の水準でもってユーロ相場が底なのかは分かりますが、米国とは異なり、現時点では情報が極めて少なく、決定に至るには材料が少ないのが実情です。
右図は、対円ユーロ相場とECBの政策金利を推移を示しています。日本の政策金利はゼロを続けていることから、ECBの政策金利の上げ下げとユーロの相場は見事に一致しているのが図から読み取ることができます。2012年7月6日付日本経済新聞朝刊に、このECBの利下げに関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『欧州利下げ、最低の0.75%に、銀行の預け入れ0%、景気下支え』です。以下引用文。
『欧州中央銀行(ECB)は5日、政策金利である市場調節金利を0.25%引き下げ、過去最低の0.75%とすることを決めた。後退局面に入ったユーロ圏経済を下支えする。中国人民銀行や英中銀イングランド銀行も同日、金融緩和に踏み切った。世界経済の減速感が強まるなか、財政出動の余力は乏しく、低金利政策で景気のテコ入れを狙う。
【フランクフルト=赤川省吾】ECBのドラギ総裁は5日の理事会後の記者会見で、利下げについて「景気悪化のリスクが現実になったため」と説明。欧州景気を下支えする考えを示した。「適時、果断に行動する」とも語り、追加緩和に含みを持たせた』
仕方のない決断ではあると思います。しかし、日本の経験からいって、金融政策は引き上げ時に効果があって、引き下げ時には余り効果はありません。利下げは、景気浮揚の必要条件であっても、十分条件ではないからです。銀行の預け金の金利(預金ファシリティー金利)をゼロにしたことから、むしろ銀行救済を目的とした金融緩和ともとらえることができます。もっとも、互いに信頼がない状況では、銀行はインターバンク市場で資金を融通しません。同金利をゼロにしたところ、銀行は喜んで中央銀行に資金を預けると思います。もっとも、これは、ECBによる融資拡大の原資にもなるため、スペイン、イタリアなど南欧諸国への資金融通にはプラスに作用することになります。
 ドイツの毅然とした財政政策には感嘆するところがありますが、経済主体の期待心理が冷え込んでいる中で、景気浮揚にもっとも効果があるのは財政支出であって、金融政策ではありません。右図は、少し古いかもしれませんが、IS-LM曲線による説明です。縦軸を利子率r、横軸を所得Yとした場合、金融緩和(LM曲線の下方へのシフト)より財政支出の拡大(IS曲線の上方へのシフト)の方が、所得Yの増加幅が大きいことを図示しています。特に、国債利回りが低下している時こそがチャンスであり、ドイツの取り得る政策としては、もちろん適切なものへと投資されていることが前提となりますが、より積極的な財政政策をした方が妥当ではないかと感じています。失業率が低水準である中では、雇用情勢が逼迫しているかもしれませんが、南欧諸国からの労働者の受け入れを積極的に進めれば、それも可能です。
 日本のように、不要な道路や橋に多額の投資をする無節操な財政支出はせず、ここは再生可能エネルギーに限って、投資は抑制しないという施策を打つことはできます。ドイツは、既に原発の廃炉を決定しています。隣国の原子力大国であるフランスから電力を購入する方法もありますが、どうしても新たなエネルギー源が必要となってきています。ならば、この分野での公共事業にはある程度の賛同を得られるはずであり、将来の持続可能な成長にもつながることから市場による否定的な行動も限られるのではないかと考えています。ここはドイツの奮起に期待したいところです。

2012年7月16日月曜日

経常収支の黒字の減少と国内に回帰しない資金

私は、リーマン・ショック以降に外国資産を累投を利用し、徐々に積み増すという投資方法をとりました。同ショック以前は、もっぱら国内株式への投資を主体としていましが、円高の進行に伴い投資のチャンスであると考え、一挙に海外へと資金を移転しました。国内で滞留している資金はある程度はありますが、概算であるものの、7割程度が外貨建ての金融資産となっています。投資を開始したタイミングが良かったせいか、国内株式がほぼ壊滅している一方で、外貨建て資産はプラスをキープしている上、高い配当金・利金を得ているという状況が続いています。しかし、欧州債務危機が再燃した場合、米ドルやユーロ相場はさらに下落する可能性もあり、ギリシャ総選挙、スペインの銀行危機などのニュースは固唾をのんで観ている生活が続いています。
ところで、私が保有している海外の金融資産から得られた配当金・利金は、国際収支の統計からいえば、所得収支に含まれるものとなっています。貿易収支が2年連続で赤字となる可能性が高まっている中で、わが国が経常収支の黒字を持続しているのは、この所得収支の黒字が大きいからです。右図は、わが国の経常収支、貿易収支、所得収支の推移を示したものです。図からは2011年には、ついに貿易収支は赤字となり、所得収支が黒字幅が大きかったため、経常収支も黒字であったことが分かります。今後も、この傾向が続けば、近い将来、経常収支の赤字化も近いのではと考えています。
ところで、海外の金融資産から得られた配当金、利金はどのようになっているでしょうか。私の場合、投資先は、米国、英国、ユーロ諸国など先進国に限られており、これらの国々とは租税条約が締結されています。結果、投資国で課税された分は除かれた上で、合計で20%の源泉徴収の課税がなされ、一部が税金として国庫に収められています。残りの8割の資金は、その時に円へと転換されることなく、当該の通貨建てのままで、外貨建てのMMFへと投資され、再び海外へと向かっているのです。これは、私個人の資金運用での配当金・利金の流れと思っていましたが、2012年7月8日付日本経済新聞朝刊に同様な流れをしている所得収支の動きに関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『円安材料に傾く経常収支、円に戻らぬ所得黒字』です。以下引用文。
『経常黒字が減ったとはいえ、まだ8兆円近くあり、需給面では円高要因の方が強いようにも見える。だが、必ずしもそうは言い切れない。「所得黒字分がすべて円買いにつながるとは限らない」(日銀)からだ。
 例えば、外債から得た年金基金の利子収入や外貨建て投資信託の配当金は再投資される場合が多い。シティバンク銀行が10年10月〜11年9月の所得黒字を基に試算したところ、所得黒字のうち、外貨から円に戻った金額は4割程度にとどまるという結果となった。(中略) 所得黒字が円に戻らない背景には、長引く円高で日本企業の海外移転が加速している現状がある。「所得黒字の約3割を占める企業の海外直接投資から得た利益の半分が海外への再投資に使われている」(シティ銀のチーフFXストラテジスト高島修氏)からだ。しかも「輸出で得た外貨も海外投資に回す企業もあり、貿易黒字も円に戻っていない可能性がある」(為替アナリスト深谷幸司氏)という』


上図は、私が作成した所得収支の流れのイメージ図です。配当金(又は利金、利益)のうち、①は国内に貫流しており、円高の要因となっている一方で、②及び③の配当金は円高要因とはなっていないのです。国内経済の勢いがない中で、資金はあるものの、その資金が国内が有効に活用できないという現状があります。私も、0.8%の利回りしかない日本の国債は投資対象外ですし、相次ぐ減配、増資などを行っている日本企業に対しても、これ以上資金を投じる可能性は低いといえます。唯一あるとしたら、海外へ積極進出し、利益を得ている元気のある製造業だけです。リスクを負うことになりますが、円高が続いている今こそが、外貨建て資産への投資の絶好のタイミングだといえます。

2012年7月15日日曜日

国内ではじり貧、邦銀は海外市場で活路を

このブログでは、海外で活躍している邦銀についていくつか書いています。2012年6月14日付『貿易金融でシェア倍増、復活のみられる日本の金融グルーブ』のブログでは、欧州債務危機を背景に、欧州の金融機関が、貿易金融の分野においてアジア、オセアニア地域でシェアを落とす一方で、邦銀のプレゼンスが高まっていることを書きました。また、2012年6月24日付『モリブデン確保に向け、三菱UFJが融資』のブログでは、製造業が調達に窮しているレアメタルの分野で、三菱UFJなどがチリの公社へ融資する見返りに、モリブデンを安定供給するという条件を取り付けるなど、商社の独壇場ともいえる分野へ銀行が進出することに非常に驚きを感じました。そして、極めつけは、2012年5月2日付『イスラム金融と天然ガス』のブログです。このブログでは、イスラム金融に基づき三菱UFJと三井住友がブルネイにLNGを輸送用の船舶の購入資金を融資、エネルギー危機に苦しむ日本経済にLNGの安定供給先の確保をする上で重要な役割を果たしていることを記述しました。上記3つのブログは、いずれも邦銀の海外で活躍を示したものです。
 そして、ここへきて欧米の大手金融機関が一斉に格付けが大幅に引き下げられ、欧米の金融機関の体力が弱っていることが鮮明となってきました。三菱UFJがモルガン・スタンレーの普通株を保有し、連結対象となっていることでやや冷水を浴びせられている感はあります。しかし、ここで、市場から資金を調達するのではなく、預金に基づく潤沢かつ安定した資金を最大限有効活用することで、邦銀にとって海外市場でのビジネスチャンスが広がっているという状況が見えてきました。
 もっとも、この背景には、邦銀は、国内での貸出需要の減退、貸出金利の低下に加え、国債利回りの低落など、運用面での難問を抱えていることがあります。確かに、大手の邦銀は、国債利回りの低下により期近の決算では国債保有により多額の評価益を計上し、比較的好調な業績となりました。しかし、国債利回りの低下による利益計上は、既に限界が見えてきており、次ぎはないと考えてもいいでしょう。上図は、国内銀行貸出約定平均金利(新規、長期)と国債利回りの推移を示しています。ともに低下し続けており、直接みえてこない運用コストを考慮した場合、実際の利ざやはほとんどないともいえます。国内では儲けることができない邦銀は、収益を求めて海外市場へと再びトライするしかないのです。
 2012年7月10日付日本経済新聞朝刊に銀行収益の圧迫についての記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『企業の調達コスト最低、貸出金利1%割れ、カネ余りでも投資に慎重』です。以下引用文。
 『企業の資金調達コストの低下が止まらない。5月の国内銀行の貸出金利の平均は0.989%となり、1993年の統計開始以来初めて1%を割り込んだ。信用力のある企業が発行する社債の金利も相次ぎ1%を下回った。低金利でも、先行き不透明感から企業は借金して投資をすることには慎重なためだ。空前の「カネ余り」なのに、実体経済にはお金が行き渡りにくい状態が続いている。 国内銀行の6月の貸出残高は約400兆円。預金残高はこれを約200兆円上回った。預金の伸びが貸出の伸びを上回った結果、この差額は10年間で2倍に拡大した。 預金を元手に融資するのが銀行の本業だが、法人向け融資は5月時点で総額262兆円と、ピーク時の95年当時の7割未満にとどまっている。企業の資金需要が乏しいため銀行の手元に預金が積み上がる「カネ余り」となり、貸出金利がさらに下がる構図だ』
 「カネ余り」など贅沢な話です。欧州の金融機関は市場から資金を主に調達、倒産したデクシア(ベルギー)は3割程度しか預金で資金を調達していませんでした。BNPパリバ(仏)、ソシエテ・ジェネラル(仏)、バークレイズ(英)、クレディ・アグリコル(仏)なども4割か、それを下回る水準でしか預金の裏付けがないという実情があります。ここは、チャンスです。市場での資金の融通がタイトになっている中で、欧州の金融機関は身動きがとれなくなっているはずです。上記で示したように、国内市場には閉塞感があります。邦銀の世界市場でのビジネス展開は、ある意味、先行して進出している製造業の支援にもつながります。邦銀にとってせっかく訪れたチャンスです。逃さない手はないでしょう。

2012年7月14日土曜日

教育費負担の各国比較、運用難の日本で可能か

昨年、米国では、ニューヨークなどの大都市で教育ローン返済と就職難で苦しんでいる若者が、格差是正を訴える抗議デモを繰り広げるシーンがニュース番組で度々報道され、米国の教育ローンの厳しさを痛感しました。なかには1千万円を超えるローンを抱えた上、就職もできない状況に陥っている若者がインタビューに応じている姿が映し出されました。今、米国人のうち6人に1人が貧困層に該当する2万ドル以下の所得水準となっているとされています。一方で、米国の富の6割を保有する、上位5%の富裕層への課税問題がクローズアップされており、今秋の米大統領選でも争点となっています。私は、富裕層への課税がベストであり、この点においてオバマ大統領を支持しますが、巨額の財政支出により特定の企業へ公的資金を注入し、無節操に財政支出を拡大させた点には問題があります。しかし、米国の財政赤字は、そもそも富裕層への課税強化が実現されれば解決できるともいわれており、減税を訴える共和党の大統領はやや難ありという考えでいます。
 わが国では、昨今、育英制度の滞納問題がクローズアップされているものの、教育ローンで苦しんでいる若者が多くいるという話は余り聞いたことはありません(たまたま私の周囲にいないだけかもしれませんが)。米国とは異なり、日本では、大学の費用は親が出し、ローンを組ませてるなどして子供に負担を求めるという慣習は余りないようです。しかし、今後、所得の増加が望めない、現在の20代、30代の人々が子供を育て、大学の教育費の負担をする時代になれば、今の米国と同様のことが発生するのではないかと思っています。実際のところ、今でも高等教育の費用負担は着実に増加しており、私の周囲にも、子供の教育費に苦心している人々が多く、公的負担の拡充が求めれるとろこです。
 右図は、参照する場合、注意を要する総務省統計局の『家計調査』の教育費、食料品、交通・通信費、保健医療の項目別支出の推移示したものです。このグラフをみる限りでは、教育費負担は極端に大きくなく、むしろ食料品、交通・通信費が突出していることが分かります。しかし、これは全国の勤労者世帯のサンプルデータを平均したものであるため、教育費の負担が過小評価されるという結果となっています。大学に通っている子供のいる世帯と、そうでない世帯での統計を抽出し、それを比較する必要があると思いました。
 こうした中で、教育費の積み立てで優遇するという施策が打ち出されたようです。2012年7月8日付日本経済新聞朝刊に、日本の大学教育の家計負担に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『教育費積み立て優遇、利子や運用益、非課税に』です。以下記事引用。
 『政府は教育資金を積み立てる際に税制で優遇する検討に入った。積立期間中の利子や運用で得た利益を非課税にする案が有力だ。大学の進学などに備えた資産形成を促し、家計の負担を軽くする。祖父母の資金を若い世代に移転し、有効活用するよう促す狙いもある。今年度中に具体的な制度設計を検討し、早ければ2013年度の導入を目指す。(中略) 孫や子どもを受取人に指定した口座に対して、教育資金の積み立て目的である場合に限り、利子や運用益に対する課税を免除する。資金を引き出す際に、教育目的であることを証明する書類の提示などを求める案がある。親族が口座に拠出する際の所得控除など、資金を移転させやすくする方策も検討している』
 この施策の中心は、充実した年金給付を得ている現在の65歳以上の人々からの所得移転を促すことです。一方で、現在の運用環境を考慮した場合、運用益や利子所得への非課税は全く意味をなさないことです。10年物の国債の利回りが0.8%台であり、株価も戻る気配が全くない、現在のわが国では、資産運用による利益を全く出すことができないのが実情です。従って、資産を持っている高齢者から、そうでない現役世代への所得移転は急務となっており、これを教育に絡ませることで大義名分を得ることとなります。
 右図は、上記記事に掲載されていたグラフをそのまま転載したものです。わが国では家計の負担が50%を上回っており、米国、カナダ、イタリアと比べて大きいことに特徴があります。一方で、カナダ、イタリアは公的負担が大きいのに対して、日本と米国は低いものの、ほぼ同水準となっていることに目を引きます。米国のデータで注目されるのは、「その他」の部分に大きさです。これこそが教育ローンではないかと考えているとろこです。教育制度の拡充は将来の成長につながります。大幅な人口減少が確実となっている現在、若者一人一人の能力アップが、国の成長へと結びつくともいえます。
 教育資金の資産運用では、米国では529プラン、英国ではジュニアISAなどの制度があるそうです。これが成り立つ背景には、まともに機能している国債や株式の資産市場があります。私の資産運用も含め、20年以上も続く、超低金利政策の解除がない限りは運用環境がままならないのが実情です。年金基金も運用難に喘いでいる中で、バブル経済への対応に失敗した政府や日本銀行の政策当局者、そして銀行関係者は、今でも非難される立場にあるといえます。

2012年7月13日金曜日

野菜工場、植物工場が新たなビジネスへ

少し前までは、わが国の電気の供給は世界的にも非常に安定しており、コストを削減することや、エコを目指して企業イメージを高める以外には、製造業の製造現場に省電力を求めるという話はありませんでした。今は、省エネは国民一人一人に求められていることであり、日々の生活にも支障をきたす問題となっています。私は、電気の未来を夢見て電力会社への投資を進めました。つまり、石油やガス、そしてウランなどは資源は確実に枯渇しますが、形は変えて発電する方法は大きく変化するものの、最終的なエネルギー源は電気エネルギーであるという帰結は約束された未来であると考えていました。結果は裏目に出て、大損害を出し、配当もままならいない状態になってしまいました。
 政府も、長期的なエネルギー政策の転換も当然のことながら、短期的、つまり今夏の電気エネルギーの安定供給体制の確立を目指すことが求められています。もっとも、エネルギー政策は、国家の根本のなすことであり、米国の世界戦略もそれに準じたものです。米国ならば、エネルギーの確保のためなら、戦争を仕掛けますし、中国の外交もエネルギー戦略を基本に国家目標としています。その点、日本政府は、国家戦略としてのエネルギー確保についての認識が、他国に例をみないほど甘く、将来的に、この国に自分自身を任せてもいいのかどうか疑問に思っているとろこがあります。
 こうした中でも、電気を使ったビジネスが花開きつつあります。自動車産業の目玉である次世代の車は、ハイブリット車をさらに進めた電気自動車です。電気供給がおぼつかない状況での電気自動車の推進をいかなるものかと感じますし、この分野で遅れをとる可能性も出ています。また、最近では「植物工場」という新たなカテゴリーに大企業が進出し、市場拡大の可能性が出てきています。しかし、電気の安定供給がなされて初めて実現されるビジネスであり、これら新たな産業の活性化のためにも、電力会社や政府関係者は懸命な努力が必要とされています。
 今日は、電気自動車ではなく、「植物工場」「野菜工場」に関する話題です。「植物工場」とは、LEDなどを使用し、屋内で野菜を栽培するものです。『週刊東洋経済』2012年6月30日号に『大企業が続々参入、植物工場は儲かるか』の題目の記事が掲載されていましたので紹介します。記事の冒頭には、大和ハウス工業、日本GE、パナソニックなどの企業が、この分野に熱い視線を送っていることが記述されており、注目されている分野であることを認識しました。以下記事引用。
 『参入する企業は今のところ、実験や企業の宣伝と位置づけて取り組んでいるとろこが多い。
 サンドイッチチェーンを展開する日本サブウェイは10年に、政府の補助金を受け、東京・丸の内に植物工場を併設した店舗「野菜ラボ」を出店した。「店産店消」というコンセプトで、客席部分の中央に小型の植物工場ユニットを設置し、フリルレタスを育てている。工場の生産量は店舗で使用するレタスのわずか3〜5%程度。採算は到底合わないが、「サブウェイが野菜に関心を持っていることをアピールしたい」(マーケッティング本部・商品グループの岩崎麻佐子主任)。
 一方で、採算を確保するために本腰を入れて取り組む企業も出てきた。「北海道」などの居酒屋チェーンを展開するコロワイドは、2億円を投じて子会社・コロワイドMDの神奈川工場に植物工場(敷地面積246平方メートル)を設置。6月1日から稼働した。
 目的は、野菜の仕入れ価格を安定させること。ここ数年、猛暑や厳冬などで葉物野菜を中心に頻繁に価格が高騰。コロワイドもそのあおりを受けた』
植物工場のメリットは、仕入れ価格の安定以外にも、品質が安定していること、農薬を使用しないことなどがあります。右図は、総務省統計局発表の東京都区部の消費者物価指数の総合と生鮮野菜の前年同月比対比を示したものです。総合とは異なり、生鮮野菜の価格変動は激しく、大幅に下落する年もあれば、暴騰する年もあるというのが読み取れます。今後は、地球温暖化の影響もあり、気候変動がより一層激しくなることが予想されています。しかし、ここに矛盾があります。これが、温暖化を防ぐ上で求められる省エネとは逆の流れである工場内での野菜の栽培ということです。この矛盾を克服する唯一の方法は、発電が風力や太陽光といった自然エネルギーによりつくられたものであるということです。課題はあるものの、夜間にも電力の供給が必要なことから、「植物工場」には風力発電システムなどの併設がベストであると強く感じました。また、LEDの生産、風力発電システム、そして蓄電池などの分野への波及効果もあり、裾野が広い分野であると思います。

2012年7月12日木曜日

信用失墜するLIBORでの金利不正、金融立国イギリスの地位低下も

LIBORとは、London InterBank Offered Rateの略で、日本語では「ロンドン銀行間取引金利」です。これは、銀行などが店頭で提示している預金金利とは異なり、一般的には馴染みのないものです。しかし、影響力は大きく、世界の標準金利ともなっており、これが基準となって世界各国の短期金利が決定されている行っても過言ではないでしょう。日本でも同様なものがあり、コールレートなどが近いのではないかと思っていました。しかし、よくよく調べていますと、やや違うようですので、野村證券のホームページに掲載されている用語集から説明文を引用します。以下引用文。
『(LIBOR)とは、London InterBank Offered Rateの略。ロンドン市場での銀行間平均貸し手金利のこと。
株式・為替・金利などのデリバティブは、各々の原資産に関らず、必ずキャッシュフローに置き換えて価値を算出している。
その際のベースになるのが、LiborやSWAPである。なぜならば、スワップやデリバティブでの実務計算では、割引率(ディスカウント率)やリスクフリーレートなどの基本レートは国債の利回り等から求めるのではなく、LiborやSWAPから導出しているからである。英国銀行協会(BBA)により、日に一度発表されている』
割引率、リスクフリーレート、SWAPなどの金融用語が羅列されており、これを読んでもさらに分からないところがありますが、企業や住宅ローンなどの金利の基準となるだけでなく、デリバティブなどより広範な範囲で影響することが分かります。また、コールレートとの違いが分からないため、同用語集の無担保コールオーバーナイト物の説明を引用します。以下引用文。
『金融機関同士がコール市場において、担保なしで、短期金利を借り、翌日には返済する取引のことを「無担保コールオーバーナイト物」という。このときの貸し借りの金利を「無担保コールオーバーナイト物金利」と読んでいる。
なお、金融機関が仮に市中で資金調達できない場合は、金融機関は日本銀行に担保を差し出し、日本銀行より、資金調達をおこなう。このときの貸出金利が、基準貸付金利(かつての公定歩合)である』
もっと分からなくなりました。LIBORがOffered(提示)された貸出レートであるのに対して、コールレートは銀行営業日から翌営業日までを主要取引とする貸借レートである点に違いがあるそうです。
最近、新聞紙上や報道番組で賑わしているのが、英バークレイズによる金利不正です。もっとも、金利を提示する側、金利を応諾する側も金融のプロです。資金需給からみてofferされた金利水準に違和感がある場合、応諾したないのが当然の流れです。つまり複数行が関わっているということです。事実、金利不正がドイツやスイスの銀行を巻き込み、複数銀行による不正であることが判明してきています。2012年7月11日付日本経済新聞朝刊にLIBORの金利不正に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『金利不正、複数行で利益、Libor操作、深まる疑惑』です。以下引用文。
 『【ロンドン=上杉素直】国際的な基準金利である「ロンドン銀行間取引金利=LIBOR」の不正操作問題で、複数の大手銀行がデリバティブ(金融派生商品)を使って不当な利益をあげていた疑いが出てきた。大手銀は通貨や期間を絞り込んだうえで、虚偽の申告を繰り返してLIBORを有利な水準に誘導したとみられる。不正操作には英銀バークレイズ加え、ドイツやスイスなどの銀行の関与が疑われている。
LIBORは大手銀が短期の取引金利を自主的に申告し、それをもとに英国銀行協会が算出する仕組みだ。金利水準の不正操作は2005年ごろから、資産運用を担うトレーダーを中心に始まったと考えられる。
不正操作の舞台であるバークレイズでは露骨なやり取りがメールで交わされていたことが、英金融サービス機構(FSA)の調査で明らかになっている』
ここで思うのは、大和銀行ニューヨーク支店の行員による米国債の不正取引です。結果、3億4千万ドルもの罰金を課せられ、同行が海外が撤退するという事態を招いたことが余りに知られる事実です。邦銀が、LIBORの不正に関わっていないことを祈るだけです。仮に関わっていたとすれば、この不正行為に対する罰金は、3億4千万ドルでは済まされないことも考えなければなりません。上の表が示すように、LIOBORは世界の金利水準に影響を与えていることから、それを基に計算された企業や住宅ローンの金利を支払っている個々の主体に対して、不正に関わった金融機関は賠償金を支払う義務があります。各国金融当局は毅然とした対応が求められるところであり、関わった金融機関に対しては懲罰的に罰金を課す必要があり、1兆円、2兆円単位の罰金があってもいいのではないでしょうか。これで、イギリスの金融機関にとどめを刺すことができますし、ヨーロッパに金融市場の核が併存するということで、そもそもユーロの混乱をもたらした原因ともいえます。ロンドンのシティに対して、この機会に多額の罰金を課すことで、彼らを国際金融市場から撤退されるチャンスです。
バブル崩壊後、日本の金融機関は、ドル資金を調達する際に、市場金利より高いジャパンプレミアムを課され、苦しんだという経験があります。今度は、欧州の銀行に対するヨーロッパプレミアム、どちらかと言えばロンドンプレミアムを課す順番です。

2012年7月11日水曜日

機械受注統計と民間資本ストックの純減

昨年当たりから、民間設備投資に関してよく指摘されている事実があります。それは、減価償却が民間設備投資を上回り、民間の資本ストックが減少に転じたことです。長引く景気後退は、企業による設備投資の償却コストばかり増大させ、結果として企業収益を圧迫する材料となっています。典型的な例は、パナソニック、シャープによるパネル工場の過剰設備で、2012年3月期決算は、両社ともに大幅な赤字となり、今後の企業経営を大きくシフトせざるを得ない状況となっています。幸いなところ、シャープの設備は台湾の鴻海グループによって有効利用されることとなり、稼働率アップが期待されるところです。設備投資の増加は、直接的に最終需要が増加するという意味で、経済成長にとってプラスに作用するものの、無意味な資本ストックの蓄積は、企業収益の低迷をという結果をもたらすこととなります。企業経営者は、どのような設備が、今後の日本経済にとって不可欠なのかを認識し、海外へと進出を含め、集中と選択を見極める必要があると思います。
 こうした中で、内閣府が6月9日に2012年5月の機械受注統計を発表しました。同統計は設備投資の先行指数ともなるもので、今後の景気動向を先取りできる上で注目されています。2012年7月9日付日本経済新聞夕刊に、この機械受注統計に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『機械受注14.8%減、5月、基調判断は据え置き』です。以下引用文。
 『内閣府が9日発表した5月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」は前月比14.8%減の6719億円となり、2ヵ月ぶりに減った。前月に化学工業などで大型案件が集中した反動減が主因だ。内閣府は機械受注の「緩やかな増加傾向がみられる」とした前月の基調判断を保った。
 内閣府は「季節調整の計算など、技術的な要因で実態よりも弱い数字が出ている」とも分析した。ただ5月の減少率は市場予想(2.9%)を上回り、比較可能な2005年4月以降で最大の幅を示した』
ここでやや疑問に思ったのは、機械受注統計は何故前月比との比較で増減を判断するのかです。前年同月比での比較でいいのではないかと思い、右図を作成しました。前年同月比でも民需(船舶・電力を除く)は、前月の9.1%増から7.1%減へとマイナスへと転じており、2010年2月の4.4%減以来のマイナスとなっています。
 もっとも、これが景気の単純な先行指数であるだけならばいいです。しかし、機械受注はむしろ2009年末からは前月比でプラスを続けており、欧州債務危機が再燃する中でも、過剰な設備投資が行われている可能性も否定できない状況になっています。そこで、経済産業省発表の鉱工業生産指数の中の製造工業の稼働率指数の推移を追ってみました。リーマン・ショック後、大幅に下落した稼働率指数は、2012年に入ってからも、2005年=100とした指数で90台前半にとどまっており、同ショック直前の105超の水準を大きく下回っています。いくら、機械受注が強く、設備投資が今後順調に推移するという予想があったとしても、稼働率が上がらなければ意味がありません。無駄な設備は、結局、減価償却費を通じて企業の営業利益の減少をもたらします。日本国内には、付加価値が高いコアの部分だけを残し、海外への投資比率を高めることが大切です。空洞化が進もうとも、企業が倒産してしまえば終わりです。ある意味、この円高はチャンスです。海外企業の買収にしても、海外での工場立地にしても割安で行えます。まず、目先の収益の回復が日本企業に求められるところです。

2012年7月10日火曜日

中国経済、成長率8%を割込む可能性

中国経済に失速懸念が出ています。2012年第1四半期の実質経済成長率は8.1%と8%台ぎりぎりのとろこまで低下、同第2四半期では7%台半ばまで鈍化するものと予想されています。これは、輸出主導で成長している経済を、内需主導での成長へと転換し、さらなる成長を目論んでいたと思われる中国にとっては厳しい現実であると思われます。特に、この内需主導の経済成長が、消費活動が活発化しない中で、固定資本形成を中心としたものとなっており、結果として設備の過剰を生み、これが供給過剰をもたらすことで、実態はより厳しいものとなっていると推測されます。
 日本経済が高度成長を迎えていたころは、米国経済の規模は余りに大きく、オイルショック後に高度成長から中程度の成長へと移行した後でも、今のように自身の経済規模は相対的に小さかったと推測され、輸出主導の経済成長はある程度は可能であったのでしょう。しかし、中国の人口規模は余りに大きく、このままいけば経済規模も米国を上回る勢いがあります。やはり中国経済は輸出による成長は困難です。しかも、国民一人一人の所得水準も低いことから、消費が本格的に活性化するまでには、まだまだ輸出主導で成長を持続する必要がなのです。これは中国経済の抱えた矛盾ともいえるでしょう。
 『週刊エコノミスト』2012年7月10日号に『中国大失速』という特集記事が掲載されていましたので紹介します。まず、中国の実質経済成長率に関する予測です。記事の題目は『迫るGDP8%割れ、見かけより深刻な実態』です。以下引用文。
 『中国の2012年第2四半期(4〜6月期)のGDP統計が7月13日に発表される。その内容は大きく注目されそうだ。中国のGDP成長率は12年第1四半期(1〜3月期)まで5四半期連続で減速している。これが緩やかな減速では済まず、大きく失速する懸念が出ているからだ。
 欧米系金融機関のエコノミストが予測する中国の第2四半期GDP成長率は、ブルームバーグ集計によると7.3〜8.0%の範囲。第1四半期の8.1%を下回り、リーマン・ショック時の08年第4四半期(10〜12月期)につけた7%台に低下することも見込まれている。しかし、中国の現地金融機関エコノミストはより厳しい予測を立てている』
 海外のエコノミストよりも、地元のエコノミストの方が北京の政府関係者から情報を入手できる点で有利であること、中国国内の経済実態を把握していることで実情に即した見方ができるそうです。ならば、海外のエコノミストが付けた7.3%未満の成長率の可能性もあるのではないかと考えられます。中国経済に依存している日本にとってマイナスであり、企業業績の下ぶれリスクの可能性も否めないでしょう。
 また、中国の輸出に関する記事も掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『輸出が大幅鈍化、欧州向けの不調に加え、米国経済失速がリスク』です。期近のデータである12年1〜5月では、米国向けは14.4%増の伸びを高めたようですが、欧州向けは0.8%減のマイナスに転じたようです。以下引用文。
 『こうした輸出の減速により、中国では製造業の在庫が大きく積み上がった。たとえば、電機機械の在庫額は10年11月の前年同月比13.2%増から11年8月は23.4%増へ、繊維製品も同期間に3.9%増から29.6%増へと伸びが高まった。 これらの最終製品に続いて、「川上」にあたる化学繊維の在庫も、11年8月には前年同期比25.1%増であったものが同年10月には59.0%増へ、また、そのさらに上流に位置する鉄鉱石在庫についても、11年8月の11.6%増から12年2月には35.8%増と高まっている。 こうした在庫調整圧力の高まりを反映して、製造業の生産活動は停滞感を強めている。工業生産は12年4月には前年同期比9.3%増と伸びが鈍化したが、これは、09年5月以来、約3年ぶりの10%割れであった。このようななか、5月の工業製品価格(生産者価格)が前年同月比マイナス1.4%まで下落幅が拡大したことは、中国においてはいまだに製品需給が緩和状態にあり、生産調整が十分に進んでいないことを示している』
 中国経済が弱気へと転じている上、米国の雇用情勢に回復がみられません。2012年6月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比8万人増にとどまり、市場予想の9万人を下回りました。米国の失業率は8.2%と横ばいであったものの、高止まりしています。世界経済は、米国、欧州、そして中国という経済規模の大きい地域で減速傾向が高まっており、下ぶれリスクが高まっています。7月13日の発表が待たれます。

2012年7月9日月曜日

激突するサムスン電子と米アップル

韓国サムスン電子と米アップル社に共通するものといえば、両社がともにスマートフォン販売大手であること、そしてともに好調な業績を維持していることです。日本の電機メーカーの代表格であるパナソニック、ソニー、シャープなどが散々足る決算内容であったのに対して、うらやむような結果であり、今後も引き続き堅調な伸びを維持するものと予想されています。
ここで面白いのが、2012年1〜3月期の売上高で、韓国サムスン電子と米アップル社が拮抗していることです。右図は、両社の売上高、営業利益、純利益を示したものです。さすがに営業利益、純利益では米アップル社がファブレスの企業形態をとっていることもあり、設備投資、研究開発に割合が低いことから大きな開きがあります。しかし、売上高は、サムスン電子が400億ドル(注)、米アップルが392億ドルとほぼ同水準となっており、今後、どちらが勝者になるかが分かる基準となる決算期となっていますので記憶に留めておきたいと思っています。
 韓国サムスン電子の躍進は、スマートフォン分野では特に目を見張るところがあります。同社が販売する新型のスマートフォンであるGalaxy SⅢには、日本のガラパゴス仕様とも言われた「おサイフケータイ」にも対応していることに驚きを感じます。米アップルのiPhone4Sは、この点においてはやや出遅れているものの、同機能が世界標準規格が未だに決定していない中での標準装備は、サムスン電子の強さでもあります。右図は、2012年1〜3月期のメーカー別のスマートフォンの販売台数のシェアを示したものです。サムスン電子が1位、米アップル社が2位となっており、両社を合わせたシェアは50%超にも及びます。iPhoneの最新機種の先んじて、Galaxy SⅢを販売していることから、4〜6月及び7月〜9月期はサムスン電子がシェアを一挙に伸ばすことが予想されます。
 もっとも、両社は世界各地で訴訟合戦を繰り広げていることは一般にも知られています。これは、主力製品であるスマートフォンに関するもので、ジョブス氏の後を引き継いだクックCEOの元で和解の方向で収束する流れも一時あったのですが、最終的に和解交渉は決裂、両社は本格的な競争を繰り広げることとなりました。もっとも、このバトルで漁夫の利を得るのは日本企業のようです。因みに、私が持っているアップル社のMacBookAirにはサムスン電子製のSSDが搭載されています。Airには東芝製SSDが搭載されている機種もあり、どちらの製品のスピードが速いのかが話題になりました。新型のiPadでもサムスン電子製の液晶パネルからシャープ製への一部切り替えがあったようです。また、次期iPhoneの液晶ディスプレーは、イン・セル型のシャープ製が使用される噂があります。今後、どのような展開になるかは不透明感がありますが、米アップル社によるサムスン電子外しは露骨になるはずです。この中で、台湾の鴻海グループによるシャープへの出資です。日本企業と台湾企業(フォックスコン)と米国企業に挟撃される形で、サムスン電子が安定した収益を得られるかがみどころになります。
(注)サムスン電子の決算発表はウォン建てであり、ドル-ウォン相場により比較時点により相違する。

2012年7月8日日曜日

わが国での太陽発電の限界と期待される洋上風力発電

わが国では、東日本大震災を契機に、原子力発電に依存したエネルギー供給に関する長期計画に大幅な見直しが迫られています。大飯原発の3号機、4号機の稼働だけでも大議論の末、やっとのところで再稼働に至りました。これから50基にものぼる国内の原子力発電所の再稼働に関して一つ一つ長い議論をしている間にも、40年ともいわれる原子炉の寿命が順次過ぎていきます。このペースでは、再稼働する前に全ての原子炉を廃炉へとしなければならなくなるでしょう。いまや個々の原発の再稼働に関して議論を進める段階ではなく、総論として、稼働させるならば、稼働させる、稼働しないのならば、稼働しないという議論を進めていくことが必要な段階になっています
こうしいる間、再生エネルギーの対応状況で大きな変動が出てきています。再生可能エネルギーの買い取り制度などで、わが国の行政が後手後手に回っている中で、太陽光発電に生産トップであったシャープなどの企業がシェアを落とし、生産量でも中国、ドイツに劣るまでになっています。そして、設置容量でも後塵を拝し世界3位にまで順位を落としているのが、わが国の現状です。右図はIEA諸国の太陽光発電の設備容量を示したものです。力を入れているドイツが他を圧倒している一方、財政危機に見舞われているスペインの健闘が目を引きます。最近では、メガソーラーが新聞紙面、ニュース報道でよく話題になります。私が住む岡山県でも、利用されず放置されていた干拓地でのメガソーラー導入が期待されているそうです。
しかし、太陽光発電は、わが国にとって国土が狭く、夜間に発電できず、天候的にも左右される点で限界があります。これは世界的にも同様なことがいえます。右図は、世界の水力、原子力、風力、太陽光の発電能力の比較したものです。中東や北アフリカなどで本格的な導入が進めば、太陽光にも可能性があることは否定できませんが、最近になって開発が進んだ風力発電にもかなり劣るのが太陽光の発電規模です。今後の再生可能エネルギーの中心は、水力発電は既に開発されつくれていること、同発電は環境な面でマイナスであることから、伸びが期待できず、注目されるのはやはり風力発電ではないでしょうか。
 ここで、英国で、洋上風力発電に関して大きな動きが出ました。もともと、風力発電を地上で行う場合、健康被害などの問題が指摘されていました。風力発電が発する低周波音で体調を悪化させる住民の訴えや、先行して導入が進んだヨーロッパ諸国でも人が住んでいる場所から一定の距離をとらなければ、稼働できないという報道を以前観たことがあります。これに対して、洋上風力発電は、漁業等への影響があるかもしれませんが、期待される分野であるといえます。
 2012年7月5日付日本経済新聞夕刊に英国の洋上風力に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『英、洋上風力に13兆円、発電能力、原発30基分、雇用確保』です。以下引用文。
 『【ロンドン=松崎雄典】英国が官民挙げて世界最大の洋上風力発電事業に乗り出している。13兆円を投じ7000基以上の風車を沖合に設置し、3200万キロワットの電力を発電する。これを軸に2020年時点での英国の総電力需要の約3割を再生可能エネルギーでまかなう計画。英国は、裾野の広い風力発電事業を振興し雇用を創出するとともに、今後の国際規格作りも主導する見通し。日本企業も三菱重工業などが関連機器の納入などで参入に動いている』
 風力発電先進国のドイツよりも、海に囲まれている英国の方が沖合風力発電では有利です。右図は、世界の風力発電導入量の国際比較を示したものです。やはり、国土が広い中国、米国が1、2位を抑えていますが、ドイツは3位と国土面積に割に健闘、原発の廃炉を決定した同国の決意を感じされてくれます。英国はイタリア、フランスとほぼ同規模であり、日本はそれらの国々の3分の1に留まっており、如何に風力発電を軽視していたかがよく分かります。もっとも、1位、2位の中国、米国と比べて、日本や英国には有利な点があります。人が住むエリアから一定の距離を保つ必要がある風力発電の設置は、内陸部に産業の拠点がある米国や中国と比べて、国土の割に海岸線の長い英国、日本は、洋上風力発電設置に有利であり、毀損する国土が少ないのです。わが国も、英国と同様に洋上風力発電にこそ未来があると考えています。