『「ようやく"敵"と見なされなくなった。つい2、3年前は自分たちの仕事を取っていってしまう招かれざる存在だった。米Apple社のビジネススタイルは、このEMSやODMの業態の企業に依存しているとのことです。2012年1月29日付ブログ(題目『生産と在庫の循環』)で米Appleのビジネススタイルについて記述しました。上記の記事を読んだとき、実はAppleはファブレスという企業形態であることに気づきました。ブランドやデザインは米国の本社で決定されているものの、実際の製品の製造はEMSを業態としている企業に委託しているというビジネススタイルだということです。もっとも、ソフトウェアなどは米国で主に制作されていると思われますが、ハードは中国のEMS企業に委託しているのです。
こう笑うのは米系大手EMS幹部だ。EMS(Electrical Manufacturing Service)はパソコンや薄型テレビなどのデジタル家電の受託製造専門会社だ。メーカーが基本設計した製品の、部品 調達から量産を請け負う企業だ。
一方、ODM(Original Design Manufacturing)という業態もある。こちらも、受託先のブランドで製品を製造するが、基本設計まで含めたあらゆる製造プロセスを担う。基本設計をするかどうかがEMSとの違いだ。EMSやODMは製造に特化しているため自社ブランドは持たない。OEM(Original Equipment Manufacturing)は自社ブランドを持ちながら、他社の製品を受託製造する業態を指す。』
以下は、携帯電話・スマートフォン、コンピューター(ノートパソコンなど)それぞれの品目におけるEMS、ODM市場で取り扱われている製品の企業別シェアを示しています。ここで目立つのが、携帯電話・スマートフォンで12%、コンピューターなどで28%のシェアを握っているフォックスコンという名の会社です。米Apple社も生産を委託している企業で、薄型テレビなど民生機器では、そのシェアは40%にも達するそうです。
そこで、世界最大のEMSであるフォックスコンという名の会社を紹介する記事が週刊ダイヤモンドに掲載されていましたので引用します(注2)。以下引用文。
『フォックスコンというのはブランド名で、正式な会社名は鴻海精密工業という。英名でHon Hai Precision Industryだ。世界最大のEMSで、アップルのiPhoneやiPodのほか、ソニーの液晶テレビや任天堂のWiiなどの製造を請け負っている。フォックスコンは、注目の企業です。今後、継続的に企業ウォッチをしていくつもりです。しかし、EMSを手掛ける企業にブランド名が既についているというのは恐ろしいことです。いずれは、「あの企業に生産を委託しているのならば、某日本企業が提供するこの製品も問題ないですね」という会話が家電量販店の店頭でされているかもしれませんね。まさしく、日本のものづくりの危機です。
フォックスコンの強さの源泉は規模の巨大さだ。
従業員は2011年度中には100万人を超え、ものづくりの基本である金型の技術者だけで3万人を抱える。内陸部の高校の卒業生を丸ごと雇うといった方法で、若い労働者を確保している。
この規模が生み出すコスト競争力を武器に、次々と液晶テレビやスマートフォン、パソコンなどあらゆる家電の製造を世界中のメーカーから受託してきた。他のEMS、ODMを突き放すシェアを持つ。
売上高は7兆円に達しており、時価総額はソニー、パナソニック、シャープを超えている。世界で最も多くの電気製品を作っている企業なのだから、当然といえば当然だ。』
(注1)記事の題目は『EMSやODMが支配するものづくり、圧倒的なコスト競争力、製造専門企業を浸食』。
(注2)記事の題目は『従業員100万人超!脅威のEMS「フォックスコン」』。