2012年5月31日木曜日

好調なドイツ経済

ユーロ債務危機が深刻化する中で、ユーロ経済圏の失速懸念が出ています。しかし、その主要国であり、最も核となる国であるドイツではやや事情が異なるようです。これは、ユーロ安により、自動車メーカーなど輸出企業が好調であることが背景にあると考えられます。同国は、日本と同様に、輸出の増加が、独マルクを上昇させ、景気が失速するという過去のパターンがありました。しかし、現在は、ドイツ以外の国々に起因するユーロ安の恩恵を受け、鉱工業生産指数などはリーマン・ショック以前の水準まで回復しました。従って、ドイツ経済にとって唯一脅威となるのは、ユーロ安に伴う輸入物価、消費者物価の上昇です。今までのドイツ連邦銀行では、物価上昇を抑制するため、すぐに利上げというパターンでしたが、今はECBですので事情が異なります。
右図は、ドイツ連邦統計局発表の鉱工業生産指数、小売売上額指数、消費者物価指数、ifo景況感指数を示したものです。2005年を100とした指数で、小売売上額指数以外はリーマン・ショック以前の水準にまで回復しています。このうち、消費者物価指数は、経済にとって悪影響をもたらす要因であり、かつてハイパーインフレーションで苦しめられたドイツにとって最も懸念する材料といえるでしょう。しかし、EU圏内の成長率はゼロであり、債務危機が深刻化している中での政策金利の利上げはほぼ不可能なことです。幸い、ここのとろこ原油価格は下落、トウモロコシなど穀物相場も軟調化しており、ドイツ経済にとってプラスとなる要因となっています。
こうした中で、ドイツ企業に関する面白い記事が『週刊エコノミスト』2012年5月29日号に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『ドイツ、全企業の99%占める中小企業の競争力』です。以下引用文。
『ドイツでは全企業のうち約99%を中小企業が占め、ニッチな分野で高いシェアを持つ企業は「隠れたチャンピオン」と呼ばれる。株式公開せずに中長期的な成長を重視しながら、輸出企業として成功を収める企業が多いことが特徴だ。これら中小企業の貢献もあり、国内総生産の約5割を占める輸出は11年、過去最高を記録した。技術と経験の長い蓄積は、ドイツ経済の足元を簡単に揺るがせそうにない』
日本の中小企業も、円高という悪夢がなければ、世界に通ずるものもありますが、競争に巻き込まれない、ニッチ市場の開拓は、企業の成長に不可欠な要素です。通貨安といえども、この中小企業の姿は、ドイツ経済の躍進へとつながっています。もっとも、これがドイツ経済の生産性と他のユーロ諸国との生産性格差を生んでいることも否めません。ドイツ企業が絶好調さを持続すれば、逆にドイツがユーロから離脱しない限りは、ユーロ債務危機の問題は解決できないかもしれません。

2012年5月30日水曜日

わが国の完全失業率と有効求人倍率の推移

29日、厚生労働省から有効求人倍率が発表されました。2012年4月の有効求人倍率は、前月から0.3ポイント上昇の0.79倍となり、雇用情勢にやや明るさが出てきています。有効求人倍率の底は、2009年7月、8月、9月の0.43倍であり、この数値を見る限りでは日本経済はかなり良くなっているといえます。一方、総務省統計局発表の完全失業率は、前月から0.1ポイントの悪化で、4.6%となっています。双方が逆の動きを示しており、両者の統計調査方法の差を理解する必要があることをいつも痛感されてくれる統計データであると感じさせてくれます。因に、景気動向指数では、有効求人倍率は一致系列、完全失業率は遅行系列に該当し、完全失業率が景気の変動に対してやや遅れる傾向があることを示しています。
右図は、厚生労働省と総務省統計局のホームページ掲載のデータに基づき作成した完全失業率と有効求人倍率の推移を示したグラフです。やはり、2008年9月のリーマン・ショックの影響が大きいことが一目で分かります。このブログを書いて頻繁に出てくるのが「リーマン・ショック後」という言葉です。やや使い過ぎの感はありますが、ご了承下さい。リーマン・ショックの大きさは雇用情勢の悪化に現れているものの、2011年3月の震災ショックの影響は、完全失業率の上昇にややみられるものの、有効求人倍率については着実に改善しており、逆に着実な回復傾向にあるといえます。
 ここで、統計の話をします。完全失業率は実はサンプル調査であり、総務省統計局では「全国で無作為に抽出された約40,000世帯の世帯員のうち15歳以上の者約10万人を対象とし、その就業・不就業の状態を調査している」ものとしています。一方、有効求人倍率は全数調査です。地域にある公共職業安定所で取り扱った月間有効求人数を月間有効求職者数で除したもので、つまり有効求人倍率はサンプル調査ではないということです。確かに、有効求人倍率が0.43倍から0.79倍への上昇は着実な景気回復の証拠であるといえます。もっとも、就労を諦めた人などは職業安定所へは行きません。従って、全数調査であるものの、有効求人倍率は景気の実態からやや乖離する傾向もあります。それに対して、完全失業率は、サンプル調査であるものの、就業を諦めた人なども対象になる可能性もあり、実態に近い調査であるともいえます。そして、この完全失業率が、2011年8月、9月の4.2%を底に、期近の4月で4.6%とやや悪化していることが気になるところです。景気変動に遅れる統計であるものの、この当たりは、欧州債務危機、円高の影響が否定できないともいえるでしょう。両者の統計調査のくせを理解した上で、取り扱うことが大切であると思います。
ここで、有効求人倍率の地域的な差をみてみます。右図は地域別の有効求人倍率を2011年4月と2012年4月で比較したものです。全国が0.62倍から0.79倍に上昇しており、全ての地域で改善がみられます。もっとも、地域別にはかなり差があることが認められます。東海が既に1倍を超えている一方で、北海道(0.58倍)、九州(0.65倍)はともに低い水準にとどまっています。北海道はやや納得できるところがありますが、九州は自動車などの製造業が集中立地していることが逆にあだになっていることも考えられます。詳しい調査が必要ですね。

2012年5月29日火曜日

下げ止まらぬ土地価格と失敗した都市計画

先日、私は公図(14条1項地図)をみる機会がありました。そこで気がついたのは、道路が屈曲している部分があり、利用できる敷地の形状が整形地ではなく、やや形のいびつな形状(不整形地)をしているものが多くあることに気がつきました。土地の形状は、整形地の方が、利用効率が高く、不整形地は建物を建てることのできない部分の割合がどうしも大きくなります。以下の図は、それを示したものです。

道路が屈曲している2のケースの場合、1の場合と比べて、必然的に建物が小さくなり、土地の有効利用という面では劣後することとなります。交通接近条件や立地条件などが同一ならば、私の選ぶ土地は1のケースということとなります。国土が狭く、特に平野部が狭い日本にとって、土地を有効に利用することは、計画的な都市づくりをする上で重要な要素となる。
私は、過去30年程度の間に、ヨーロッパ、アメリカ、インドネシア、韓国などを旅行した経験があります。来年当たりにも短い期間となりますが、ヨーロッパへ旅行に行こうと予定を立てているところです。ところで、私は、列車を利用して旅行をケースが多い。そして、日本国内の各都市を訪れて気付くことがあります。駅を降りて、駅前をサクサクと歩いていると、どの都市にしても町並みに特徴がないことです。広告のネオンが目について、むしろ不快に思うことが多いです。そして、いつも残念に感じるのは、1,000兆円もの資金を費やして、つくった都市計画と思えないことです。確かに、ヨーロッパとは歴史の蓄積の差があるので、比較は厳しいのかもしれません。しかし、米国のニューヨークに行った時は、200年の歴史しかないのに、碁盤の目に近い道路が整備され、町並みが美しいという印象を受けました。
そして、致命的なのは、都市計画に失敗している上、住宅価格が国際的に比較して依然として高いことです。右表は、OECD主要国の戸建住宅の住宅価格を比較したものです。ロンドンが住宅価格がやや高めになっていますが、1ポンド=135円から現在では125円くらてまで下落していること、敷地面積が東京の200㎡に対して、ロンドンが400㎡と倍の広さであることから、やはり東京の住宅価格が最も高いことになります。過度な円高が進んでいるという関係もありますが、この点からも東京、そして日本全国の住宅価格が下落しているのはやむを得ないという気がします。
上表は、国土交通省が発表している地価公示の推移を表しています。日本の土地価格は、リーマン・ショック後は再び下落へと転じていることが分かります。今後、継続的な人口減少が止まらないわが国にとって、さらなる土地価格が下落は確実視されている中で、私の住んでいる周囲でも農地が埋め立てられ、住宅の建設がどんどんと進んでいます。空き家の数は、30%くらいあると聞いています。人口減少、継続する宅地供給、国際的に高水準な土地価格、この3つの要素を考えた場合、日本の土地はまだまだ下落する余地があると思います。

2012年5月28日月曜日

VWの躍進と、新車販売1億台へ

独フォルクス・ワーゲン(VW)の躍進が止まらないようです。2011年の新車販売台数は816万台と、1位の米ジェネラル・モーターズ(GM)の903万台に肉薄しています。VWのここ数年の増加ペースと長引くユーロ債務危機によるユーロ安を考えれば、近い将来、GMを追い抜き、年間新車販売台数で世界初の1,000万台を記録する可能性が出てきています。
『週刊東洋経済』2012年5月12日号に『世界1億台の争奪戦、日本車大反抗』の題目の記事に、独VWの躍進の秘密が記述されていましたので紹介します。
『18年までに年1000万台を売り、世界ナンバー1を目指すVWは、"車のモジュール化"で壮大な実験に着手している。自動車各社では目下、コスト削減のために部品の共通化を進めているが、共通化だけではすべての車が同じになってしまう。VWの場合、車をモジュール(複合部品)にして自由に組み合わせることで、「共通化」と「多様化」を両立させようという試みだ。
これに対し日本勢も同じような試みを始めたが、どれだけ根本から車造りを見直そうとしているのか、まだ見えない。トヨタもホンダも、12年の世界販売は過去最高水準になりそうだが、かつてのような存在感はない。一時の追い風に惑わされず、1億台時代に勝ち残る覚悟はできているか。日本の自動車メーカーにとって後に引けない闘いが始まった』
 日本の自動車メーカーが元気の良かった時代は、日本メーカーの技術や製造技術が世界的にも注目されました。しかし、今は、VWが世界の自動車に関する技術力アップに貢献している気がします。独車の燃費を劇的に向上させたTSI(Turbocharged Stratified Injection)も、VWが開発した技術で、ガソリン直噴(FSI)エンジンにツインチャージャーやターボチャージャーを組み合わせたものだそうです。また、販売台数が劇的に伸びている背景には、中国での販売台数が大きいことが寄与しています。VWの地域別販売台数のシェアでは、ドイツ本国が14%にとどまっているのに対して、中国が28%にも達しています。世界で新車が最も売れるのが、今の中国です。中国市場での躍進こそが同社の勢いであるともいえます。
 そして、2011年で8,000万台弱であった新車販売台数が2017年にも1億台を突破するのではないかという予想が出ています。日本が490万台から450万台へと減少する一方で、中国は1,900万台から2,800万台へ、米国は1,400万台から1,700万台へそれぞれと増加する予想が出ています。この流れの中で、電気自動車の充電方式において、日米欧で主導権争いが生じているようです。日本は、この分野では先行しており、国内を中心には既に1,400ヵ所の充電機が設置するも、米欧の巻き返しが激しく、日本の規格が世界標準とはならないという最悪の事態が生じるかもしれません。これに関して、2012年5月20日日本経済新聞朝刊に『EV後発連合、日本包囲網、米独8社、充電で独自規格』の題目の記事が掲載されていました。以下記事引用。
『【ニューヨーク=杉本貴司】電気自動車(EV)の充電方式を巡って、米ゼルラル・モーターズ(GM)や独フォルクス・ワーゲン(VW)など米独8社が、独自規格の採用を推進する方針を決めた。すでに日産自動車などがEVの販売を始めている日本勢は、充電方式で先行し、国内外での普及を目指している。エコカー分野の国際標準を握って世界をリードしたい日本勢にとって、思わぬ包囲網が形成された格好だ』
日本企業の潜在力は、やっぱり凄いのかもしれません。米欧の企業が既に警戒しているのです。2011年は、トヨタ自動車は、世界販売で3位にまで転落しているものの、技術力は、他の国々の自動車メーカーを凌駕している可能性は高いです。ハイブリッド車はややガラパゴス的な存在なのかもしれませんが、本命である電気自動車では、世界をリードするようになればと思っています。そして、米欧のメーカーの嫌がらせに屈せず、継続的な技術開発を期待したいところです。幸い、日産が仏ルノーの子会社であることから、政治的にもドイツを屈服させる可能性も否定できません。ここが正念場です。

2012年5月27日日曜日

本格始動するウィンドウズ8

ウィンドウズ8が今年中に発売されるそうです。現在、私の使用するパソコンは、ビジネスではウィンドウズXP、家ではウィンドウズ7となっていすますが、徐々にですがビジネスでのパソコンの利用がウィンドウズ7へと移行しているようです。もっとも、PCは依然として業務の中心であることに不動の地位にあるものの、パソコンからスマートフォン(以下「スマホ」)へと一部利用がシフトしているのは確実です。紛失、情報漏洩など、ビジネスでの本格的な活用には克服しなければならないハードルが数多くあるものの、この分野でのPCの地位は今後低下することが予想されています。
そして、出遅れてきたマイクロソフトが、ここへきてスマホ分野への本格参入が伺えるOSの発売を開始することがみえてきました。ウィンドウズ7の時点で存在していたウィンドウズフォンのOSは存在し、デバイスも発売されていました。しかし、ウィンドウズ8は、当初からウィンドウズフォンをメインターゲットとしたOSであることが、スタート画面からうかがえます。
右図はYouTubeからコピーしたウィンドウズ8のスタート画面です。現在発売されているウィンドウズフォンと似た画面であることに特徴があり、スマホ分野で先行するアップルやグーグルに対抗するべくつくられたOSであることが理解できます。因に、スタート画面は、ブロック状のもとの、ウィンドウズ7に似た画面の2つが準備されているようです。
2012年5月27日付日本経済新聞朝刊にウィンドウズ8に関する記事が掲載されていましたので早々に引用します。記事の題目は『「ウィンドウズ8」の狙いは?、クラウドで携帯分野に力』です。以下引用文。
『米マイクロソフトが今秋、新しい基本ソフト(OS)「ウィンドウズ8」を発売する。スタート画面をタイル張りのデザインに一新し、タブレット端末にも対応した。3年足らずでの更新は快走する米アップルや米グーグルに対する巻き返し、戦略ともいえる。(中略)
「さらに新OSはクラウドと連携して文章や映像、音楽なども利用できる。グーグルなどのクラウドはインターネットの閲覧ソフトを介して利用するが、ウィンドウズ8にはOS自体にクラウドの受け皿となる機能を組み込んだ」』
一部が、マイクロソフト社のCEOの発言となっています。携帯デバイスやクラウド化への対応は、今後、PCやスマホを利用するに当たって不可欠な要素となります。既に、iPhoneやアンドロイド携帯ばかりでなく、パソコンであるMacには備わっている機能であり、目新しさはない気がします。上のYouTubeの右端中央には一部しか表示されていませんが、同社が提供するクラウドサービスのSkyDriveのアイコン(?)が表示されていることから、クラウド強化がうかがえるところです。
しかし、私が、マイクロソフトに期待したいのは、サービスの向上ではなく、セキュリティーの強化です。パソコンを通じた個人情報の流出、ウィルス感染、フィッシング詐欺など絶え間なく起こっています。同社に求めたいのは、この点を如何に解決するかがユーザーの満足度アップにつながると思います。因に、私が知っている限りでは、現在の携帯電話のOSはiOS(iPhone、iPad)、アンドロイド、ウィンドウズ7ないし8とUnixのシステムは以下の関係にはあります。ウィンドウズNTとUnixの関係がよくわかりませんでしたが、iOSとアンドロイドは確実にUnixの系譜になります。Unixは、OSの核の部分であるカーネルがオープンアーキテクチャーであることに特徴があります。現在では、iOSにしろ、アンドロイドにしろ携帯でバイスへと機能拡張された結果、オープンな部分が減った可能性も考えられますが、Unixであることには変わりないでしょう。ウィンドウズの問題は、クラウドやインターフェイスのサービス提供ではなく、セキュリティーが如何に向上するかであり、これがない限りはウィンドウズの落日も近いかもしれません。

2012年5月26日土曜日

中国、インド、二酸化炭素排出量の増加で突出

IEAの調べで、2011年の二酸化炭素排出量は、前年比3.2%増の316億トンへと増加したことがわかりました。持続的な経済成長と二酸化炭素の排出による地球温暖化の問題は、現状ではトレードオフの関係にあり、今後、難しい対応が求められるところです。
2012年5月25日付日本経済新聞夕刊に、世界の二酸化炭素排出量に関する記事が掲載されていました。記事は、中国、インドの伸び率が高いことを示唆、先進国だけで総量規制をしても意味がないことを示しています。記事の題目は『世界のCO2排出量最高に、昨年3.2%増/日本は2.4%のプラス』です。以下引用文。
『【ボン(ドイツ西部)=竹内康雄】国際エネルギー機関(IEA)は24日、2011年に世界で排出された二酸化炭素(CO2)が、前年比3.2%増の316億トンに増え、過去最高を記録したと発表した。中国やインドなど新興国の排出量が世界全体の排出量を押し上げた。新興国の経済成長に伴う排出増にどう歯止めを掛けるかが課題になりそうだ。(中略)
世界最大の排出国である中国は前年比9.3%増で、7億トン以上増加。インドの排出量はロシアを抜き、中国、米国、欧州連合(EU)に次ぐ世界4位になった。中印など新興国は高成長を維持しており、企業の生産活動の拡大や、自動車購入など消費の伸びが排出増につながった』
この中で、わが国は、原発の停止問題が響き、先進国全体では減少傾向にある中、前年比で2.4%増加したようです。右図は、IEAのホームページに掲載されていたデータに基づき作成したものです。残念ながら2009年までのデータしか見つかりませんでした。最新のデータでは316億トンまで増加しています。OECD加盟国と非加盟国で比較した場合、2005年でCO2の排出量が逆転していることがわかります。途上国を含めた排出量の総量規制に関する同意が求められるところです。
もっとも、排出量の抑制を求め、新興国の成長を無理に抑制した場合、低成長と財政赤字に苦しんでい日米欧の経済は立ち行かないというのも事実です。成長と環境のバランスを如何にとっていくかが、今後の課題であるといえます。ユーロ債務危機の中、欧州のリーダーであるドイツで、脱原子力と再生可能エネルギーへの転換が積極的に取り組まれていることは幸いないことです。
一方、わが国は課題だらけです。京都議定書や鳩山イニシアティブなどで、わが国はエコの先進国であることが強く認識しました。その時、期待された世界に示せる役割も今では風前の灯火です。原発の再稼働問題、LNG価格の高止まりなど、現在の日本のエネルギー政策は難題が山積しています。ここは、政府のリーダーシップが求められるところです。

2012年5月25日金曜日

設備投資を引っ張るスマートフォン

私の生活は、パソコン中心の生活からスマートフォン(スマホ)へと移りつつあります。特に、簡単な調べごとをする際は、以前はパソコンを起動させ、Webで用語を検索していました。今では、常に電源が入っているスマホでの検索へと完全に移行しています。少し前までは、アップルのiPhoneがアドビのフラッシュに対応していないことから、参照することができなかったホームページも数多くありましたが、今はHTML5で書かれているケースが多くなったせいか、スマホに表示が最適化されたホームページが多くなり、スマホで読めないとことは少なくなりました。これに加えて、証券投資、クレジットカードの引き落とし、金貯蓄、飛行機の予約、宿・ホテルの予約など、様々なサービスをスマホ一台で受けることがことができるようになり、生活の中心にスマホがあるといえます。スマホの技術開発は、まだこれからです。30年以上も前に登場したパソコンとは違います。個人情報の流出など危険な面も否定はできませんが、一層の技術革新が期待される分野であるといえます。
そして、スマホに関連して、このほどシャープは、世界最大のEMS企業の鴻海グループの社長個人から1,300億円の資金調達を受けることが報道されました。この背景には、鴻海グループとシャープの両社の思惑が一致したことがあります。鴻海グループは、今年10月に発表されるであろうiPhone5の液晶パネルの受注をアップルから取り付けたいことを意図しています。一方、シャープは液晶ラインの増強に投じた転換社債の償還が、2013年9月に迫っており、やむを得ない状況から応じたと考えています。従って、状況的には鴻海グループ側有利に事は進んだことが予想されます。ここへきて、iPhone5には、タッチ機能をパネルに内蔵されるイン・セル型の液晶の搭載が見込まれており、シャープからの安定供給を目的としたものでしょう。アップルはサムスン電子と激しい競争を行っており、一連のサムスン外しの流れの中で、アップルの要求に鴻海グループが応えたのではないかと思われます。因に、イン・セル型の液晶は、従来のものより30〜50%も薄くできるそうです。
 2012年5月20日付日本経済新聞朝刊にスマホ関連の記事が2つ掲載されていましたので引用します。一つ目は『ファナック3割増産』という記事です。以下引用文。
 『ファナックは工作機械の動きをつかさどるコンピューター数値制御(NC)装置の生産能力を2012年中に3割増やす。山梨県の工場に生産設備を導入し、自動車やスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)向けに供給を増やしている国内外の工作機械メーカーに納入する。中核部品の能力増強で競争力の維持拡大を目指す』
スマホ需要の拡大を目論み、ファナックは、設備投資を行い競争力維持を図るようです。シャープの亀山第1工場(三重県亀山市)、多気工場(三重県多気郡)がiPhone用のパネルを供給するとともに、亀山第2工場もiPad用にパネルを供給しています。スマホなくして、電機メーカー、機械製造メーカーの成長はないのです。因に、iPhone4Sを、分割ではなく、一括で購入した場合、auでは7万円超にもなるそうです。パソコンの価格が下落する一方で、ブランド力のあるスマホは価格は高いという事実があります。もう一つの記事は、『パナソニック、中台大手に技術供与、スマホ用基板増産』です。以下引用文。
 『パナソニックはスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)向けに独自開発した多層基板の供給力を引き上げる。年内に自社の生産能力を2010年末に比べ1.8倍に増やすのに加え、基板の設計・生産技術を中国や台湾など複数の大手基板メーカーに供与する。独自開発した基板の世界シェアを2割から、15年には5割に引き上げ業界標準を握る考えだ。
 独自開発した多層基板「ALIVH」は、他社の多層基板より25%ほど面積が小さいのが特徴だ。スマホは限られたスペースの中で、大きい電池などを搭載する設計ニーズが強いため、基板の大きさを抑えるのが課題だった』
パナソニックも幅の広い事業分野を手掛けていることがよく分かる記事です。テレビ事業をソニーと共同で行うことで、両社の協力体制が確立できれば、日本の電機メーカーの復活の可能性があるでしょう。

2012年5月24日木曜日

対外純資産からみたイタリア、米国、日本、中国

財務省発表によると、日本は経常収支の黒字分を、長年積み上げていたせいか、対外純資産は世界1位の水準にあるそうです。これはいいことだという反面、積み上げた対外純資産が、ここのところの円高により目減りしているという実態も明らかになりました。
2012年5月22日付日本経済新聞夕刊に、この対外純資産に関する記事が掲載されていました。記事の題目は『対外純資産2年ぶり増、昨年末253兆円、円高で海外投資活発』で、以下記事引用文。

『財務省が22日発表した2011年末の対外資産・負債残高によると、日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を引いた対外純資産残高は前年末比0.6%増の253兆100億円となった。増加は2年ぶり。円高を背景に海外企業の買収など直接投資が増えた。海外勢が日本の短期債を買い増して日本にとっての負債も増え、純資産の伸びは小幅にとどまった』

上表が財務省のホームベージ掲載のデータから作成した主要国の対外純資産の推移を示したものです。日本は2位の中国を圧倒しているものの、2007年末から2011年末にかけて1.1%の増加にとどまっています。一方、同期間に中国が28.2%増加している点は注目されます。もっとも、GDP比率で見た場合、中国が0.6ポイントの上昇にとどまっているのに対して、日本は5.5ポイントも上昇しています。これは、中国のGDPが急増している対して、わが国がデフレ経済の影響で名目GDPがむしろ減少傾向にあることを反映しています。また、前年との対比では為替変動により23兆円強にも及ぶ純資産が目減りしたそうです。蟻のよう懸命に頑張った結果が、対外純資産の大幅増加に結びつかないのが、わが国の実像です。悲しいですね。
このデータをみて驚いたのは、まず対外純資産が大幅にマイナスとなっている米国です。マイナス幅が大きいのは予想されましたが、2006年から2010年にかけて純資産のマイナスが100兆円以上も減少、GDP比率でも2.2ポイントも低下していることです。日本が蟻ならば、まさしく米国はキリギリスです。しかし、その結果、名目GDPは継続的に増加する一方で、ドル安の影響もあり対外純資産のマイナスが大きく減少、キリギリスの方がリッチになっているという姿があります。日本企業の努力の結晶である対外直接投資などによって、将来の日本は潤うのでしょうか。日本企業が外国に保有している資産は、戻ってこない可能性の方が高いといえます。
もう一つ驚いたのはイタリアです。2006年から2011年にかけて、対外純資産のマイナスが3倍にも増加していることです。GDP比率も、同期間5.3%から21.8%へと上昇、ほぼ4倍にもなっています。イタリア国債は、同国のプライマリーバランスがプラスだから安心であると、友人から聞くことがあります。しかし、対外純資産のマイナスの積み上げは、確実にGDPに対する利払い費などの比率を上昇させているはずです。これを将来のリスクと捉え、リスクプレミアムの上昇を反映してなのか、イタリア国債の格下げやドイツ国債との利回り格差の拡大は、実態に合わせた水準なのかもしれません。イタリアが加われば、欧州債務危機は底なしです。

2012年5月23日水曜日

大好きなソニーにエールを

私の大好きな企業の一つにソニーがあります。ソニー製品は、私の身の回りに溢れており、薄型テレビ購入前に愛用していた最後のブラウン管テレビもソニー製でした。現在は、ソニーの薄型テレビを購入、ブルーレイレコーダー、ブルーレイ再生専用機もソニー製です。そして、音楽プレーヤーは、iPodは持っているものの、ウォークマンも使っています。2012年5月10日付『iPhoneアプリ、FANTABITの驚き』のブログの中で、iPhoneの音が良くなったことを書きました。もっとも、このアプリは完全に動作せず、プレイリストの一部が表示されないというバグがあります。表示されないものに、好きな曲が多く含まれていることから、今後のバージョンアップを期待したいところです。
 そして、これを機に、ウォークマンとiPod、iPhoneの音に関して自分なりにチッェクしてみました。圧縮の方法などにおいて差がありますが、やはり高音域での音のクリアさでは、ウォークマンの方が上だという印象を受けました。また、最近、NHKのBSプレミアムで、"Glee2"が放送され、ブルーレイレコーダーに全てエピソードを録画しました。そして、ブルーレイレコーダーのお出かけ転送機能を利用し、"Glee2"をウォークマンのZシリーズにて視聴するという生活が始まりました。有機ELディスプレイに、音の良さが加わり、何とも言えない臨場感を得ることが出来ることに初めて気付きました。iPodやiPhoneは、音楽プレーヤーというよりも、むしろ携帯型のコンピューターという機能を高めています。音楽ブレーヤーはソニーがいいという結論に達しました。埃をかぶっていたウォークマンのXシリーズも、倉庫の中から復活、音の良さを痛感している次第です。
 次に私の目に入ってきたのが、ソニー製のタブレット端末とヘッドマウントディスプレイでした。ソニーのタブレット端末はSシリーズの方を考えており、同機種が、この4月末にDTCP-IPに対応する旨発表がありました。しかし、残念ですが、対応が遅れており、無期延期ではないものの、対応時期は未定であるとのこと、ソニーの買い物相談窓口にて確認しました。ならば、タブレットはしばらく購入はないと思っていると、今度はヘッドマウントディスプレイが凄いということが、雑誌で紹介されており、その存在を知りました。型番はHMZ-T1で、3Dにも対応、パソコンのディスプレイの代用にもなることが分かりました。色々と聞いたり、調べたり、実際に体験したレビューは以下の通りです。

  1. 遠視は全く問題ないが、近視の方は矯正した方がいい。
  2. 左右の近視の度合いに差がある場合、3D映像を観るには、眼鏡でなく、コンタクトを使用した方がいい。
  3. 左右別々ではないものの、近視は視度調整機能が少しばかりきく(左右別々の視度調整の機能がつけば文句なし)。
  4. iPodやウォークマンなどの携帯デバイスに直接つなげることはできない。
  5. Apple TVを視聴することはできる。
  6. 家電量販店ではいつ入荷するかわからない。
私は、HMZ-T1を購入する予定でいます。パソコンは残念ながら、パナソニックとアップルを使用しています。デレビやブルーレイとの連携を考えれば、今になってですが、ソニーのVAIOにしておけば良かったと思っています。ここへきてソニーとパナソニックの提携交渉が明らかになりました。2012年5月15日付日本経済新聞朝刊に『ソニー、パナソニック提携交渉、有機ELテレビ量産技術開発』という題目の記事が掲載されていました。以下引用文。
 『ソニーとパナソニックは次世代テレビの本命とされる有機EL(エレクトロ・ルミネッサンス)テレビ事業で提携交渉に入った。液晶より高精細で消費電力の少ない有機ELパネルの技術を持ち寄り、大型パネルの早期量産に向け協力する。実現すれば世界を舞台に激しく競ってきたソニーとパナソニックが主力事業で提携する初のケースとなる。韓国企業に液晶テレビなどでシェアを奪われ、苦境に陥っている日本の電機産業の転換点となりそうだ』
 犬猿の仲とも言える両社の提携は、日本の国内市場で過当競争が行われ、苦境から脱する唯一の手段かもしれません。ここでソニーの業績を紹介します。右図は、ソニーホームページに掲載されているデータより作成したグラフです。売上高と比して、営業利益、純利益の絶対額が少なすぎますね。粗利の少なさがソニーの苦境の原因であることは確かです。しかし、カメラ、ビデオカメラ、テレビ、レコーダー、音楽プレーヤー、ゲーム機器など広範囲の事業展開をしているのがソニーです。これに、ソニーピクチャーズ、ソニーミュージックのコンテンツ産業が結びつけば、ユーザーの囲い込みができる潜在的な力はあります。ソニー製品を愛していないという、もっぱらの噂のあったストリンガーCEOが交代しました。ソニーの今後の経営方針に転換に期待したいところです。

2012年5月22日火曜日

低下する国民年金納付率

2012年5月18日付『プライマリーバランスとは』のブログの中で、財政再建にはほど遠い現状について少しばかり書きました。年金積立金の過剰な取り崩しが発生、そのことで一般会計にも影響、プライマリー・バランスを一層悪化させていることが予想されています。同ブログ内では、その年金制度に関して、①予定運用利回りが4.1%と高すぎること、②マクロ経済スライドが未導入であること、③保険料の未納問題など解決しなければならない点がある旨指摘しています。今日は、このうち③の年金保険料の未納問題に絞って話を進めます。
国民年金保険料の未納問題はかなり前から指摘されており、それを裏付けるデータがありましたので紹介します。それは、厚生労働省発表の『平成22年度の国民年金の加入・保険料納付状況』で、保険料の納付率は1991年度、1992年度の85.7%をピークに大きく低下、2010年度で59.3%と初めて60%を下回るまでに至っています。その後、納付状況から考えて3年連続の60%割れは確実視されており、低下傾向に歯止めがかからない場合、一般会計の歳出増加に歯止めがかからず、2020年度にプライマー・バランスの黒字化を目指す政府の政策目標が頓挫する可能性が高くなっています。2012年5月15日日本経済新聞朝刊に『国民年金納付率、最低に』という記事が掲載されていましたので引用します。以下引用文。
『2011年度の国民年金保険料の納付率が過去最低を更新しそうだ。11年4月〜12年1月分の納付率は57.6%で、前年同期比を0.7%下回っている。残り2ヵ月分で回復するのは難しく、3年連続で60%を割るのは確実な情勢だ。神奈川県や東京など首都圏の落ち込みが目立つ。収入が低く、年金制度への不信感が高い若者の未納に歯止めがかかっていない』
そこで、どうして納付率が下がっているかについて知りたいと考え、データをより詳しく調べることにしました。右表は、同じ調査結果にあった都道府県別の保険料納付率を示したものです。表をみて直感的にわかりやすいように、上位10位には色、下位10位には色で区別してみました。まず、上位10位の都道府県ですが、語弊がありますが、いわゆる「いなか」といわれる県を多く含まれていることがわかります。そして、日本海側の県が多い気がします。事実、長野県、岐阜県を除いた上位は全て日本海に接している県です。これは不思議ともいえる現象ですが、地域経済の規模に対して国からもたらされる公共事業などの便益を多く受けており、政府への信頼感が高いからかもしれませんね。やはり詳しく調べる必要がある調査結果です。
一方、下位10位は、地域の中では中心となっている都道府県が多いことに特徴があります。東京都は43位にとどまっており、都知事が偉そうなことを言っている割には、国民年金の制度を破綻させる上で、トップ集団に入っています。全く困ったものですね。ワーストワンの沖縄県は失業率が高いなどの経済的な要因が大きく、やむを得ないという気がします。一方で、ワースト2の大阪府は「やっぱり」の一言です。そして、福岡県、宮崎県なども地域の中心となっている県です。仕事を求め、「いなか」の県から人々が流入、その結果、低賃金に甘んじている人々や失業している人々の割合が多いからかもしれません。
そして、問題なのが若者の納付率の低さです。若者の雇用問題は、国を隔てもまでもなく、世界の国々にとって共通の課題です。財政問題が危機的な状態になっているギリシャ、スペインなどでは、若者の失業率が50%超の状態になっています。また、昨年、「アラブの春」のきっかけをつくったのも、失業したことに悲観し、自殺に至った若者でした。日本でも若年層の失業問題が指摘されています。右図は、年齢階級別の納付率をグラフにしたものです。 納付率が最も低い年齢階級は、意外にも25〜29歳でした。雇用問題でもっとも深刻なのは、25〜29歳の会社に就職してしばらく経った世代かもしれませんね。

2012年5月21日月曜日

原油依存のロシア経済

長年、投資のことを考えている人や投資を実際に行っている人ならば、ロシアといえば、1998年の財政危機を思い出す方々が少なからずいるのではないでしょうか。当時、ロシア政府が発行する債券は、リスクが高いことから長期から短期へと極端に比重を移し、どうにかして資金繰りをしていたということを記憶しています。結局は、1998年8月17日に同国政府は対外債務の90日間の支払い停止を宣言、この影響は世界へと飛び火しました。これにより、米国のヘッジファンドであるLTCM(Long-Term Capital Management)が破綻、一部ですが西側の投資家に打撃を与え、同社の経営に参加していてノーベル経済学賞受賞者が批判の対象になったことが知られています。その後、ルーブルは大幅に下落、ロシア経済はほぼ壊滅という状態となりました。
国債のデュレーションが徐々にですが短くなっている日本のことも気になりますが、今日はロシア経済の現状について少しとばかり書かせていただきます。ここのところのロシア経済は、石油・ガスなどの天然資源の価格の高騰など背景に躍進しています。さすがに、2008年9月のリーマン・ショック以降、マイナス成長となっていますが、2010年に入ってからは順調に経済成長を続けているようです。最近では、イランの核問題に起因する原油価格の上昇もプラスへと寄与、低成長に苦しんでいる日米欧とは事情が異なります。もっとも、過度な石油やガスなどの天然資源への依存に対しては、ロシア自身危機感を抱いており、医薬品、高度化学、複合・非金属材料、航空産業、情報技術、ナノテクなどを有望分野として位置づけ、産業構造の多様化もしくは先進技術分野の育成を目指しています。
現在のロシア経済を説明している記事が『週刊エコノミスト』2012年5月1・8合併号に掲載されていましたのでご紹介します。記事の題目は『ロシア、原油依存体質から抜け出せず、目新しさに欠ける経済政策』です。以下記事引用。
『ロシア経済は、リーマン・ショック後の09年こそGDPは8%近くのマイナスとなったが、00〜08年までは年平均7%程度、10年からも4%台のプラス成長を続けた。
こうした近年のロシア経済は、原油価格の上昇に強く支えられてきた。近年、ロシアの名目GDPの約3割は輸出によって占められ、その輸出の約6割は原油および原油との価格連動性が高い石油製品と天然ガスによってロシアの交易利得(交易条件の改善によって生じる利益)が増加する。交易利得の増加により、内需が増加し、その一部が国産の財・サービスに向かうことで国内生産の増加がもたらされるという好連鎖が起きていた。逆に、09年のように原油価格が急落した場合には、GDPも急減する』
こうした中で、原油とともに利益をもたらしていた天然ガスに強敵が現れました。それは、米国で産出される非在来型天然ガス、シェールガスの存在です。すでに天然ガスの価格は下落傾向にあり、ロシア経済に影響を与えかねないまでになっています。ここ数年、ロシアは欧州と天然ガスの供給で対立してきました。そこで、ロシアが目をつけたのが、中国や日本などのアジア諸国でした。もっとも、わが国がロシアの天然ガスへの依存を今以上に高めることは危険であると思います。急な供給停止という危険があるからです。市場経済が進んだといっても、ロシアは大統領が好き放題している国です。エクソンモービルに投資をしても大丈夫だと思いますが、一方でガスプロムへの投資はお勧めできません。これがロシアだと考えています。
 右表は、上記記事に掲載されていたロシアの連邦予算と石油・ガス収入の現状と今後の見通しを示したものです。原油価格が1バレル当たり100ドル超の状態でも赤字となる予想となっています。財政赤字のGDPに占める割合は決して高くはありませんが、想定される原油価格が100ドルを見込んでいるという点でやや危ういという気がします。自動車など国内産業の育成に力を入れているロシアの報道をみたことがあります。この時に、日本から輸入された中古車の関税を大幅に引き上げるなど露骨な政策変更により極東の経済が混乱するという旨報じられていました。立ち直ったとはいえ、ロシアは、まだまだソ連時代の因襲や負の遺産を打破できていない気がします。

2012年5月20日日曜日

プライマリーバランスとは

国と地方を合計した政府の債務残高は863兆円(2011年3月末)に達し、名目GDPの約2倍にも達しています。財政再建が急務になっている中、プライマリーバランスの黒字化を目指した改革が進められています。そうした中で、プライマーバランスとは、何かという疑問が生じます。『週刊ダイヤモンド』2012年4月15日号に、プライマリーバランスについて分かりやすい図表が掲載(注)されていましたので、ご紹介します。
上図はやや簡略化したものです。プライマーバランスの赤字とは、図に従えば、(国債償還を除く、その他歳出約40兆円)+(社会保障約30兆円)−(税収約40兆円)で、2011年度の財政では約30兆円のプライマリーバランスの赤字を抱えていることが分かります。つまり、税収=社会保障+その他の歳出(国債償還を除いた歳出)となることが、プライマリーバランスの均衡化であり、プライマリーバランスの黒字化とは税収が国債償還を除く歳出を上回ることを意味しています。
このことが如何に厳しい現実であることが、図からわかります。つまり、今後も大幅な増加が予想される特別会計の社会保障費負担に約10兆円の費用が、一般会計の歳出によって賄われているからです。また、消費税率を5%引き上げたとしても、約13兆円の税収の増加にしか結びつかず、一般会計の特別会計への負担分が変動しなかったとしても、17兆円の不足となっているからです。一般会計による特別会計への負担増は、高齢化の度合いを考慮りすれば、今後も拡大する確実です。また、年金については、①4.1%という予定利回りが高いままであること、②マクロ経済スライドが未導入であること、保険料の未納問題が未解決であることなどの問題点が指摘されており、一層の改革が必要であることがわかります。
また、消費税率の引き上げが消費抑制的に働くことを忘れてはいけません。欧米諸国など慢性的に経常収支が赤字となっている国々では、消費を抑制し、赤字の拡大を防ぐという機能が消費税にあり、付加価値税などが効果的であるという一面があります。一方、わが国では、消費が常に弱く、デフレが進行し、経常収支も黒字です。このような国で消費抑制的な税である消費税率の引き上げは、さらに国内需要を圧迫させる可能性があることは否定できません。
やはり所得税率の引き上げと、所得の把握率アップに向けた改革が求められるところです。税金が完全に把握されているサラリーマンからの税金徴収の引き上げは、既に限界にきていることから、後者の所得の把握率アップが効率的ではないでしょうか。例えば、消費税ではなく、付加価値税へと変更すれば、円高で利益を挙げている輸入業者の付加価値への課税も可能です。また、背番号制も重要かもしれません。2011年度ベースですが、17兆円の穴埋めを是が非とも行わなければならないのが、わが国の財政の実情です。
(注)記事の題目は『財政再建、今のやり方で財政再建はできない』。

2012年5月19日土曜日

インテルの原動力とは

世界最大の半導体メーカーであるインテルの原動力とは、一体何であろうか。パソコン用のCPU市場ではほぼ独占状態にあるものの、毎年、新しいアーキテクチャーのCPU開発もしくは製造プロセスの微細化によって、能力を高めた製品を発売し続けている。インテルの共同創業者であるゴードン・ムーアが自らの論文で示した「ムーアの法則」(注)で示した18ヵ月ごとにCPUの能力は倍になるということを地でいっているような気がします。もっとも、CPUにグラフィック処理用のチップをのせるなど、パソコンの中でのCPUの役割は飛躍的に高まっており、他のメーカーが製造していた分野への進出は著しているのも確かです。つまり、周辺機器で対応したものをCPUやチップセットが担うようになり、ある意味、パソコンの中でのインテルのシェアは高まっているといえます。また、ハードディスクに代わろうとしているまで成長しているSSD(ソリッドステートドライブ)でも、インテルはシェアをある程度握っていることから、将来、パソコン内はインテルだらけになるかもしれません。
こうした中、インテルがパソコン用に新型プロセッサーIvy BridgeとIntel 7チップセットを発表しました。同社は従来からチックタック戦略をとっていました。チックタック戦略とは、プロセス技術とマイクロアーキテクチャーを毎年交互に改良するというものです。今回、製造プロセスを32nmから22nmへと大幅に縮小した点から前者が該当するものと思っていました。しかし、トランジスター構造を3次元にするなどのアーキテクチャーの大幅な改良もやっていることから、どちらに該当する新製品なのかやや分かりにくところがあります。また、新しいチップセットはUSB3.0を正式サポートしています。この点も、今回の発表の注目点です。
私は、アーキテクチャーを変えたタイミングではなく、システムが安定した製造プロセスの微細化のタイミングでパソコンの購入を進めています。従って、パソコンは、しばらく様子をみてからの購入になります。今、主に使用しているパソコンはCore 2 Duoです。2年たったので、そろそろ買い替えかと思いつつも、実はシステムが非常に安定していることから、しばらくはこのパソコンでやっていこうかとは思っています。一方で、インテルのGPUを内蔵したCore i5のパソコンがヨタッいます。やはり、GPUは内蔵ではなく、外付けが必須です。Core 2 DuoのパソコンはGPUは外付けで、極めて快適に作動していることから、まだまだ使用できるでしょう。
以上が、今回発表されたCPUのラインナップです。私はノートパソコンがメインとなっていますので、Core i7 Extremeに興味があります。最高周波数が3.80GHzで、CPUが擬似的に8つにもなるCPUを搭載したノートパソコンなど昔では信じられなかったことでしょう。インテルも一時期、リーク電流の問題で苦しめられました。製造プロセスの微細化しても、電流がリークし、発熱量ばかり大きくなり、能力の向上が乏しかった時期がありました。そのリーク電流の問題もクリアし、今のCore iシリーズがあります。素晴らしい技術開発能力だと思います。
そして、今後、期待されるのは、スマートフォン用のCPU開発です。手始めにウィンドウズフォンのCPU当たりから進出することが予想されますが、アップルとインテルの関係からいきなり、iPadやiPhone用のCPUをインテルに任せるということもあるかもしれません。今のところ可能性はゼロですが、CPUの技術革新の礎を築いてきた同社には何か期待されるところがあります。
(注)「ムーアの法則」とは、そもそも18ヵ月ごとにCPU上のトランジスター数が倍になることを示しており、最近になってコンピューターの能力が向上にも引用されるになった。

2012年5月18日金曜日

好調な商社の業績

2012年5月14日付『原油価格とエクソンモービルの株価』のブログにて、同社の好調な業績と大幅な増配について書きました。2012年1〜3月期の純利益は、前年同期比と比べてやや減少という結果となったが、同社の利益水準は依然として高く、ガソリンなどの資源高の要因が背景にあるといえます。米国ではガソリンなどは高止まりする一方で、生活必需品であることから、価格上昇に対して需要の減少はさほどなく、結果として他の支出を抑えるという要因となっており、米国の家計支出にとってマイナスとなるという予想もある。景気は失速する懸念があるものの、価格に対して需要が非弾力的な製品を提供する企業には、この点において強みがあるといえます。
そこで、このことを図でもって説明することにします。ガソリンに関しては、右図の「需要の価格弾力性が小さい」に該当することとなります。需要曲線DDに変動がないとすれば、資源高を背景に供給曲線がSSからS'S'にシフトした場合、価格はPからP'へと上昇します。結果、需要は減少し、VからV'となります。そして、均衡点はEからE'へと移ることとなります。需要の価格弾力性が小さい場合、価格上昇に伴う需要減少は小さく、結果として企業利益は増加することになります。企業利潤は、価格P(またはP')と均衡点E(またはE')を結んだ直線の下の部分で、供給曲線SS(またはS'S')を上回る部分に当たります。これが価格に対して非弾力的な製品を提供する企業の置かれた状況であるといえ、高い利益をもたらすことを意味します。
同様な状況は、日本の商社にも該当します。資源高などを背景に、大手商社が好業績となっている旨の記事が『週刊ダイヤモンド』2012.5.12/19号に掲載されていました。記事のタイトルは「三井物産、資源"一本足打法"からの脱却へ、迫られる収益構造の展開」です。以下記事引用。
『ライバル三菱商事に純利益で肉薄する三井物産。その収益構造は資源価格に左右されやすく、盤石とは言えない。非資源分野の強化で、資源"一本打法"からの脱却はなるか。
商社が、軒並み好業績に沸いている。今週発表される予定の2012年3月期決算では、業績トップの三菱商事が純利益4500億円を計上する見通しだ。丸紅など他の商社も、史上最高益を更新するとみられている。
他業界がうらやむ好業績の背景には、過去に投資した鉄鉱石や石炭などの海外での資源権益がある。さかのぼれば40年ほど前の投資案件が、昨今の資源高の波を受けて花開いているケースもある』
 この記事では、純利益4300億円と好業績を記録している三井物産の資源分野への過度に依存している点が危ぶまれていることを示唆しています。9割以上を資源・エネルギーに依存している同社にとって、これに代わる部門の育成に長年努めており、資源・非資源の割合を50対50にすることを目指しているそうです。右図は、三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠、丸紅のセグメント別ROAを比較したものです。図からは三井物産に限らず大手商社の金属セグメントのROA(総資本利益率)は高いようです。これは、あくまでROAからみたものですので、どの程度、個々の商社が総資産の構成で金属やエネルギー分野へと比重が大きいかに依存します。同記事では、三井物産が総資産8.6兆円のうち39%を、三菱商事が総資産のうち45%を金属・エネルギー分野に資産を投入しているようですので、三井物産の過度な依存とは当てはまらないような気がします。もっとも、中国は、産業の血管たる存在である銅への需要は増大し続けており、資源高というトレンドには、今後も変化がないと予想されることから、商社は引き続き好業績を維持すると考えられます。多角化は企業にとって必須条件であり、三井物産の今後の経営転換が期待されるところです。原油など化石燃料はいずれは枯渇します。エクソンモービルでも同様のことがいえるでしょう。

2012年5月17日木曜日

回復傾向のみられる経済成長率

2008年9月のリーマンショック、2011年3月の東日本大震災、そして昨今の欧州債務危機を乗り越え、わが国経済にもやや明るい兆しがみえてきたようです。内閣府が2012年1〜3月期の国内総生産(GDP)の速報値を発表しました。発表によると、物価変動の要因を除いた実質GDPの成長率は、前期比1.0%増、年率換算で4.1%増となり、同時に発表された2011年10〜12月期の改定値がプラスになったことから、3期連続のプラス成長となりました。先日、EU統計局が発表したEU域内の成長率がゼロとなったことを考えれば、わが国経済は底を脱したともいえます。
この経済成長は背景には、堅調な個人消費があります。そして、この中心にあるのが自動車販売です。しかし、これを除いた個人消費は、旅行・レジャーなど一部で回復傾向があるものの、総じて弱いという結果となり、先行きの減速感は否定できないそうです。欧州債務危機に連動し、中国経済の減速感が指摘されており、輸出も予断を許さない状況にあります。さらに、円相場が高止まっており、東芝が国内のテレビ工場を閉鎖、全量を国外の工場で生産するなど、企業の海外への生産シフトも歯止めがかかっておらず、持続的な経済成長は難しいという環境にあるといえます。
右図は、実質経済成長利率(年率)と項目別の寄与度を示しています。こうしてグラフをみていますと、東日本大震災よりも、リーマン・ショックの方が、わが国に与えた影響が極めて大きくことがよく分かります。消費が慢性的に弱い中で、純輸出を如何に増加させるかが、持続的な経済成長のキーポイントであることは変わっていないのが事実です。中国経済が失速し、欧米経済の回復が芳しくなければ、今後の経済成長が鈍化する恐れは十分にあります。
 内閣府から発表される『国民経済計算』で私が個人的に注目しているデータがあります。それは、名目GDPの推移です。今回は、前期比で1.0%増、年率換算4.1%も増加しています。2011年7〜9月期も年率6.1%増加しており、物価の下落傾向にある程度歯止めがかかったのではないかと期待しています。もっとも、それが原油価格の高騰など純輸出の減少させる形での増加ならば、日銀が目標としているインフレ率の1.0%の効果は決して望ましいものではないとも思っています。図は1999年からのGDPデフレーターを示しています。日本経済がデフレであることが一目でわかるデータです。私は、名目GDPと実質GDPが同水準ななった時点が、回復の原点だと考えています。1999年に500兆円であった名目GDPは、474兆円にまで減少しています。私は500兆円は覚えやすい数字だということで、日本の経済規模に関する質問があった場合、500兆円だとよく答えています。一方で、実質GDPは、今回の発表では517兆円です。このギャップがある限りは、デフレからの脱却とはいえないのでしょう。

2012年5月16日水曜日

ギリシャでの預金引き出しに震撼

ギリシャ問題に不透明感を増しています。パプリアス・ギリシャ大統領の呼びかけにも応じたものの、ギリシャ議会は組閣に失敗、再選挙という最悪の結果となりました。これを受けてかユーロ相場は、対円で101円台にまで下落、ニュースでもトップで報じられるなどしています。ギリシャ問題は再燃し、市場関係者にとどまらず、世間一般での関心も高まっており、世界経済を底のないブラックホールへと陥らせる勢いにまでになっています。こうした中で、ギリシャで預金引き出しが行われているという衝撃的なニュースが飛び込んできました。ギリシャのユーロ離脱が現実味を帯びてきたようです。2012年5月16日付日本経済新聞夕刊に『ギリシャ、資金流出加速、預金710億円減少』という記事が掲載されていました。この記事を読んでいて、私は背筋が凍る思いをしましたので引用させていただきます。以下記事引用。
 『【イスタンブール=花房良簾祐】ギリシャで15日、連立政権樹立を目指す調整が失敗し、世論で緊縮財政策への反発が広がる中での再選挙が確実となったことを受け、同国からの資金流出が加速した。株価指数は6日の総選挙直後から約2割下落、銀行預金も1週間余りで約7億ユーロ(約714億円)目減りした。市場では政治空白の長期化で財政再建の停滞が不可避とみて「ユーロ離脱論」が浮上しているためだ』
 預金の引き出しは当然ともいえる流れです。ギリシャがユーロから離脱し、旧通貨であるドラクマが再び復活した場合、ユーロに対するドラクマ相場の大暴落は目に見えています。そして、それに伴い、ギリシャ当局による銀行預金の引き出し凍結などの強硬措置が講じられる可能性は十分にあるといえます。現時点で考えられる預金者としての最良の選択肢は、速やかに預金を引き出し、ユーロを現金という形で金庫で保有することです。わが国では円という通貨が非常に安定していることから、そのようなことは ありません。しかし、仮にデフォルトリスクが発生したのならば、ドルや金(ゴールド)などへ換金し、金融資産の価値保蔵に走るでしょう。預金を引き出された銀行は、資金ショートを起こし、連鎖倒産する可能性があります。上表は、S&Pのギリシャの主な銀行の格付けを示したものです。CCC(トリプルC)が最高であり、既に終わっているという印象を受けます。
 そして、やばいのはこれからです。預金の引き出しが本格化し、ギリシャの銀行が連鎖倒産した場合、ギリシャの銀行に多額の資金を提供するギリシャ以外の欧州の金融機関に影響があるからです。右図は、私が想定した危機の連鎖のフローチャートです。預金の引き出しを第一弾の危機として、次の危機は、ギリシャに多額の資金を提供している欧州の銀行のバランスシートへと移っていきます。最終的には、自己資本の毀損などを通じて、よりグローバルな市場へと危機が迫る可能性が否定できません。この理由は、ヨーロッパの銀行の特徴に起因します。預金で資金を主に調達する日本の金融機関とは異なり、アイスランド、アイルランドの銀行や昨今倒産したベルギーのデクシアのように、ヨーロッパの金融機関は市場から調達している資金が圧倒的に多いことです。市場から調達された資金の出し手には、日米金融機関による貸し付けもあるでしょうし、株主、社債の直接の購入者なども当てはまります。より身近では外貨建てMMFなどが欧州の金融機関発行のCPを購入していることから、MMFの一部資産が毀損する恐れがあります。しばらくは様子をみるしかないのですが、世界の投資家がギリシャ危機に巻き込まれる構図がみえてきました。

2012年5月15日火曜日

原油価格とエクソンモービルの株価

私は、先のブログで電力株を保有していることについて書きました。そして、震災後、株価下落により、大打撃を受けるという結果となりました。因に、電力株の具体的な会社は、中国電力です。中国電力は、本社が広島市にあるせいなかのか、沖縄電力を除く、電力会社の中で、最も原発による発電量の比率が低くなっています。そして、島根原発の検査に関して不備があり、2010年もしくは2011年の原発の発電の実績は、全発電量の3%にとどまっていると記憶しています。
中国電力は、今回の原発全停止による損失が最も小さい電力会社であることも事実です。余剰電力を、危機的な関西電力へと回せる余裕もあることから、今年の夏には、電力を安定供給する責任を果たすべく同社の貢献が期待されるとろこです。もっとも、逆に意味では、同社は、もともと化石燃料に依存する割合が大きく、原油価格の上昇はコスト面で圧迫、ここ数年の業績低迷に直撃していていたという経緯があります。こうした状況で、私が考えたのは、原油価格の上昇によるポートフォリオの毀損に対応するために、原油価格の上昇がプラスとなる手段をポートフォリオに付け加えることでした。原油先物などに手を出すことは到底不可能ですので、原油価格の上昇にリンクして、株価が上昇する銘柄があればということで、銘柄の選定に入りました。そして、私が目をつけたのがエクソンモービルでした。
エクソンモービルに関する記事が、2012年5月4日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『欧米石油大手、投資12%増、新興国の需要増にらむ』です。以下引用文。
『欧米石油大手5社が石油や天然ガスの開発・生産を強化する。2012年の総投資額は最大で前年比12%増の1367億ドル(約10兆9000億円)に達する見通し。新型ガスや石油の増産に沸く北米に加えアフリカやロシアなどで大型プロジェクトが相次ぐ。12年1〜3月期決算は各社とも業績が伸び悩んだが、新興国を中心とする需要増をにらみ、高水準の投資を続ける。(中略) 各社の1〜3月期の業績は北米のガス価格下落の影響などで伸び悩みが目立った。米国でのガス生産量が最も多いエクソンの純利益は前年同期比で11%減少。一方、アラスカでのガス資産を売却したシェブロンは増益を確保。シェルも東日本大震災後の日本向けLNG輸出の増加などが下支えし全体では小幅減益にとどまった』
 売上高は、原油価格の増加により比較的堅調だったようですが、純利益は5社の間で格差が生じているようです。エクソンモービルは、凄い会社で減益にも関わらず、2012年第2四半期で1株当たりの配当金を0.47ドルから一挙に0.57ドルへと大幅増配することが同社ホームページにて掲載されていました。もっとも、同社の1株当たりの利益は8.28ドルもあり、年間で2.28ドル(=0.57ドル×4)の配当をしたとしても剰余金は十分に確保できるというのが実態です。やや儲け過ぎという感は否めないでしょう。米大統領選でもガソリン価格が争点になっています。石油会社をターゲットとした課税が論争になることも理解できますね。しかし、このような格段の利益水準を維持できる企業が日本にあればというのが、私の本音です。だから、国内の石油会社に投資せず、海外の会社に投資した次第です。
それでは本題に戻ります。エクソンモービルの株価と原油価格はリンクしているかです。右右図は、2007年7月からの同社株式と原油価格(WTI、1バーレル当たり)の推移を示したものです。計量分析でどの程度説明できるかを示すこともできましたが、グラフだけでもリーマンショックがやや落ち着いたと思われる2009年に入ってからは、見事にリンクしていることがわかります。増配を継続的に行っているということが要因となっているかもしれませんが、原油価格の上昇は、エクソンモービルの株価を上昇させることとなり、結果、私のポートフォリオは安定することとなります。同社の株式を保有し、配当金を得ていると、悪徳資本主義に魂を売っているような気がしますが、あくまでポートフォリオの組み方という視点で書きましたのでご了承ください。

2012年5月14日月曜日

拡大するASEAN諸国の経済規模

昨年、中国のGDPが日本を上回ったことは記憶に新しい。躍進続く中国経済は、今後米国を抜き去るまで拡大する可能性は十分にあるといえます。もっとも、システム的には共産主義の一党独裁であることから、民主主義を掲げる国にとっては将来的に脅威となる恐れがあるります。中国は、現在、空母を建造中であり、米国によって支配され続けていた外洋へと進出、特に南沙諸島などの領有問題で抱えているASEAN諸国は神経を尖らしています。今後、中国の大国化するにつれて、逆にASEAN諸国は米国への政治的な依存度を高める可能性は高く、両者の関係はいたって良好であるといって過言ではないでしょう。
ここで、ASEAN諸国の中で唯一の問題国であったミャンマーの民主化に関する記述が、2012年5月6日付日本経済新聞に掲載されていましたので引用します。記事の題目は『ミャンマー、改革は本物か』です。以下引用文。
『ミャンマーの民主化改革を後押しする動きが慌ただしさを増す。25年ぶりの円借款再開を表明した日本に続き、欧州連合(EU)も経済制裁停止を決定。テイン・セイン大統領は国際社会の支援を背に「経済開放→高度成長→貧困撲滅」のシナリオを描く。ミャンマーは半世紀にわたる軍事政権支配のくびきを脱し、民主主義、市場経済を標榜する「普通の国」になれるか』
 中国に依存している世界経済ですが、ミャンマーの民主化が進み、ASEAN諸国の存在感が増しているのも事実です。中国国内では既に人手不足に陥っており、全人口ベースでも2010年の13億4,133万人から2035年には13億8,158万人の増加にとどまり、2050年には12億9,560億人へと逆に減少することが予測されています。因に、米国は、2035年に3億7,288万人、2050年には4億310万人へと増加するそうで、所得水準が高く、人口規模が大きい世界の国の中で唯一人口が増加します。一方、ASEAN諸国はどうでしょうか。上表が今後のASAEAN諸国の人口と期近の名目GDPを表したものです。人口は2010年に5億人弱であったものが、2035年には7億人超の水準にまで増加する予想があります。中国の人口は、実態的には高齢化が既に進んでいることから、今後、世界の工場として良質な労働力を得るには、中国中心ではなく、ASEAN諸国を中心とした東南アジアへの依存を高めた方が望ましいと思われます。
表にして気付いたのですが、インドネシアが特に注目されます。日本とインドネシアは良好な関係にあります。以前、味の素に製造過程で豚に起因する原料が混入しているということで、大問題になったことがあります。その時、暴動等へは拡大せず、政治決着のように問題が沈静化したということを今でも覚えています。同国は1人当たり名目GDPが、3,000ドルを既に上回っている上、人口規模が2億人超と大きく、ASEAN諸国の中でも突出した大国です。3,000ドルを上回れば、次は新興国へのステップです。インドネシアは、まさに飛び立とうという瞬間にあるといえます。インドネシアと日本の友好関係が続くことを切に願っています。

2012年5月13日日曜日

潜在的なリスクを抱える米金融機関

JPモルガン・チェースが、デリバティブで巨額の損失を出したようです。2012年3月20日付『気になる米金融機関の業況』のブログでも記述したように、米銀は、債務保証、CDSなどを通じて潜在的なリスクが拡大している旨示唆しました。今回のデリバティブ関連の損失の顕在化は、その裏にある潜在的リスクと比べてかなり小さい規模のような気がします。この損失の計上のニュースにより、2012年5月11日のNYダウ工業株30種平均は、前半で上昇したものの、終値ベースで前日比34.44ドル下落という結果になりました。もっとも、金融関連の株式の下落の影響(心理的影響も含める)は大きかったものの、業種全般に通じて低調であったことが、NYダウ工業株30種平均が同日の下落の要因であったともいえます。
 そこで、ダウ平均の構成要素を調べてみることにしました。右表は、同平均株価の業種別のウェイト、変化幅、変化率を示したものです。金融株のウエイトは10%にとどまっていることから、直接的な影響よりも心理的な影響の方が大きいともとらえることができす。因に、右表の金融部門に含まれる企業は、アメックス、トラベラーズ、JPモルガンチェース、バンク・オブ・アメリカの4社です。特に、JPモルガン・チェースの下落幅は前日比9.28%の大幅の下落になっており、心理的影響だけでなく、JPモルガン・チェース自身の株価下落が直接的な要因となりもNYダウが下落したことは否定できないでしょう。
 JPモルガンチェースの損失に関連して、2012年5月12日付日本経済新聞朝刊に『JPモルガン、1600億円損失、リスク管理巧者、意外なつまずき』という題目の記事が掲載されていました。以下記事引用。
 『【ニューヨーク=藤田和明】巧みなリスク管理で知られているJPモルガン・チェースが、デリバティブ(金融派生商品)で20億ドル(約1600億円)の評価損が生じたと発表した。金融危機でも目立った損失がなかったJPモルガンに何が起こったのか。市場では米金融機関が抱える潜在的リスクが意識され、先行きへの不透明感が漂っている。(中略)
 1〜3月期の決算発表から、わずか1ヵ月間で唐突に発表されたデリバティブ損失。「要塞のバランスシート」ともいわれるJPモルガンの想定外の損失に市場には驚きが走り、JPモルガン株は急落した』
この記事によると、金融機関による自己勘定を原則禁止とする規制、いわゆるボルカー・ルールなどによる規制強化に弾みがつくと示唆しており、そして、上記損失が個別取引によるものなのか、米銀が抱える潜在的リスクの一部の顕在化なのかを見極める必要があるとしています。欧州債務危機が深刻化した場合、米銀の自己資本は一挙に毀損することとなります。この記事は、2008年9月に端を発したリーマンショックの影響から、まだ抜け切れていない米経済の足腰の弱さが露呈した内容ともいえるでしょう。

2012年5月12日土曜日

米国の失業率について

失業率の統計を考える時、一番大切なのは、分子である失業者数と分母である(失業者+就業者)の定義です。就業者数は実際に就業している人をカウントすればいいことになるが、失業者の方はやっかいなところがあります。それは、一定期間に就職活動をしたことがある人なのか、それとも就職活動はしていないものの、就業の意志がある人なのかということです。つまり、前者は、就業についてあきらめてなく、持続的に就職活動をしている人で、後者は、不景気の中で就業自体をあきらめた人などがカウントされているかもしれない。また、労働力人口で考えれば、年金を受給し、第2の人生を送っている方々も含めることになるため、取り扱いには注意を要します。
米国の失業率統計を表したものとして労働参加率という言葉が、2012年5月5日付日本経済新聞朝刊にて紹介されていました。早々に、米労働省のホームページをチェック、グラフを作成してみました。グラフの中で(A)と表記しているのが、労働参加率であり、2000年当たりから低下していることが分かります。このデータをチェックしていると、この労働参加率とは、労働力人口(Civilian noninstitutional population)を分母、(就業者+失業者)を分子として計算されることが理解できました。確かに、この数値の低下は、就業自体を諦めた人の割合を示している部分があり、景気低迷が長期化している米国を経済状況をよく表しているといえます。もっとも、この労働力人口は、16歳以上で、軍人や施設にとどまっている人々を除いた数字であり、65歳以上の人々もデータに加わっています。つまり、高齢化に伴い労働参加率の低下は否定できない事実で、好景気であった時から低下していることから、そのことが説明できます。
そこで、総人口に対する労働力人口の比率を表してみました。上のグラフでは、(B)に該当するデータであり、2005年から急落しています。そして、(B)-(A)をグラフで表してみると、2000年くらいから上昇傾向にあることが分かります。このデータは、何を示しているのかやや疑問が残りますが、上昇しているという事実は変わりません。
ここで、上記記事に労働参加率に関して記述している部分がありましたので引用します。記事の題目は『米雇用、見えぬ回復力、労働参加率63.6%、30年ぶり低水準、消費と好循環生まれず』です。以下引用文。
『【ワシントン=藤井彰夫】4月の米雇用統計では、米国の雇用回復の鈍化が鮮明になった。非農業部門の雇用者数の伸びは3月に続いて20万人の大台を割り込んだ。雇用者数は増えても賃金の伸び率は低く「雇用増→消費増」という好循環につながっていない。米連邦準備理事会(FRB)も雇用の先行きには警戒姿勢をといておらず、必要に応じて追加緩和策を検討する構えだ。(中略)
4月の雇用統計で目を引くのは労働参加率の低下だ。16歳以上の人口のうち働く意志のある人の割合を示す労働参加率は、4月は63.6%と前月に比べて0.2ポイント低下、およそ30年ぶりの低水準を更新した。4月の失業率が8.1%と3年3ヵ月ぶりの低水準に下がったのも、労働参加率が低下し、失業率の計算の分母になる労働力人口が落ち込んだ影響が大きい』
労働力人口は、日本の場合、15歳以上の人を対象とするようです。米国の場合は、16歳以上の人を対象として労働力人口としていることから、国によって異なる統計を比較することはやっかいなことです。因に、生産年齢人口とは、日本の場合、15歳以上65歳未満の人々を対象としたものです。個々のデータの差を考慮した上で、経済分析をするには、統計の意味をまず理解することが大切です。私の勉強不足から今日のブログは用語の使い方においてやや不明瞭な点があると思います。

2012年5月11日金曜日

大台を割った日経平均

今年に入ってから、日本銀行の金融緩和が功を奏し、円安へと導くことにある程度成功し、それに連動してか、3月末には日経平均が1万円台の大台に乗ったばっかりです。その後、ギリシャが総選挙で組閣に手こずり、フランス大統領選でのサルコジ大統領の敗北、イベリア半島リスクの顕在化などにより欧州債務危機の再燃、円相場が再び上昇しています。これに伴い、円高を嫌気してか日経平均株価が下落へと転じ、終値ベースで今日はついに9,000円台を下回ってしまいました。もっとも、どん底であった2011年は過ぎ、日本企業には一部で明るい兆しがみえてきているのも事実です。例えば、今日の個別銘柄の動きでは、ニコンが2013年3月期の決算予想で営業利益が12.4%増の2ケタ増加ということが好感され、前日比195円高(+8.56%)の大商いとなっています。このほか、電機関連でも、パナソニック、シャープ、ソニーは大幅減益となっており、ぱっとしないところもありますが、日立、三菱電機、東芝は社会インフラなどを収益源として、業績の回復が期待されています。企業によりまちまちとのなっているのが、今期の決算発表であり、今後は業績を伸ばす企業の割合が多くなっていけば、株価の本格回復へと向かうことが期待されます。
 『2012年週刊ダイヤモンド』2012.5.12/19号に、日経平均株価の動きのクセについて記述した記事が掲載されていました。記事の題目は『ヘッジファンドの売り出る5月、今年も円高・株安のリスクは大』です。以下引用文。
 『「4月高値・5月転換の月」となる要因は何か。まず、需給要因では、国内機関投資家の決算対策売りが3月中に終了し、4月新年度入りとともに、積極的な売り手が消えることが挙げられる。外国人投資家の積極姿勢が継続すれば、自然に株価に上昇圧力が強まる。
 その高値形成後は、4月中はもちあい相場となるケースが多いが、5月に相場は急落する。最大の要因は、日本株の買い主体である外国人投資家が、スタンスを変更することが多いためだ。
 ヘッジファンドの多くは、11月本決算・5月中間決算を採用している。5月は、半期決算をにらんで、積み上げたポジション(取引残高)のアンワイド(巻き戻し)を行う時期なのだ。そして、彼かはポートフォリオを修正・再構築し、下記の相場に備える』
 同記事は、ウォールストリートに"Sell in May And Go Away"(5月に売ってどっかへ行け)という格言があることを記述、日本の株式相場にこそ、この格言が当てはまるとしています。右表は、2000年以降の日経平均株価の月間騰落率を示したものです。13年間で5月の相場が大きく下落しているのは、今年を含めて7年です。年初からの動きにも注視する必要があることは当然ですが、5月が下落しやすい月ということは決して当てはまっていません。しかし、上記の記事により、株式市場における有力なプレーヤーであるヘッジファンドの決算月が11月本決算・5月中間決算と判明した意味は大きいと思います。もっとも、20年以上も下落傾向が続く日本の株式市場だかこそ当てはまるともいえます。通年では、日本企業の業績の本格回復し、米国経済の復調に加え、ユーロ債務危機の回避が現実となれば、大幅に上昇することも現時点では否定できないでしょう。テクニカル面で、5月の下げ相場にはある程度意味があるとして、今後の株価について過度に悲観的になる必要はないと考えています。

2012年5月10日木曜日

iPhoneアプリ、FANTABITに驚き

2012年3月13日付の『Siriの日本語対応』のブログの中で、日本の音声認識技術は世界最先端を行っており、デジタル空間に「初音ミク」というアイドルを創造したこと書きました。この音に関する技術の進歩で、新たなiPhoneアプリがあることが、『Mac Fan』2012年6月号に紹介されていました。私は、現在、音楽ライフの中心にあるのが、iPhoneとiPodのアップル製品とウォークマンのXシリーズとZシリーズです。ウォークマンのXシリーズは画面サイズが小さすぎるということで余り使わなくなりましたが、それ以外の3つの機種はTPOを考えながら、フル稼働しています。3年近く前にiPhoneを購入してから、私の音楽ライフは、それまでの流れからパラダイムシフトし、新たな局面を迎えており、むしろ私のライフスタイルの中心に位置する存在にまでなっています。
 もっとも、毎日会社勤めをしている関係で、常時持っているのはiPhone3GSで、ややスピード面で不満があるものの、SafariでWebをみるには全く問題がなく、インターネットは、パソコンではなく、モバイル機器を使用して接続する時間がほとんどとなっている次第です。そうした中で、新たな音楽アプリの紹介が雑誌に掲載されており、早々にダウンロードしみました。そのアプリとは「FANTABIT」というものです。通常、携帯デバイスに音楽をインストールする際には何らかな圧縮することで、相当数の楽曲を1つのデバイスに入れて、持ち歩くことができます。因に、私はCDからiTunesに音楽をインストール際は、アップル・ロスレス・エンコードに設定しています。これは、このエンコードが音質がいいと記述があったたためです。
 しかし、楽曲に何らかの圧縮がかかることで、もともとあった音域が失われる弊害があるそうです。もっとも、その音を人間は聴くことができないため、圧縮をしてインストールしても全然問題がないという考えが、携帯音楽プレーヤーにはあります。しかし、この「FANTABIT」というアプリをダウンロードし、楽曲を早々に聴いてみました。そして、iPodのミュージックアプリと同アプリを通じて同じ楽曲を聴き比べてみました。すると、「FANTABIT」を使用して楽曲を聴いた場合の方が、高音域の音が明らかに差があることが理解できました。「クリア」という表現が適切がどうか分かりませんが、私はそう思いました。ウォークマンを使っていることもあり、音のクリアさではiPhoneやiPodにやや不満があったのですが、このアプリを使えば、私の聴く能力の範囲ではどちらも同等のレベルに達していると思います。ソフトウェアの技術というものは凄いですね。写真は、iTunesの同アプリ購入の画面とiPod上で実際に使用している時の画面です。そして、以下は『MacFan』の記述の引用です(P23)。
 『デジタルアクトは、京都に本社を置く技術者集団だ。「ファンタピクス(FantaPix)という画像の可逆圧縮・復元技術を生み出し、その技術は映画「ラ・ボエーム」や「マイケル・ジャクソン・キング・オブ・ポップの素顔」にも採用されている。そんな技術者集団が音の世界に注目し、開発したのがこのアプリというわけだ。
 CDなどの音をMP3やAACに圧縮すると、高音域がカットされてしまう。データ量を少なくするために可聴領域外の音を削除した形だが、同社社長の斉藤和久氏は「人は可聴領域外の音も感じている」と主張する。同様の意見は、CDの登場以来さまざまな研究論文でも主張されており、高周波音を含む音楽を聴くと脳にアルファ波が検出されたという結果もある。
 ファンタビットは、残っている音声波形を元に「本来あったはずの高音域」を解析し復元するそうだ。高音域を復元することによって音全体の調和が甦り、原音にあったはずの細部のディテールや空間的な表現力が回復するというわけだ』
「百聞は一見にしかず」ではなく、この場合は「百見は一聞にしかず」ですね。是非ともこのアプリを使ってみて下さい。それと、日本の音に関する技術の凄さを、再び感じる瞬間でした。

2012年5月9日水曜日

東南アジアの自動車販売

私は、企業が海外へと進出するには、中国ではなく、まず東南アジアを目指してほしいと考えています。企業進出に当たっては、同地域は安定した政治状況、貿易の自由度、人件費の安さなどの点においてもっともリスクが少ないでしょう。中国への進出は、技術流出の懸念もさることながら、法制度が急に変更され、撤退を余儀なくされることなどの政治リスクが大きく、長期的な進出にはやや懸念があるといえます。今後、中国の需要が爆発的に増加することは確実視されているものの、一方で東南アジアにはインドネシア、タイ、ベトナムなど人口規模が大きい大国が存在しており、特に中間層が増加している国々が数多くあることを忘れてはならない事実です。
その中で、東南アジアの自動車販売が回復した旨の記事が、2012年4月29日付日本経済新聞朝刊に掲載されていました。記事の題目は『東南ア新車販売回復、日米欧メーカーが争奪戦』です。以下記事引用。
 『【バンコク=高橋徹】東南アジアの新車市場で販売の回復感が鮮明になってきた。好調な個人消費や政府の需要喚起策に支えられたタイとインドネシアがけん引役だ。両国ではもともと存在感のある日本車に加え、欧米のメーカーも増大。今後は中間層の台頭に伴って広がる需要の争奪が強まりそうだ』

 上図のは東南アジアの主要国6カ国を挙げています。この中で前年同期比で増加しているのは、タイ、インドネシア、シンガポールで、マレーシア、フィリピン、ベトナムは逆に減少しています。日本での販売台数は長期的に減少しているとされていますが、依然として大きな規模を有していることが分かります。もっとも、収益に貢献しているかどうかという視点ではやや異なることが、トヨタ自動車の決算説明から読み取ることができます。右図はトヨタ自動車発表の2011年度第3四半期の販売台数の地域別シェアと営業利益を示しています。日本での販売台数のシェアは43%にも達しており、同社にとって日本は最大の市場であることは変動はありません。しかし、営業利益に的を絞った場合、事態は全く異なるのです。同社にとって日本市場は営業利益に全く貢献していないのです。北米は当然のことながら、実はアジア市場の利益貢献度は、北米に次ぐまでになっているのです。タイ、インドネシアは人口規模も大きく、平均年齢も若い国です。従って、トヨタ自動車に限らず日本の自動車メーカーがアジアなどの新興市場等に重点を置いていることがよく理解できます。

2012年5月8日火曜日

コマツ、好調な業績

コマツの業績予想について、2012年4月24日付日本経済新聞朝刊に掲載されていました。そして、内容確認のため、同社のホームページを閲覧すると、以下内容の文章が掲載されていました。速報性が高いと判断し、ブログにも記事内容を掲載しようと考えましたが、結局やめることにしました。ホームページの掲載内容は以下の通りです。
『本日の一部新聞報道について
本日、一部報道機関において当社の2013年3月期の業績見通しに関する記事が掲載されていましたが、本日の報道内容は当社から公表したものではありません。
2013年3月期の業績見通しの公表は、4月26日(木)に予定しております2012年3月期決算の公表に合わせて行う予定です』
そこで、コマツに関しては4月26日以降に書くことにしました。そして、2012年4月27日付日本経済新聞朝刊にコマツの業績に関する記事が掲載されていましたので引用させていただきます。記事の題目は『コマツ、「脱中国」進む』です。以下引用文。
『コマツの収益の中国依存度が急低下している。26日発表した2012年3月期の連結決算(米国会計基準)は、純利益が前期比11%増の1670億円と過去2番目の高水準となった。金融引き締めの影響で中国の売上高が急減したが、アジア(中国を除く)や日本、北米など他地域で補った。建設機械・車両部門の売上高に占める中国比率は12%に低下。収益構造の転換が進んでいる。
建機・車両部門の前期の中国売上高は2013億円と40%減少した。中国は11年3月期には売上高の21%を占める断トツの稼ぎ頭であったが、前期はアジア、日本、北米、中南米に次ぐ5番目に後退した』
 コマツの業績が好調なようです。2008年3月期の売上高を上回るまでにはなっていませんが、新興国やオセアニア地域での売上高の増加が引き続き期待されることから、2013年3月期
は過去最高の業績が期待されるところです。
 コマツが製造している建機がたまにテレビでも報道されますが、その中でも特に目を引くのが、露天堀の鉱山で使用されている超大型ダンプです。ホームページの決算資料にも大型の無人ダンプトラック「930E」が写真で紹介されていました。大きいだけで圧倒されるのですが、それが無人で稼働しているという点には驚かさせます。写真はオーストラリアで実際に使用されているシーンを撮影したもので、GPS付きの建機どころの話ではないですね。
そして、インドネシアでも石炭採掘向けの鉱山機械が好調で売上高は約2,300億円にも達し、中国を追い抜いたようです。同様な鉱山機械の比率が高いオセアニアの売上高も1,920億円と中国の2,000億円とほぼ拮抗しています。一部の製造業の脱中国の動きが活発になっています。一国の動きに経済により、業績が左右されるのは企業として避けがたいとろこです。コマツは見事に脱中国に向けた経営転換ができており、中国に過度に依存している企業の手本になると思っています。

2012年5月7日月曜日

国家公務員給与の年俸化

私は、以前から公務員給与の年俸化を主張しています。民主党による公務員制度の改革には当初、この公務員給与の年俸化が唱われていたそうですが、反対にあって退けたという経緯があったそうです。公務員の方々は、確かに激務だといわれています。しかし、民間企業が残業手当をしない方向で動いている中で、公務員だけが残業をとりまくっているという実態は信じがたい事実です。これを裏付けるデータが、2012年5月3日付山陽新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は、『タクシー代30億円超、国家公務員11年度見込み、震災対応で大幅増』です。以下引用文。
『中央省庁と地方の出先機関で働く国家公務員が主に深夜や未明に帰宅するため2011年度に使ったタクシー代が前年度から大幅に増加し、2年ぶりに30億円を突破した可能性の高いことが分かった。政府の国家戦略室が2日までに、各省庁のタクシー代を集計した。
戦略室は「東日本大震災への対応や、復興のための補正予算の編成に追われ、残業が増えたためではないか」と指摘。野田政権は消費税増税に向け行政改革の徹底を訴えているだけに、12年度はタクシー代の大幅削減が求められそうだ』
 タクシー代が問題の本質ではありません。思い切り残業をしていることが問題なのです。予算編成が大変だからといって残業になっているなんていい訳です。エネルギー削減で民間企業が窮している中での大盤振る舞いは異常な事態です。右表は、省庁別のタクシー代を示したものです。国土交通省がトップですね。国土を破壊し尽くした上、未だに整備できていない高速道路網、新幹線網、身近にある道路など解決するべき問題はいっぱいあります。そして、ヨーロッパやアメリカと比べて完璧にまで劣る「都市計画」は、その象徴です。もう「お金」はありませんよ。経済産業省は、「原子力安全委員会」「資源エネルギー庁」の併設という問題を未だに排除できていません。FTAやTPPの阻害要因となっている農林水産省は論外です。厚生労働省の薬の認可は世界的にノロマで有名ですし、予防医療は後進国です。文部科学省の円周率=「3」は傑作でした。財務省は、特別会計を利用することで無節操な財政をつくった上、バブル崩壊を許したA級戦犯です。
予算編成をしているといっても、原発銀座をつくったような予算編成しかできないのが、彼らの能力です。仕事量は多いのかもしれませんが、そもそもの予算編成のあり方などを抜本的に見直し、効率化することが求められるのです。そして、その最大の誘因になるのは、公務員給与の年俸化です。残業が取れず、限られた時間の中で、如何にして仕事を効率化を進めるかという真剣に考えなけば民間企業は生きていけません。公務員のやっている行為に対する不信感があるからこそ、消費税率の引き上げに対する意見がまとまりません。もっとも、彼ら公務員の給与カットで一番効率的な方法は、財政を破綻させることです。破綻すれば、残業手当どころではないでしょう。
私は、実は銀行に預金を預けません。理由は、銀行は、預金した資金を何も考えず、国債へと投じるからです。国債などの購入に間接的にでも関与することは、極力回避するのが私のライフスタイルです。そして、リスクはあるものの、日本国債よりも格付けの高い債券や金(ゴールド)、そしてドルの現金に分散して保有するのが実情です。とにかく、間接的にでも日本国債を購入することは、日本の財政規律の回復する上での阻害要因となります。一人一人の国民が責任を持って行動することが大切です。何も考えず、銀行や保険などに資産を預けるという行為は、日本の財政規律の喪失を間接的に支援していることを意味します。これからは注意するべきだと思います。公務員について書くとやや感情的になります。ギリシャの公務員もひどかったと思いますが、財政が破綻した場合、ワースト2は日本の公務員だったということになりますね。今後が楽しみです。

2012年5月6日日曜日

さらば、エルピーダメモリー

かつて、DRAMは日本の産業のコメともいわれた時代があった。その後、韓国のサムスン電子の躍進、日本企業は追い落とされ、日立製作所とNECのDRAM事業を統合、反撃の旗印となるべき存在であったのが、このエルピーダメモリーだった。今回、入札に成功したのは、米国のマイクロン・テクノロジーであることは、非常に皮肉なことです。サムスン電子が日本企業と消耗戦ともいえる技術競争を展開している中で、やや一歩遅れた技術を使用し、シェアを拡大したのが、マイクロンであった。つまり、所詮汎用品であるDRAMには、そんな進歩的な技術は必要とせず、同社は最先端を追わないで、技術的にこなれた頃に進出するというマーケッティングを展開しました。結果、日本企業は、韓国と米国の企業に挟まれるという形で疲弊し、エルピーダメモリーの倒産にまで至った。もっとも、韓国の2強であるサムスン電子とSKハイニックスの存在は大きく、市場シェアの6割以上を獲得、マイクロンが入札に応じたのも、同社のシェア低下が背景にあると思われます。
2012年5月6日付日本経済新聞朝刊に、このマイクロンによるエルピーダメモリーの買収に関する記事が掲載されていました。記事の題目は『エルピーダ、米マイクロンが買収へ、今日決定、支援総額3000億円』です。以下引用文。
 『会社更生手続き中のエルピーダメモリーは5日、米半導体大手マイクロン・テクノロジーを支援する企業にする方針を固めた。マイクロンによるエルピーダの買収額は2千億円超、設備投資の肩代わり分を含めた支援総額は3千億円弱になる見通し。日本政府は公的資金を投じていったん救済したエルピーダは、経営破綻を経て外資の手に渡ることになる。かつて日本勢が世界を席巻したDRAM市場から、最後の国内メーカーが姿を消す』
右図は、2011年のDRAM市場の世界シェアを示しています。この合併でマイクロンは2位に躍り出ることになります。もっとも、半導体製造の分野は裾野が広いです。シリコンウェハーでは信越化学が、半導体製造装置では東京エレクトロン、ニコンなどのメーカーが活躍しており、最終生産工程がなくなっただけだともいえます。そして、米インテルが製造するCPUの微細加工が22nmまで進化、それらの要求を満たすために上記の企業は研究開発を進めていることから、日本国内から半導体製造に関する技術が完全に喪失することはないでしょう。サムスン電子がDRAMやフラッシュメモリーの分野でシェアを拡大しようとも、インテルが売上高で1位の地位は不動です。
 今後は、微細加工の面ではASICでは余り期待できないかも知れませんが、ハードディスクに代わるSSDの需要は確実に増大しており、フラッシュメモリー大手の東芝が生き残れば、日本の半導体製造は大丈夫だと思います。

2012年5月5日土曜日

求められる非価格競争

先日、京都へ行き、「都おどり」を観に行きました。初めての鑑賞でしたので、驚くことばかりでした。そして、「都おどり」の後は、いわゆる「一見さんお断り」という祇園の「お茶屋さん」で一席を設けてもらいました。つまり、私は京都の祇園に直接的な知り合いはなく、京都在住の知り合いを通じて紹介された「お茶屋さん」に招かれるという形で会席の機会が得られてたというわけです。私も祇園という、日本文化の中でも極みに位置する文化に対して非常に興味があり、まずは体験することが一番だと考えました。そして、寂しい財布の中にもかかわらず、お誘いに対して快諾した結果、今回のツアーが企画された次第です。当日は、天気も良く、話も弾み、京都というものを初めて堪能したというのが私の感想です。
 「都おどり」「お茶屋さん」というば、やや抵抗があるという方々もいると思われますが、私が行った「お茶屋さん」は、夫婦同伴で利用してもいいそうで、いたって健全なイメージという印象を受けました。そして、当日は、「都おどり」「お茶屋さん」「置屋」「仕出し屋」の関連について、「お茶屋さん」の主人に徹底的に質問、京都の祇園とは、「お茶屋さん」を頂点とする非価格競争のサービス産業があることが、なんとなく理解できました。
上図は、私は「お茶屋さん」の主人に質問した祇園のイメージ図です。初体験ですので誤っている点もあるかもしれませんがご了承願います。図では「お茶屋」によって囲われている「顧客」が存在、そこに「置屋」から派遣される芸妓さんいて、料理はもっぱら仕出し屋から提供されていることを示しています。つまり、「お茶屋」は場所を提供、料理や芸妓さんを外部調達している姿がみられます。この図のポイントは、「顧客」が「お茶屋」によって囲い込まれていることです。紹介により会席に参加する機会があった顧客は、別の「お茶屋」にいくことができないのです。例外はあるそうですが、普段から利用している「お茶屋」に断りもなく、別の「お茶屋」に行った場合、狭い世界ですので、その情報が流れ、普段から利用している「お茶屋」にはいくことができなくなるそうです。「お茶屋」の主人は、「仕出し屋」「芸妓さん」の質をチェック、コンシェルジュのような位置づけにあることが分かりました。
現在、価格競争は、日本経済を蝕んでいます。価格競争の結果、所得が減少、減少した所得により需要が減少、そしてさらなる価格競争へと向かっているのです。祇園のシステムがベストとはいえませんが、激烈な価格競争から身を守る一つの方法だと思いました。右図は、需要の変化がないときに、供給が増加した時の価格を示したものです。供給増の結果、価格はPからP'へと下落することとなります。そして、日本経済は、所得の継続的な減少があるため、供給の増加に加え、需要の減少でさらに価格が低下していることとなります。もっとも、競争的な市場が形成するには、私が知っている限り以下の3つの条件が必要であるとされます。

  1. 供給者・需要者が数多く存在すること
  2. 提供されるサービス・商品の質が一定していること
  3. サービス・商品に関する情報が十分であること
祇園が提供するサービスは、1〜3までの条件を全て満たしていない気がします。供給者はお茶屋だけですし、需要者は「一見さんお断り」であることから限られています。2と3の条件は、「お茶屋さん」のはしごが事実上できなくなっていることから、情報は十分ではないですし、個々の「お茶屋さん」が提供するサービスは知る由もないのです。
 以前、iPhoneのアプリにもある「食べログ」で、不正が行われていることが報じられました。レビューアップのために、外食店のオーナーが、評価者に資金を提供するという信じられないことがあったそうです。私も「食べログ」を何度も利用したことがありますので、その実態を知った時のショックは大きかったです。祇園が提供するサービスは、この対極にあるもので、情報を封鎖することにより、価格競争に巻き込まれないシステムづくりです。外食産業に限らず、日本企業は、この価格競争に巻き込まれないシステムづくりに、力を入れる必要があると感じました。

2012年5月4日金曜日

主要鉄鋼メーカーの業績

韓国企業は、自らもって技術開発をする能力があるのか甚だ疑問です。ヒトIPS細胞の件で韓国の研究者が不正な実験をしたことは有名な話です。未だにノーベル賞をとっていない韓国は、日本との技術力の差とは歴然としています。江戸時代に日本は独自文化が発展したこともあり、新たな技術を創造する文化がある気がします。一方、他国の技術を盗んでばかりいる韓国企業が、世界を牛耳った場合、その後、技術革新は低迷し、技術開発によってもたらされるであろう、潜在成長率はどんどんと低下し、世界経済はどん底へと陥る可能性は大きいでしょう。iPhoneを駆逐しようとするサムスン電子のGalaxyシリーズは、iPhoneのコピーそのものであり、同社は何も造り出していないのが実情です。現代自動車にせよ、サムスン電子にせよ、ポスコにせよ、自らもって技術開発をするべきであり、彼らのやり口は汚すぎると思います。
 そうした中で、2012年4月26日付日本経済新聞朝刊に、新日鉄が技術の不正取得で韓国のポスコを提訴した記事が掲載されていました。以下記事引用。
 『新日鉄が韓国鉄鋼大手ポスコなどを相手取り、高性能鋼板の製造技術を不正に取得したとして、不正競争防止法(営業秘密不正取得行為)に基づく民事訴訟を東京地裁に起こしたことが明らかになった。日本企業の技術者やOBを通じた韓国企業への技術流出はかねて指摘されてきたが、証拠をつかむのは難しく、裁判に持ち込むのはまれ。流出に歯止めがかけられるか。今回の訴訟は試金石になる』
やはり立証の難しさが訴訟の難しさにつながっているようです。しかし、サムスン電子が東芝の社員から盗み取ったDRAMの件は有名な話であり、またかという印象です。日本企業が衰退し、技術を盗む先がなくなったら、韓国の企業はどうするつもりでしょうか。リーディングカンパニーとしての誇りはないのでしょうか。アップルもサムスン電子からの部品納入を、日本や台湾企業への切り替えしている噂があります。アップルは、納入先から韓国企業を外すべきであり、iPhoneの熱烈なユーザーである私にとってもそれは歓迎すべきところです。そして、Galaxyシリーズを拡販しているドコモは最低の企業ですね。配当利回りが高いから、投資対象と考えていたのですが、韓国企業を後押ししている企業なんて最低です。
 ここで、話を鉄鋼に戻します。新日本製鉄と住友金属工業の合併が10月に迫っています。合併比率は、新日鉄1に対して住金0.735です。この合併に際して、住友金属工業の持っている技術力を高く評価、財務面からいった実力の差ではなく、技術力が高く評価されたのです。右表は、合併後の新日鉄住金を含めた主要鉄鋼メーカーの業績を示したものです。技術を盗んでいる韓国ポスコ別として(技術開発を独自でしていないのですかに業績が良くて当たり前なので)、第1位のミタルと第2位の新日鉄住金の業績を比較していると面白いことがわかります。粗鋼の生産は、2倍以上なのですが、売上高は1.4倍弱にとどまっていることです。つまり、これは単純に考えて、粗鋼単位当たりの価格が、新日鉄住金の方が高いことを示しています。円高という逆風はありますが、同社の今後の健闘に期待したいところです。

2012年5月3日木曜日

債務危機、オランダに賞賛

私は、20年以上も前にオランダに行ったことがあります。行った理由は、私が利用した航空会社が、羽田発の台湾国籍の中華航空であり、同社のヨーロッパへの窓口はオランダしかなかったためです。もっとも、価格が安かったこと、オランダへは一度行ってみたかったことから、満足のいく旅行の出発ができたと今でも思っています。アムステルダムの近くにあるスキポール航空に着いた時には、初めてのヨーロッパ一人旅でしたので驚きで一杯でした。そして、アムステルダムに着いた後は、路面電車に乗り、ユースホステルに3日間宿泊、短期間ではあったものの、同市内を散策するとともに、レンブラントの「夜警」をみた時の感動は、今でも忘れられません(意外にコンパクトな場所に納められており、私にとって初めて鑑賞する有名な絵画でした)。その後、ゴッホ美術館に行ったりしたりして、のどかな観光をしたという記憶が残っています。もっとも、落ち着いて考えみると、オランダは凄い国だということです。中国のことを気にせずに、ヨーロッパ国々の中で台湾の航空会社の便を受け入れていたのですから、信念というものを感じさせられるところがあります。
 そのオランダの信念が本当だったことが、今回は債務危機の局面ははっきりしました。財政赤字をEU各国が決めた国内総生産比率で3%以内にするため、内閣総辞職、政局がしばらくの間、不安定化する可能性も否定できませんが、国民の危機意識を反映したものと、私は勝手ながら判断しています。今日の引用は、2012年4月28日付朝日新聞朝刊からです。記事の題目は『「優等生」オランダ、欧州危機の波、総辞職条件に緊縮策。世論も真っ二つ』です。以下記事引用。
 『財政赤字の削減策を巡り内閣が総辞職に追い込まれたオランダで4月26日、与党と一部野党が財政緊縮策で合意した。27日には9月上旬の総選挙日程も決める。欧州経済の「優等生」のオランダにまで混乱が広がった背景に、財政規律は守りたい一方、歳出削減を急いで景気を悪くしたくないという欧州共通の悩みがある。(中略)
 オランダ国債の格付けは最上位の「AAA」(トリプルエー)という欧州経済の「優等生」。格付け大手3社から最上位を得ているのは、ユーロ圏ではほかにドイツ、フィンランド、ルクセンブルクだけだ。政局の混乱が続けば、国債が格下げされかねない。最終的に緊縮策で合意できたのは、賛成した各党にこうした危機感が募ったからだ。
 ただ、最近の世論調査では、緊縮策に反対してきた左翼・社会党が大きく支持を伸ばす一方、ルッテ氏(暫定首相)の自由民主党も支持が高く、世論は左右に分裂。「総選挙後の連立の組み合わせはかなり難しい。組閣は来年初めまでかかるかもしれない」(地元記者)との見方があり、政局の不安定さは続きそうだ』
 こうした危機意識がないのが日本です。消費税率の引き上げだけで何年も時間を浪費しているのが、わが国政治の実情です。わが国を含め、主要国で財政秩序の回復が維持できない中、オランダの選択は無駄にはならないと思います。ここで、ユーロ統計局発表のオランダのGDPと財政の状況を紹介します。上表は、2008〜2011年の同国のGDPや政府の歳出入を示しています。GDPが着実に増加するものの、2009年から入ってからの歳出の増加が財政赤字拡大の原因となっています。しかし、財政赤字のGDP比率が2011年ベースで4.7%にとどまっていること、緊縮策が選ばれたことなどから、格下げとなったフランス国債とは事情は異なるようです。因に、フランスの財政赤字のGDP比率は5.2%であること、債務残高のGDP比率も85.8%(オランダは65.2%)にも達することから、オランダのAAAとフランスのAAは納得がいくところです。市場では、次はスペインだという指摘がされていますが、やはり本命はフランスです。同国の財政運営次第では、ユーロ圏の財政規律が崩壊、ユーロの暴落が懸念されています。

2012年5月2日水曜日

イスラム金融と天然ガス

イスラム教では、宗教上、資金の貸し借りにおいて貸し主は、利息を借り主より受け取ることができないことはよく知られています。これをイスラム金融ともいい、原油・天然ガスの価格が高止まりする中、石油産出国の資金量は増加し続けており、特にイスラム教を主たる宗教とする石油産出国は運用する資金は莫大な規模となっており、そのプレゼンスが増しています。
 そうした中で、原発がほぼ停止し、夏場の電力不足が懸念されている中、商社などを中心に資源、特に天然ガス確保の動きが活発化しており、2012年5月1日付日本経済新聞夕刊にも、三菱商事、三井物産の豪LNG権益取得に関する記事が掲載されていました。同記事によると、両社はオーストラリアで進む液化天然ガスの大規模プロジェクトに参画する旨発表した。推進主体は、豪ウッドサイド・ペトロリアムで、ガス田とLNGについて約15%を共同取得するそうです。調達量は、年間150万トンであり、日本やアジア諸国などの需要拡大に対応することを目的としています。
 商社が活躍する一方で、金融機関が海外で華々しく活躍する面は乏しかった気がします。ところが、日本の金融機関の代表格である三菱東京UFJが、LNG確保に関連して、イスラム金融をからめた形で、ブルネイ大手銀BIBD、英HSBC、三井住友銀行とともに協調融資を実施することが判明しました。以下、2012年5月1日付日本経済新聞夕刊引用(注)
 『【シンガポール】三菱東京UFJ銀行はブルネイ政府系の海運会社に対して総額1億7千万ドル(135億円)の協調融資を組成する。同国がイスラム教国であるのを踏まえ、教義が禁じている利子の受け払いを回避するイスラム金融方式で資金供給するのが特徴。海運会社は大型の液化天然ガス(LNG)運搬船を追加購入し、対日輸出の拡大に備える』
また、同記事には、イスラム金融について直感的に分かる説明文がありましたので、今後の勉強の意味を含めて引用させていただきます。以下引用文。
 『▶イスラム金融取引 物品の裏付けのないお金のやり取りで利子の発生を禁じるイスラム教の教えに即した金融サービスや商品。住宅を購入する際に銀行がいったん物件を買い入れたうえで高値で実際の購入者に転売し、その差額が利子に相当する「ムラバハ」、通常の融資を物品リース契約に組み直す「イジャーラ」などが代表例。
 イスラム法学者の承認が必要だが預金やローン、債券などほぼすべてで同等の金融商品がそろう。イスラムマネーの膨張に伴い投融資需要が急拡大しており、市場規模は世界全体で1兆ドルを超えたもよう』
途上国に限らず、膨大な国債市場を抱える先進国でも、イスラム教国のマネーを如何に取り込むかが鍵ともなっています。そうした中で、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行の行動は賞賛に値すると思います。ここで、BPのレポートから入手したデータを紹介します。右図は、上で挙げたオーストラリアとブルネイの天然ガスの生産量と日本の天然ガス消費量の推移を示しています。そして、ブルネイの生産量が伸び悩んでいる一方で、オーストラリアの生産拡大が順調であることが分かります。もっとも、両国を合わせた生産量は、日本の消費量の7割近くにも達することから、両国から天然ガスの安定供給が、原発なき後の日本経済に不可欠な存在になっています。政府のエネルギーに関する協議は進んでいません。それに対して、民間企業は、天然ガス確保に向けて動きが鈍いとされる金融機関までも動き出したのは事実です。引き続き商社が担う役割は大きいですが、その資金供給に乗り出した日本の金融機関も注目されます。
(注)記事の題目は、『イスラム金融、協調融資、三菱東京UFJ、ブルネイで135億円』。